今日オススメするVRゲームは【娘っち】です。母親になって、娘を産んで育てて、立派なS級冒険者にするゲームです。

もう書かないって言ったよね?

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第11話

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「凄いですね! まさかクエストを受けて、その日のうちに帰って来るなんて。もしかすると、あなたなら、あのクエストもクリア出来るかも……」

 ちなみに1週間かけてクリアした場合も、同じように冒険者組合のお姉さんが凄く驚いたと、ゲーム情報にありました。社交辞令だと思って信用しないでください。

「あのぉ~、もしかして《メタルゴーレム》ですか?」

「えっ‼︎ なんで知っているんですか。冒険者組合でも極秘情報ですよ」

「えっ~~と…」(お母さんに聞いた事は言わない方がいいよね)

 サクラちゃんが黙っていると、冒険者組合のお姉さんが気を取り直して話を再開しました。

「その通り、《メタルゴーレム》です。古代遺跡を占領しているメタルゴーレムを倒してもらいたいのです。メタルゴーレムを倒せれば、古代遺跡の奥を調べる事が出来るのです。もしかすると、動物達を凶暴化させている、闇のエネルギーの原因が分かるかもしれません」

 メタルゴーレムの討伐は重要な情報を得る為のクエストのようですが、現実世界のプレイヤー達は原因が分かっています。古代遺跡なんて行かずに、《最果ての地》にある死竜の洞穴に真っ直ぐに向かいたいぐらいです。何ならクエスト1のプヨプヨも倒させずに、娘を向かわせたいぐらいです。

「分かりました。メタルゴーレムを倒せばいいんですね。任せてください。お母さんといっぱい訓練しました。絶対に大丈夫です」

「そうですか。では、古代遺跡の扉を開くパスワードを教えます。覚えてくださいね。《64・9・26・48・64・9》です。古代遺跡の入り口の扉に機械のようなものが付いているので、この番号を入力してくださいね」

「えっ~~と、《64・9・26・48・64・9》ですね」(念の為に紙に書いておかないと…)

 サラサラ、サラサラと流石にパスワードまでは教えていなかったようです。古代の暗号で『ひ・ら・け・と・び・ら』という意味があるらしいです。しっかりと紙にパスワードを書くと、サクラちゃんは古代遺跡に出発しました。

 ★

 ピッ、ピッ、ピッと1~9の数字が書かれたボタンを慎重に押していきます。3回間違えると扉は永遠に開かなくなるそうです。それは大嘘です。何回でも入力可能です。

「64、9……これで扉が開くはずです。えい!」

 ピッと最後に『OK』と書かれたボタンを押すと、鉄の扉がギギギィと開いていきます。

(あっ‼︎ すぐに扉から離れないと!)

 ビュン、ビュン、ビュン‼︎

 何かを思い出したようにサクラちゃんは扉から急いで離れました。次の瞬間には開いた扉から毒がたっぷりと塗られた大量の矢が飛び出してきました。

「ふぅ~~、お母さんの言う通りに扉から離れていなかったら死んじゃっていたよ」

 また初見殺しの罠です。このゲーム開発会社はゲームクリアの難易度を上げ過ぎです。きっと以前、簡単にクリア出来るゲームを作って苦情でも言われたのでしょう。モノには限度があるという事を知らないようです。

(この狭い遺跡の中では大規模な範囲魔法は使えないから、お母さんに教えられた《斬岩剣》を成功させないとね)

 大規模な魔法は古代遺跡を壊してしまうので使用は禁止されています。もしも使ってしまったら、重要な情報を手に入れられずにクエスト6でゲームは強制終了してしまいます。その場合はバッドエンドという事になります。

『ギィギィギィ⁈ ピッポォパォポォ⁇』

 古代遺跡の最深部には、壁画を守るように金属で出来た生物が存在していました。これを生物と言っていいのか不明ですが、額に付いている6つの赤い目が、侵入者を探してキョロキョロと左右に動いています。

《メタルゴーレム》は、ずんぐりとした体型の3mほどの機械生物です。物理攻撃や魔法攻撃が効かないように思われていますが、それは攻撃者の攻撃力が足りないだけです。口からは高熱のビームが発射されるので注意しましょう。

(あの銀色の大きいのがメタルゴーレムですね。弱点のコアは人間の心臓と同じ場所だったよね。お母さんに言われた通りに最大の一撃で決めないと)

 中途半端な攻撃では、メタルゴーレムの金属の装甲に小さな引っ掻き傷をつけて終わるだけです。弱点は火魔法だけですが、それでも金属の装甲が溶けるだけで終わります。コアを破壊するには強力な物理攻撃が必要なのです。

 トテトテトテと星の杖に魔法を込めていきます。お母さんの『武器に気を込める』というものは最後まで理解できませんでした。サクラちゃんが出来るのは、杖に魔法を込める事だけです。

「火と土の精霊よ、力を合わせて万物を斬り裂く刃となれ《紅蓮剣》‼︎」

 ボオォォーー‼︎ 魔法の杖が灼熱の紅き刃に変化しました。その刀身はマグマを纏った岩石の大剣です。どんなに頑丈な金属も溶かし、強固なコアも叩き斬って破壊する事が出来るでしょう。

「ヤアァぁ~~‼︎」と灼熱の大剣を掲げて、メタルゴーレムに突っ込んでいきます。小手先の技術は必要ありません。ただ、メタルゴーレムの左胸にあるコアを破壊すればいいのです。

『ピィッピッッ⁈ ギィガァ‼︎』

 向かって来る侵入者に気が付いたようです。メタルゴーレムは口を大きく開けて、ビームを発射する準備を開始しています。サクラちゃんの大剣が届く前に発射されるのは間違いありません。

(ビームは必ず1回は発射される。私がこのビームを防げたら、私の勝ちだよね。お母さん!)

「ヤアぁぁ~~‼︎ えいっ‼︎」

 ブン、バシュン‼︎ 灼熱の大剣を力一杯横に薙ぎ払うと、発射された高熱のビームは灼熱の大剣の熱によって掻き消されました。

『ビィガァ⁇』

「その程度の熱では私の紅蓮剣には勝てません。倒させてもらいます。《斬岩剣・紅蓮》‼︎」

 サクラちゃんは高く飛び上がると、その灼熱の刀身をメタルゴーレムの左胸に全力で振り下ろしました。

 ガァン! ドロッドロッ、ザァクン‼︎

『ビィガァァァァ‼︎』

 メタルゴーレムの金属の装甲は、刀身が触れた瞬間に一瞬で蒸発していきます。そのまま金属の身体を溶かしながら刀身は突き進みます。そして、マグマの下に隠された強固な土魔法で作られた第二の岩の刃によって、メタルゴーレムのコアは粉々に砕かれました。

「はぁはぁ……お母さんの言う通りに本当に一撃で倒せちゃったよ。もしかすると、昔、お母さんはS級冒険者だったのかな?」

 サクラちゃんが思っているような、凄いお母さんではありません。娘の活躍を喜んでいる何処にでもいる普通のお母さんです。今も娘の快挙に大喜びです。

 そして、残りのクエストは1個だけです。これをクリア出来れば、隠されたシークレットモードが解放されて遊べるという情報があります。何でも全ての母親達が喜び歓喜するらしいです。

 もしかすると、最愛の娘達が復活する可能性もあります。それは娘の復活を信じる母親達の最後の希望でした。

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