病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
25 / 70

第二十五話 調子に乗っちゃったんだね

しおりを挟む
「あれ? ちょっと待て……」

 こうして無事にピーちゃんは家に帰ってきた。
 でも、おかしい。家に帰ってきた時のピーちゃんはボロボロだった。
 竜薬草食べて回復したのなら、ボロボロなのはおかしい。

「ピーちゃん、まだ話してないことあるよね?」
『……ないよ』

 僕も受付のお姉さんを見習って、丁寧に話を聞くことにした。

 ♢♢♢

 冒険者ギルドを出たピーちゃんは、街に住む鳥の巣で朝まで休むと飛び立った。
 目指したのは僕の家じゃなくて、灰色ドラゴンが飛び回る灰竜山だ。
 魔竜石はいっぱい取ってきたばかりだから、あるとしても少ししかない。
 ここを目指した理由が分からない。

『アイツに負けないようにドラゴン倒してやる』

 ピーちゃん、調子に乗っちゃったんだね。
 レベル上がって、今なら勝てると勘違いしちゃったんだね。

 無事に灰竜山に到着すると、一匹のドラゴンに狙いを定めた。
 狙っているのは顎下だ。前回は腹下を狙って失敗している。
 ちょっとは考えたみたいだ。

 超加速でドラゴンの顎下まで気づかれずに接近すると、その硬そうな顎に一発ぶち込んだ。

『”バードストライク”』
『ぬぅ、何だ?』

 顎が少し浮いたそうだ。手ごたえを感じたそうだ。
 ピーちゃんがそう言っているんだから信じてあげるしかない。

『おい、またあの鳥が来たぞ。クソ泥棒だ』
『今日こそ焼き鳥だ。焼き鳥にして食ってやる』

 そんなピーちゃんに気づいた他のドラゴンが集まってきた。
 あっという間に四十を超えるドラゴンに包囲された。

『……卑怯者め』

 群れに挑んだのはピーちゃんだよ。囲まれても文句言えないからね。
 しかも、最初に手を出したのはピーちゃんだよ。文句の前に言うことあるよね。

『おもしれい。全員沈めてやる』

 ごめんなさい、でしょ。

『”超加速”——”残像”』

 まだやる気みたいだ。再び加速するとドラゴンの頭を狙った。
 そんな真っ直ぐ飛んでくるピーちゃんに、ドラゴンの口から炎が吹き出された。
 ドラゴンの大きな身体を半分以上も隠せる巨大な炎の息だ。
 その炎にピーちゃんは完全に飲み込まれた。

『効かないよ』

 もちろん燃えたのは残像だ。
 本物のピーちゃんは炎の息を真下に回避して、そのまま急上昇して首を狙った。
 二度目のバードストライクが炸裂した。

『……いつの間に移動しやがった』

 ピーちゃん、こっちも効いてないみたいだよ。
 小石がぶつかった程度なんじゃないの?

『おもしれい。倒れるまでやってやるよ』

 ♢♢♢

「それで自分が倒れる寸前までやってきたんだね。で、倒せたの?」
『……あと少しで倒せた。一対一なら』

 聞かなくても分かるけど聞いてみた。やっぱり倒せてなかった。
 それになんか言い訳している。一対一でも絶対倒せなかった。

『コレあげる。疲れたからもう寝る』

 話疲れたのか収納袋を逆さまにすると、袋から剣を床に落として寝てしまった。
 やりたい放題だ。アイツから預かった大切な剣じゃなかったの。

 仕方ないと諦めてベッドから出ると、床から剣を拾ってみた。
 思ったよりも重くない。これなら僕でも振り回せそうだ。
 剣の柄を右手で持つと、左手で鞘を持って抜いてみた。

「わぁっ~、これが剣か!」

 汚くて安そうな剣だってピーちゃん言ってたけど、そんなことなかった。
 めちゃくちゃ綺麗で切れそうな剣だ。

「ふんっ、やぁっ」

 振り回すのは危ないから、適当にカッコいい構えを取ってみた。
 両手で持って剣先を上に向けたり、斜め下に向けたりした。

「もしかしたら、僕……剣士の才能あるかも」

 もうなんか初めて持った気がしない。
 窓の外に立ってある木も真っ二つに出来そうな気がする。

「よし、やってやる」

 やっぱり構えるだけじゃ物足りない。
 剣を持ったら思いっきり振り回したい。
 剣を持って玄関から外に出ると、木に向かって水平に振り回した。

「えいっ!」

 乾いた音が鳴った。真っ二つどころか、一ミリ切れたかも怪しい。
 木から剣を離すと部屋に戻った。ちょっと体調が悪かったみたいだ。
 部屋に戻ると剣を鞘に戻して、僕もベッドに戻った。

 お父さんが僕の病気が治る薬を持って帰るまで、木を切り倒すのは我慢だ。
 病気が治って元気になったら、もう一度挑戦してやる。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...