病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
28 / 70

第二十八話 僕が仲間になってあげるよ

しおりを挟む
「ごめんね、ピーちゃん! 倉庫にピーちゃんが使える武器がないから特注品を用意するわね!」

 有り金全部奪われて、その日は何も貰えなかったそうだ。
 人間用の武器しかなかったと、受付のお姉さんが謝ってきた。
 仕方ないので採取クエストで時間を潰すことにしたそうだ。
 時間も潰せて、お金も少しは戻るから頑張るしかないね。

 ♢♢♢

 こうしてピーちゃんは翌日、新しい武器を手に入れた。
 収納袋から綺麗なエメラルド色をした、金属製の小さなバターナイフを取り出して見せてくれた。
 ピーちゃん、騙されてないよね? 小銀貨二枚で買えそうな気がするよ。

 とここまで話を聞くと僕はベッドから立ち上がった。
 近くに立て掛けていた剣を手に持った。
 どうやらピーちゃんは運が良いみたいだ。

『ピーちゃん、どうやら探しものが見つかったみたいだよ。僕が仲間になってあげるよ』
『…………寝言は寝てから言え』
『‼︎』

 速攻で断られた。ううん、速攻じゃなかった。
 なんかちょっと考えてから、酷いこと言ってきた。

『どうして駄目なの⁉︎ 教えてよ!』
『はぁー……教える必要ある?』
『‼︎』

 また速攻で断られた。ううん、速攻じゃなかった。
 またなんかちょっと考えてから、また酷いこと言ってきた。
 断るとしても、『危ないからだよ』とか『レナスに怪我させられない』とかあるはずだ。

 はっ! もしかしたらピーちゃん、あえて酷いことを言ったのかも。
 僕に諦めてももらう為に。

『ねえ、ピーちゃん。教えてよ。教えてくれないと納得できないよ』
『はぁー、仕方ない。雑魚だからだよ。そんなことも分かんないの?』
『なぁ‼︎』

 自分だって雑魚のくせに言いやがったな!
 ピーちゃんの理由を聞いて、一気に頭に血が上った。
 こうなったらどっちが雑魚か、【雑魚王決定戦】だ。
 負けた方が【雑魚王】だ。

『そこまで言うなら、決闘だ! 今夜、家の前に来るんだよ!』

 力いっぱい窓、というかカーテンを指差して言ってやった。

『うん、いいよ。遊んであげる』
『遊びで済むといいね!』

 完全に舐めている。窓枠に寝転んだ。
 ここまで僕を怒らせたのはピーちゃんが初めてだ。
 病み上がりだけど、動けるようになった僕の力を見せてやる。

 晩ご飯を食べると剣を持って、玄関から外に出た。
『たまに血が吸いたくなるけど、人間のは駄目だよ。討伐されちゃうからね』
 と吸血鬼のお兄さんには注意された。
 まだ飲みたいとは思わない。普通のご飯でお腹いっぱいになれる。

『えいっ、えいっ!』

 剣を鞘から抜くと、鞘を両手で持って振り回した。
 剣だとピーちゃんが死んでしまう。だから手加減してやる。

『ふぅー、行けそうだ』

 準備運動を終わらせた。身体が全然疲れていない。
 本当に病気は治っているみたいだ。
 前だったら、こんな激しい運動したら今頃は地面に大汗かいて倒れている。

『それにしても……遅いなぁ~?』

 家を出て、もう十五分ぐらいは経つ。
 部屋を出る時に『外で待っているよ』とピーちゃんに言ってきた。
 窓から徒歩十五秒の場所に、十五分以上もかかるはずがない。

 まさか負けるのが怖くなった?
 だとしたら仕方ない。謝ってくれれば、不戦勝ということで許してあげよう。
 ミイラピーちゃんにするのは可哀想だ。

『あっ!』

 ピーちゃんを呼びに窓に向かうと、信じられないものを見た。
 窓を押し開けてカーテンめくると、ピーちゃんが寝ていた。

『ピーちゃん、何してるの⁉︎ 決闘するって言ったよね!』
『……ピィ? 本気だったの?』
『本気だよ! さっさと外に出てよ! 僕、もう準備できてるんだからね!』

 両手で掴んで揺らすと起きた。本当に寝てた。しかも冗談だと思っていた。
 もう許さない。ミイラピーちゃん決定だ。薬草食わせまくってやる。

『ねえ、本当にやるの?』

 ピーちゃんがパタパタとやる気なさそうに飛んできた。
 
『やっと来たね。どっちが雑魚か教えてあげる。かかっておいで』

 剣を鞘から抜くと、剣の方を捨てて、鞘を両手で構えて言った。
 吸血鬼の力なのか、暗闇でもハッキリと目が見える。
 寝起きのピーちゃんなんかに負ける気がしない。

『じゃあ、行くね。”バードストライク”』
『ごぼぉ……‼︎』

 そう言うとピーちゃんが目の前から消えた。
 次の瞬間、巨人に殴られたような衝撃がお腹を襲った。
 意識が軽く飛んで、吐きそうな口から色々なものが飛び出そうになった。
 たまらずに両手から鞘を離して、地面に顔からうつ伏せに崩れ落ちた。
 まるで雷に打たれたようだ。胃の中に溶岩を流し込まれたようだ。
 痙攣を繰り返す身体のお腹だけが凄く熱さを感じる。

『超加速は使わなかったよ』
『ぐぅぅぅ……!』

 ピーちゃんが顔の前に立って言ってきた。手加減したと言ってきた。
 悔しさと痛みで何も言えない。
 何も言えないでいると、ピーちゃんがトドメを刺すように首を傾げて聞いてきた。

『ねえ、どうしても分からないんだけど。どうして勝てるって勘違いしちゃったの?』
『ふぬぅぅぅぅ!』

 小鳥だからだよ! お腹だけじゃなくて、頭も熱くなった。
 もうどんな手段を使っても絶対ピーちゃん倒してやる。
 もう仲間じゃない。僕達は敵だ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...