病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
43 / 70

第四十三話 竜の血を飲んでみた

しおりを挟む
 ピーちゃん、それってお姉さんに頼まれていた果物だよね。
 また怒られたいの?

『【ドラゴンフルーツ】じゃねえか。珍しい物持ってんじゃねえか』
『ああ、古代の森にしかならねえ、貴重な果物だ。その辺の森にあるもんじゃねえ』

 気に入られたみたいだ。
 地上に降りた灰色ドラゴン達が果物の山をジッと見ている。
 中にはヨダレを垂れ流しているのもいる。

『血の代価はそれで十分だ。では、バケツを出せ』

 取引き成立みたいだ。水竜が言ってきた。
 それに対して……

『倒すつもりで来たから、バケツは用意してない』

 ピーちゃんが自信満々に応えた。
 絶対にトカゲの尻尾みたいにドラゴンの尻尾持ってくるつもりだった。

『では、こちらで用意させてもらう』

 良かったね。親切な水竜で。
 口から凄い勢いで吐き出し続ける水の棒で地面を削り取ると、大きめのバケツ石柱に牙で穴を開けた。
 その中に尻尾の先を切って出てきた血を流し込んでいる。

『バケツ一杯よりは多いが、少ないよりはいいだろう。持って行け』

 石柱を翼で掴んでへし折って地面から離すと、手頃な石で蓋をして渡してきた。

『ありがとう、水竜のおじさん。次は絶対にぶっ飛ばしに来るね』

 素直にお礼を言いなよ。テレてるの?

『それは無理だ。永遠にな』

 うん、僕もそう思う。
 余計なこと言わずに、さっさと貰って帰ってきてね。

 ♢♢♢

『ひざまずけ。たたえろ』
『ははぁー!』

 やっとお披露目みたいだ。
 偉そうなピーちゃんに命令されて、ベッドから素早く降りて、床に両手を伸ばして土下座した。
 床には収納袋が置かれていて、それをピーちゃんが脚で掴んでいる。あとは飛んで持ち上げるだけだ。

『さあ、受け取れ!』

 バサァと飛び上がると袋の中から石バケツが現れた。

『ああ、ピーちゃん。ありがとう!』

 喜びのあまり、石バケツに抱きついて感謝した。
 これがドラゴン、それもアクアドラゴンの血だ。
 絶対美味しいに決まっている。

『ぐおおお!』

 頑張って石蓋を持ち上げて床に置くと、赤い液体の中に頭から突っ込んだ。

『ピィ! 何してんの⁉︎』

 見て分かんないの? 血が乾く前に飲んでるんだよ!

『ゴクゴク、ゴクゴク……』

 こんな美味しい血、飲んだことがない。
 身体中の筋肉が脳みそを含めて、膨れ上がっていく。
 僕が僕じゃなくなるようなそんな感じ。そう【爆誕】だ。

『ぷはぁ! 力が溢れてくる!』
『ピィ‼︎』

 血を一滴残らず飲み尽くすと、石バケツから頭を勢いよく出した。
 ヤバイ。今なら何でも出来そうな気がする。背中からコウモリの黒い翼が飛び出した。

『か、髪、真っ白になってる!』

 僕のフードローブからフードが取れて、ピーちゃんが驚いている。
 髪の色が黒から白になるよりも、もっと驚くことがあるんじゃないの。
 背中から翼だよ。飛べちゃうよ。

『ピーちゃんのお陰だよ。やっと僕の封印が解けたみたいだ。こっちはどうかな?』

 黒いカーテンをちょっとめくって、陽の光を小指の先に当ててみた。
 温かい。熱くはない。太陽の光も問題ないみたいだ。
 腕にも当てたけど一緒だった。これなら時間を気にせずに外を歩ける。
 カーテンを窓から外すと丸めて、ベッドに放り投げた。

『あっ、翼が生えてる』
『今頃気づいたのかい、ピーちゃん? ふぅー、愚かだね』

 窓枠に足を組んで座ると太陽の光を背中に浴びながら、ピーちゃんに言ってやった。
 もう太陽にもピーちゃんにも怯える必要はない。
 背中の翼がちょっと邪魔だけど、そう思っていたら身体の中に引っ込んでくれた。
 このまま翼がずっと出ていたら寝るのに邪魔だった。
 これなら安心して眠れる。

『なんか急に偉そうになった。翼が生えて強くなったと勘違いしてる』
『勘違い? 試してみるかい?』

 ちょうどよかった。僕も今の力を試したかった。
 弱くなったのか強くなったのかピーちゃんで試してやる。

『じゃあ、そうする。”バードストライク”』

 いきなりの先制攻撃、いや、奇襲だ。
 腹に向かって青い鳥が突っ込んできた。
 でもね、ピーちゃん。

『‼︎』
『見えてるよ』

 川の魚達との特訓の成果だ。
 青い小鳥の突撃を右手で受け止めた。
 前は重いと思ったのに、今は軽すぎる。
 拳大の石を思いきり投げつけられた程度だ。
 つまりは右手の手の平が痛いだ。

『危ないじゃないか、ピーちゃん。僕が受け止めなかったら窓が壊れていたよ。お母さんに怒られるよ』
『ば、馬鹿な!』

 受け止められて驚くピーちゃんに言ってやった。
 僕が今まで言われたぶんを全て返してやる。

『信じられない、いや、信じたくない気持ちは分かるよ。自分が雑魚だってね。もっと知りたいなら教えてあげるよ。外でね。部屋だと物壊しちゃうでしょ』

 右手からピーちゃんを離して、親指で外を指差した。

『おもしれい。後悔するんじゃねえぞ』

 単純な鳥だ。窓を少し押し上げて外に出ていった。
 どうやらまだ実力差が分かってないらしい。いや、分からないから知りたいのか。
 やれやれ仕方ないと思いつつ、窓を全開まで押し上げて外に出た。

『素手でいいよね? 剣使うと殺しちゃうから』

 パタパタ空を飛んでいるピーちゃんに向かって笑みを浮かべて言った。

『それはこっちの台詞だ。もう一度地面の味を教えてやる』

 また僕を腹パン一発で地面に倒すつもりらしい。
 今度は満面の笑みで言ってやった。

『やれるもんならやってみなよ。出来るならね』

 地面の味なら今度は僕が教えてやる。
 ジャリジャリの悔し涙の味がするってね。

『”超加速”——”残像”——』
『見えてるよ、ピーちゃん』

 話に聞いてたとおりの単純な攻撃だ。
 見えない速さで飛んでいるつもりなら、ギリギリ見えている。
 僕の勝ちだよ、ピーちゃん。

『”バードストライク”』
『ごべえっ……‼︎』

 向かってきたピーちゃんが目の前で消えたと思ったら、右頬を誰かに殴られた。
 その衝撃で空中七回転して地面に墜落した。

『ぐぐぐっ、いったい、誰が……』

 だけど、この程度で負けるわけにはいかない。
 拳を地面に突き立てて立ち上がろうとした。

『”バードストライク”』
『がはぁ……!』

 でも、後頭部を二度目の衝撃が襲った。
 右拳じゃなく、顔面が地面にめり込んだ。

『誰が立っていいって言った? よく味わえ、勘違い雑魚野朗。今度から僕の前ではその姿勢でいるんだよ』
『ぐぅぅぅ……!』

 あり得ない。倒れている僕の頭に青い小鳥が乗っている。
 地獄の猛特訓が足りなかった? いや、足りないのは血だ。
 僕の努力は十分足りている。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

処理中です...