病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第六十二話 僕vsピィーちゃん

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 パチパチと鳴るたき火を見ながら思った。
 もうそろそろ帰ってもいいかもしれない。
 ジャングルで三日も過ごして、僕の氷魔法は完成した。
 果物も焼き鳥もカキ氷も食い飽きた。
 パサパサでもいいからパンが食べたい。

『あれは……?』

 たき火を消して立ち上がろうとしたら、空に鳥が見えた。
 煙に寄ってきた大鳥とヒゲ猫を倒していたけど、あの鳥は小さすぎる。
 間違いない。あれはピィーちゃんだ。
 立ち上がるとフードをかぶった。

『見つけた。覚悟は出来てんだろうな!』

 ピィーちゃん、いつも初対面の人に喧嘩売ってるの? 僕、おじ様だよ。
 ピィーちゃんが目の前まで降りてくるといきなり言ってきた。

『小鳥さん。何の覚悟か知らないけど、誰かと勘違いしてるんじゃないのかな?』
『死ね。”バードストライク”』
『‼︎』

 完全にイカれている。
 僕のおじ様対応にキレたのか、問答無用で腹に体当たりしてきた。
 でもね、ピィーちゃん。遅すぎだよ。

『な、何だと⁉︎』

 右手だけで軽々受け止めた。
 僕の親指と人差し指の間から驚くピィーちゃんの間抜けヅラが見える。
 このまま凍らせてもいいけど、瞬殺するのは可哀想だ。
 もっと楽しませてもらおう。

『えっと、今のは挨拶か何かかな?』

 右手から離すと分からないフリして聞いてみた。

『これが挨拶なら、こいつは何だ!』
『よっと』
『ああっ!』

 今度は顔面狙ってのバードストライクだったけど、軽く横に顔を動かして避けた。
 本気で当てたいなら、超加速ぐらい使ってもらわないと困る。
 こっちは大鳥とヒゲ猫で速いのに慣れてしまった。

『チッ。マグレじゃないみたいだ』

 なんか避けられて舌打ちしている。
 こっちは大喜びで小踊りしたい気分だ。
 だけど、おじ様だからそれは我慢だ。

『もういいかな? 用事があるんだけど』

 そんなものないけど、パタパタ飛んでいるピィーちゃんに迷惑そうに聞いた。

『用事なんて知るか。ちょっと強くなったようだけど、僕の方が強い。また地面食べさせてやる』

 聞く耳は持ってないらしい。
 しかもまだ僕よりも強いと勘違いしている。
 やれやれ一回本気で倒してあげないと駄目みたいだ。
 弱いものイジメみたいで、本気は出したくないんだけどな。

『どうやら痛い目に遭いたいらしい。仕方ないね、相手してあげようか』

 フードを取りながら言ってみた。

『ああっ⁉︎』

 久しぶりの再会にピィーちゃんが驚いている。
 やっぱり僕だと気づいてなかったようだ。

『なんで髪の色、青なの! お揃いにするなんて気色悪!』
『…………』

 よし、失礼な鳥は焼き鳥にしよう。
 僕を見て驚いたと思ったのに、僕の髪の色に驚いている。
 別に好きで青色、ううん、水色になったわけじゃない。

『青じゃない、水色だ。一緒にしないでもらおうか』

 同じ青でも僕の方が透き通るような綺麗な青だ。

『何その喋り方? レナスのくせに偉そうに喋りやがって』
『レナスって誰のことかな?』
『お前だよ、お前。自分のことも忘れたのか?』

 うん、他人のフリはもういいかな。ちょっと疲れてきた。

『ふぅー、どうやら騙すのは無理みたいだ。そうだよ、僕だよ』

 両手を広げて正体を明かしてやった。

『知ってるよ。お前をぶっ飛ばしにきた』
『クックク。今まで聞いた冗談の中で一番笑えるよ』

 どうやら最初から僕だと分かっていたみたいだ。だから、攻撃したみたいだ。
 なんで攻撃されるか理由は分からないけど、ちょうどよかった。
 僕もピィーちゃんをボコボコにしたいと思っていた。
 それが今日みたいだ。

『すぐに笑えなくしてやるよ』
『それはどうかな?』

 僕をまた倒せると確信しているらしい。
 そんな自信満々のピィーちゃんに右手の手の平を向けた。

『”氷石アイシクル”』

 氷の石をピィーちゃんに一個だけ飛ばした。

『ピィ‼︎』

 それを慌てて横に飛んで避けた。
 小鳥のダンスを踊ってもらおう。
 両手を向けて、次々に氷の石を発射した。

『ピィ! ピィ! ピィ!』

 可愛い小鳥のダンスが見たいなら諦めよう。
 必死のダンスが続けられている。上下左右に飛び回っている。
 自分と同じぐらいの氷石だ。当たれば痛い一発だ。

『どうしたの? 笑えなくしてくれるんでしょ!』

 満面の笑みで逃げ回るピィーちゃんに言い放った。
 倒すどころか、僕に近づくことも出来てない。

『くぅぅぅ、望み通りにしてやる。”超加速”——”残像”』

 僕の挑発にやっと本気を出してくれるらしい。
 急激に速さが上昇して、ピィーちゃんの姿が透き通った。
 氷石が当たっても通過していく。
 残像は初めて見る技だけど、幽霊みたいだ。

『どうした? 笑ってないぞ』
『……フフッ。そうだね』

 ピィーちゃんの声が残像とは違う場所から聞こえてきた。
 残像使用中は本体の姿は見えないらしい。まさに幽霊だ。

 でも、対策は用意している。
 氷石を撃つのをやめて、両手を振り回した。

『”吹雪アイスストーム”』

 氷魔法習得した時に、最初に出たやつを自分で出した。
 僕を守るように僕の周りに円形の氷の嵐が吹き荒れる。
 近づく者をあっという間に雪だるまに変えてしまう。

『それで隠れたつもりか? 愚かだな。死ね!』

 ピィーちゃんがね。
 予想通り、姿を消したピィーちゃんが突っ込んできた。
 吹雪を突き抜けて、僕を殺しにやってきた。

『なっ……⁉︎』

 だけど、それは不可能だ。
 吹雪は僕を隠していたんじゃない。
 僕の周囲を守る、これを隠す為のものだ。

『”不可視の氷盾クリスタルシールド”——そこにいたんだね』
『ピィ‼︎』

 透明な氷の盾に突き刺さって、止まっているピィーちゃんを見つけた。
 大鳥達にも通用する僕の絶対防御だ。
 そして、これが動けない相手に振るう必殺の一撃だ。

『歯食いしばった方がいいよ』

 右拳を限界まで引き絞ると、ピィーちゃんに向かって加速して放った。

『セイイ!』
『ピィギァ……!』

 氷の盾を貫く必殺の一撃にピィーちゃんが吹き飛んだ。
 吹雪を突き抜け、地面を激しく転がり、飛んでいく。
 吹雪を消すと地面に倒れているピィーちゃんの元に向かって歩いた。

『ピィ、ピィィ……!』

 震える翼を使って、何とか立ち上がろうとしている。
 
『まだやる気? これ以上は命の保証できないよ』
『ハァハァ、誰に、言ってんだ……』

 何とか気合で立ち上がって言ってきたけど、限界なのは分かっている。

『ピィーちゃんにだよ。土下座できるよね?』

 僕は優しいから土下座してくれれば、今までの僕への悪辣非道な行ないを許してあげる。
 立っているのも辛いピィーちゃんに座れって言ってるんだから、もう優しさしかない。

『し、死んだ方がマシだ、がふっ……!』

 やっぱり限界だった。地面に力尽きて倒れた。

『やれやれ。座れって言ったのに寝ちゃったよ』

 両手を持ち上げて首を振って呆れた。
 やっぱり弱い者イジメになってしまった。
 可哀想だから竜薬草を布団代わりに乗せてあげる。
 僕ってなんて優しいんだろう。

 ♢♢♢

『……ピィ?』

 起きたみたいだ。僕って優しいから、魔物が出る森に怪我した友達を放置できない。

『ピィーちゃん、焼き鳥食べる?』
『ピィ~~~~‼︎』
『えっ……』

 起きたピィーちゃんにたき火に並べていた焼き鳥を一本差し出した。
 それなのにピィーちゃんが地面を走って逃げていった。
 思ったよりも元気だった。これなら放置してもよかったね。
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