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第36話 バーベキュー・ビール・フリーダム

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「当たり前だけど、私より若いな」

 瓦礫を背もたれにして、座って寝ていた三人の男達の顔を見た。
 ケイト達三人は逃げていった二人を追いかけていった。
 一人残された私の役目は簡単だ。
 
「うぐっ……うぅぅっ……」
「悪いな」
「うがっ! ぐっ……」

 助けを求めるように腕を伸ばしてきた男の胸を、剣で突き刺してトドメを刺した。
 男の腕が力無く地面に落ちていく。
 こんなのは楽しくない。楽しくはないが、やってしまう自分がいるのも事実だ。
 三人を順番に剣で突き刺して、確実にトドメを刺していく。

 見つけた無線機は確実に破壊する。
 一台ぐらいは壊さずに持っていてもいいとは思うけど、その必要はないそうだ。
 必要なのは、アビリティリングと武器と魔石だけだ。

 死体の腕からリングを外して、近くに転がっている武器を集める。
 ケイト達はまだ追いかけっこをしているので、ついでに服のポケットの中も物色する。
 お金、食糧は死人には必要ないので、私が使わせてもらう。
 こうしておけば、仲間割れを起こした感じに見えなくもない。
 我ながら賢いな。
 
 パキ。

「⁉︎」

 まさか……。
 背後から木の枝が折れたような音が聞こえた。
 瞬時に嫌な予感が走った。ケイト達の可能性もあるが気配が冷た過ぎる。
 アビリティリングはオンにしている。
 攻撃されても、一撃でやられるとは思えない。
 地面に置いてあるショットガンの位置を確認すると、素早く拾って、横に走りながら銃口を向けた。

「くっ!」

 ドパァン‼︎ 銃口の先に一人の男の姿が見えた瞬間に引き金を引いた。
 銃弾の雨が男に襲い掛かる。一人いるなら、もう二、三人いるかもしれない。
 カシャンと装填すると、もう一発男に撃った。ドパァン‼︎
 ショットガンの装填数は十五発だ。五、六発ぐらいは余裕で撃ちまくれる。

「うおおお、がふっ! のおお、ぐぼぉっ!」

 それにしても、しぶとい奴だ。撃っても撃っても全然倒れない。
 地面に置いたランプの灯りが、六メートル先のポッチャリした男を照らしている。
 縮れた短い茶色い髪に、モジャモジャの髭が頬から顎まで生えている。
 武器は持たず、迷彩柄の半ズボンを着て、足元はよく見ればサンダルを履いている。
 白いシャツには『バーベキュー・ビール・フリーダム』とプリントされている。
 いくらなんでも楽な服装過ぎる。

「何なんだ、コイツは……?」

 これ以上は弾が勿体ない。
 ショットガンを地面に置いて、左腰から銀色の両刃直剣を素早く引き抜いた。
 そのまま一気に前に走って、男の脳天に剣をドスンと振り落とした。
 銀色の刀身が脳天からヘソの少し上までを一気に切り裂いた。
 これで終わりだな。
 
「うおおおおお!」
「何で、死なない⁉︎」

 髭モジャが腹に剣が刺さったまま襲い掛かって来た。
 驚きながらも剣を握ったまま、後ろ走りで髭モジャから逃げていく。
 私の方がスピードは速いようだ。髭モジャの腹から剣がスルリと抜けていく。
 どんなトリックを使ったか知らないが、これで終わりだ。
 剣をしっかりと握ると、走って来る男の首に剣を左から右に振り払った。
 
「ぜぇりぁゃー‼︎」

 ザァン‼︎ 髭モジャの頭が宙を舞て、地面に落ちていく。
 それでも真っ直ぐに身体だけが襲い掛かって来た。
 ドンと髭モジャの柔らかい腹が打つかった。
 髭モジャの命を懸けた攻撃は、私にはノーダメージだった。

「ふん、しぶとい奴だなぁ。オラッ! 邪魔なんだよ!」
 
 私の身体にもたれ掛かっている男に、身体を打つけて前に弾き飛ばした。
 頭を失った男の身体がユラユラと三歩ほど後退りして、倒れそうになって止まった。
 おいおい、立ったまま死ぬタイプ人間なのか? 根性だけはあるな。

「ふっ、まあいい。パトリ、新手が一人現れたぞ。始末したけど、他にもいないか確認してくれ」
『……新手? その周辺には五人以外、誰もいなかったよ。見間違いじゃないの?』

 無線機でパトリを呼んで、周囲を確認するように頼んでみた。
 すぐに返事は返ってきたけど、キチンと調べたという報告だった。
 だったら、今すぐに戻って来て、このバーベキュー男を見てみろよ。
 立ったまま死んでいるぞ。

「じゃあ、こいつは……うわああああ⁉︎」
『んっ、どうしたの? ギル、何かあったの? お~~~い、お~~~い』

 ちょっと待って! 今は話せる余裕がない!
 頭を復活させたバーベキュー男が襲い掛かって来た。
 今の状況は地面に押し倒されて、馬乗りになられて、拳を顔面に叩きつけられている。
 正直、殺した相手が生き返っている状況に軽いパニックだ。

「おごっ! どべぇ!」
『ちょっとジジイ! イタズラ通信してんじゃないわよ! 三分で戻るから土下座で待機してなさいよ!』

 土下座するから、二十秒以内に助けに帰って来てほしい。
 でも、三分は三分だ。期待するだけ無駄だ。自分で自分を助けるしかない。

「このぉ、死にかけがぁーーー‼︎」
「うごっ、ごおおおおお!」
「ぐがぁ! あぐっ、あぐっ」

 ドスッ‼︎ 右手に握った剣を全力で横っ腹に突き刺して、反対側まで貫通させた。
 僅かに攻撃は止まったが、それだけだった。すぐに怒ったように攻撃を再開させた。
 猛烈な拳のラッシュに加えて、頭を掴まれて地面に叩きつけられる。
 このまま一方的な連続攻撃を喰らい続けたら、アビリティリングのエネルギーがすぐに切れてしまう。
 右手の拳を握り締めると、攻撃を喰らいつつ、髭モジャの顔面を横から力一杯殴りつけた。
 
「どおせいやぁーー‼︎」
「ごぺぇ」

 グパァン‼︎
 怒りの右拳が髭モジャの顎と口を木っ端微塵に吹き飛ばした。
 目の前には顎と口を失った髭モジャの鉛色の口内が見えた。

「何だ、これは……?」

 とても人間の口の中とは思えない。
 これだけの傷なのに、血が流れ落ちて来ない。
 それどころか傷が急速に回復していく。
 ここまでの回復は普通は有り得ない。
 つまり——

「テメェーかぁ!」

 答えが出た瞬間に叫ぶと、髭モジャの首を両手で掴んで横に投げ倒した。
 髭モジャの突き出た柔らかい腹の感触、服の肌触り、呻き声に騙された。
 コイツが絶対に探していたメタルスライムで間違いない。
 こんなのパッと見て人間と区別が出来る訳がない。
 若い美女の姿で近づいて来られたら、確実に男は騙されて殺されてしまう。

「ケイト、メタルスライムだ! 奴が目の前に現れたぞ! 髭モジャの太った男だ!」

 急いで仲間に報告した。
 道理で死なないはずだ。不死身の怪物なら倒せるはずがない。
 一応は頭部を破壊すれば、一時的に動けなくする事は出来るようだが、それだけだ。
 何一つ有効な対策がないのに、戦うだけ無駄だ。

『あんた、酒でも飲んでいるの?』
「飲んでない! 銃も剣も効かなかった。首を撥ねたのに二十秒で頭が復活した。コイツは危険だ。絶対に倒せない!」
『へぇー、そうなんだ。じゃあ、パトリが助けに行くから荷物を用意していて。白魔石だけでもいいから』
「分かった。二分で準備する」
『ギル、一分で着くから頑張って』
「分かった……」
 
 私とは違い、無線機の声は冷静なものだ。
 簡単じゃない事を簡単に指示してくる。
 まずは髭モジャの腹に突き刺さっている剣を二十秒で取り戻す。
 次にランプとショットガンを回収して、アビリティリングを腕に嵌める。
 残りの武器は放置して、あとで回収だ。これでちょうど一分だろう。

 ♢
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