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5日目
武器屋魔法の杖
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「ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております!」
午前6時5分。今日の街のパン屋は開店5分で、閉店だ。
朝一番に大金貨5枚で店のパンを買い占める、大型犬を連れたお客様が来てしまった。
店の男シェフが呼んでもいないのに、店の外までお客様を元気にお見送りしている。
「これで数日は食べ物には困りませんね」
「クゥーン」
余裕で一ヶ月は困らない量だが、パトラッシュが困った顔で鳴いている。
パンもお菓子も食べたくない。パトラッシュは完全肉食犬だ。
だけど人間に犬の気持ちは分からない。次の目的地の武器屋に到着した。
「ここで大人しく待っているんですよ」
地面に皿を置かれて、焼き立ての食パンを一斤、ドンと皿の上に置かれた。
カノンが武器屋に入ると、パトラッシュは諦めて食パンを食べた。
「クゥーン♪」
肉よりも大きく、意外と噛み応えがあった。
巨大なサイコロステーキだと思えば、美味しく食べられそうだ。
前足で食パンを押さえて、上手に噛みちぎって食べ始めた。
♢
「おじ様、おはようございます」
「ん?」
武器屋に入ると、筋肉質な男店主が商品棚をチェックしていた。
店主が高そうな服を着た女性客を、誰だと思って見ている。
「ああ、嬢ちゃんか。高そうな服を着ているから、誰だか分からなかった」
「そんなことないですよ。タダみたいな物です」
高そうな服ではなく、実際に高い。
防具四つの総額だけで、350万ギルドを超えている。
「それよりも朝早くからどうしたんだ? もしかしてハサミが切れなくなったとかか?」
世間話は程々にして、店主が肝心の用件を聞いてきた。
ルーンハサミは高額商品だから、購入から三ヶ月は壊れても保証されている。
「違います。ハサミは良く切れるから助かっています。今日は魔法の杖を買いに来たんです。ありますか?」
「まあ、あることはあるんだが、高いから店には置いてないんだ。盗難されると店が潰れてしまうからな」
店主はしれっと嘘をついた。
魔法の杖は店でも一、二の最高級品だ。金庫に厳重に保管している。
買わない客に見せるつもりも触らせるつもりもない。
だけど、この客は確実に買う客だった。
「今すぐに欲しいんですけど、そこまで案内してもらえませんか?」
「ははっ。買ってくれるならいいけど、130万ギルド——」
「お金あります!」
「なぐっ⁉︎」
店主が断ろうとしていたが、カノンが素早くアイテムポーチから大金貨袋を取り出した。
パンパンに膨らんだ袋を見て、店主はまさかと思いながらも、最近の記憶を思い出している。
カノンは23万ギルドの買い物をしたばかりだった。
「あー、あれ? もしかすると、あれであれして、店のあれにあれったかもしれない」
「お店にあるんですか?」
店主が言っていることが、カノンには分かったみたいだ。
店主の妻でも、大量のあれだと何なのか分からない。
「でも130万ギルド見ないと思い出せそうにないな。これは困ったなぁー」
「ありますよ」
「あー、あったあった! あれにあったよ! ちょっと待っててくれ!」
店主は酷い物忘れになったみたいだが、カノンが袋から大金貨を鷲掴みにして見せた。
40枚ほどの大金貨を見て、一発で物忘れが完治したようだ。
自分の右太ももを叩いて、思い出した演技をすると、店の奥に走った。
金庫のダイヤルを右に左に回して、一発で金庫を開けている。
「お待たせお待たせ。魔法の杖は全部で八属性あるけど、どれを買うんだ?」
凄い記憶力の店主がカウンターの上に、ダイヤルが付いたアイテムポーチを置いた。
魔法の杖の八属性は火、水、地、風、氷、雷、光、闇がある。
使われる魔法石の質によって、値段が120万~240万ギルドと大きく変わる。
「全種類お願いします。お金あります」
「…………」
だけど、この客には関係なかった。
1120万ギルドを一括払いして、無事に魔法の杖を全種類購入した。
カノンが店を出た後に、店主は急いで大金貨112枚を、金庫に厳重に保管した。
午前6時5分。今日の街のパン屋は開店5分で、閉店だ。
朝一番に大金貨5枚で店のパンを買い占める、大型犬を連れたお客様が来てしまった。
店の男シェフが呼んでもいないのに、店の外までお客様を元気にお見送りしている。
「これで数日は食べ物には困りませんね」
「クゥーン」
余裕で一ヶ月は困らない量だが、パトラッシュが困った顔で鳴いている。
パンもお菓子も食べたくない。パトラッシュは完全肉食犬だ。
だけど人間に犬の気持ちは分からない。次の目的地の武器屋に到着した。
「ここで大人しく待っているんですよ」
地面に皿を置かれて、焼き立ての食パンを一斤、ドンと皿の上に置かれた。
カノンが武器屋に入ると、パトラッシュは諦めて食パンを食べた。
「クゥーン♪」
肉よりも大きく、意外と噛み応えがあった。
巨大なサイコロステーキだと思えば、美味しく食べられそうだ。
前足で食パンを押さえて、上手に噛みちぎって食べ始めた。
♢
「おじ様、おはようございます」
「ん?」
武器屋に入ると、筋肉質な男店主が商品棚をチェックしていた。
店主が高そうな服を着た女性客を、誰だと思って見ている。
「ああ、嬢ちゃんか。高そうな服を着ているから、誰だか分からなかった」
「そんなことないですよ。タダみたいな物です」
高そうな服ではなく、実際に高い。
防具四つの総額だけで、350万ギルドを超えている。
「それよりも朝早くからどうしたんだ? もしかしてハサミが切れなくなったとかか?」
世間話は程々にして、店主が肝心の用件を聞いてきた。
ルーンハサミは高額商品だから、購入から三ヶ月は壊れても保証されている。
「違います。ハサミは良く切れるから助かっています。今日は魔法の杖を買いに来たんです。ありますか?」
「まあ、あることはあるんだが、高いから店には置いてないんだ。盗難されると店が潰れてしまうからな」
店主はしれっと嘘をついた。
魔法の杖は店でも一、二の最高級品だ。金庫に厳重に保管している。
買わない客に見せるつもりも触らせるつもりもない。
だけど、この客は確実に買う客だった。
「今すぐに欲しいんですけど、そこまで案内してもらえませんか?」
「ははっ。買ってくれるならいいけど、130万ギルド——」
「お金あります!」
「なぐっ⁉︎」
店主が断ろうとしていたが、カノンが素早くアイテムポーチから大金貨袋を取り出した。
パンパンに膨らんだ袋を見て、店主はまさかと思いながらも、最近の記憶を思い出している。
カノンは23万ギルドの買い物をしたばかりだった。
「あー、あれ? もしかすると、あれであれして、店のあれにあれったかもしれない」
「お店にあるんですか?」
店主が言っていることが、カノンには分かったみたいだ。
店主の妻でも、大量のあれだと何なのか分からない。
「でも130万ギルド見ないと思い出せそうにないな。これは困ったなぁー」
「ありますよ」
「あー、あったあった! あれにあったよ! ちょっと待っててくれ!」
店主は酷い物忘れになったみたいだが、カノンが袋から大金貨を鷲掴みにして見せた。
40枚ほどの大金貨を見て、一発で物忘れが完治したようだ。
自分の右太ももを叩いて、思い出した演技をすると、店の奥に走った。
金庫のダイヤルを右に左に回して、一発で金庫を開けている。
「お待たせお待たせ。魔法の杖は全部で八属性あるけど、どれを買うんだ?」
凄い記憶力の店主がカウンターの上に、ダイヤルが付いたアイテムポーチを置いた。
魔法の杖の八属性は火、水、地、風、氷、雷、光、闇がある。
使われる魔法石の質によって、値段が120万~240万ギルドと大きく変わる。
「全種類お願いします。お金あります」
「…………」
だけど、この客には関係なかった。
1120万ギルドを一括払いして、無事に魔法の杖を全種類購入した。
カノンが店を出た後に、店主は急いで大金貨112枚を、金庫に厳重に保管した。
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