没落令嬢カノンの冒険者生活〜ジョブ『道具師』のスキルで道具を修復・レベルアップ・進化できるようになりました〜

もう書かないって言ったよね?

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11日目

和解・父親再就職

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「ふむ。ディラン君、これはどういうことかな?」

 ギルド長が床の大量のハンカチを一枚拾うと、ヒラヒラ振ってディランに見せた。
 朝一番の報告で聞いた話と随分と違う。

「ギルド長、これは偽物です。騙されては駄目です」
「それはおかしいな。君が調べた素材が全て本物だと報告したんだ。このハンカチも調べてみるか?」
「もちろん。そうさせていただきます」

 まだ、ディランは負けを認めるつもりはないらしい。
 60枚程のハンカチを全部集めて、金庫から鑑定紙を取り出して調べている。
 鑑定結果は焦り出した顔を見れば分かる。

「申し訳ない。どうやら職員が誤解したようだ。素材は全て買取ります」

 ディランの代わりに、ギルド長が謝罪すると、エリックは立ち上がった。
 カノンも土下座をやめて、立ち上がった。

「いえ、お金は構いません。ご迷惑をかけたお詫びだと思ってください」
「そういうわけにはいきません。正当な労働には、正当な報酬を支払うものです。お受け取りください」
「いえいえ、損害賠償だと思って受け取ってください。報酬は被害を受けた冒険者に分配を」
「いえいえ、ただ酔って動けないだけです。被害ではなく、酒をくれと訴えているぐらいです」

 54歳のエリックと53歳のギルド長が、報酬を譲り合っている。
 エリックは金なら、カノンが大量に作ってくれるから本当に要らない。
 良い格好をして、冒険者ギルドに貸しを作る方が得策だと考えている。

「ギルド長、お待ちください! まだ盗品の可能性があります。手品でもハンカチぐらいは増やせます」
「素材も武器も出来ますよ。お見せしましょうか?」

 鑑定を終えたディランがやって来た。まだ疑っている。
 カノンは親切心で追加の手品を見せようとしている。

「ディラン! その失礼な態度を今すぐに謝罪しなさい!」
「ぐっ!」

 だけど、その必要はないようだ。ギルド長が怒ってディランに言った。
 謝りたくないディランが、嫌そうに顔を歪めている。

「ははっ。ギルド長様。悪いと思ってない人間に、謝罪を強要しても無理です。この歳まで一度も失敗したことが無いなんて、凄く優秀なんでしょう。失敗を学べば、もっと優秀になれますよ」
「誠に申し訳ない。ロクに部下の教育も出来ずにお恥ずかしい限りです。全ては私の責任です。不愉快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありません」
「いえいえ、ギルド長が謝る必要はありません。若さとは失敗することです。まだ彼が若いという、ただそれだけのことですよ」

 謝らないディランをエリックが笑って許すと、ギルド長が代わりに謝罪した。
 年寄り二人は和解したみたいだが、若いディランの顔は全然納得していない。

「ギルド長、まだです! 馬で往復六日の距離を2時間ですよ! 他に仲間がいるに決まっています!」
「はぁー。ディラン君、黙っていることも出来ないのかね?」

 謝罪も出来ないディランの言動に、ギルド長はかなり呆れている。
 反省文と減給で許すつもりだったのに、これでは解雇も考えないといけない。

「あの、実際にお二人を近くの町まで護衛しましょうか? 見ないと納得できみたいなので」
「本当に申し訳ない。愚かな彼の為にもお願いしたい。もちろん報酬もご用意します」
「では準備するので、父と一緒に街の外でお待ちください」

 疑われたままでは仕事できないので、カノンは飛行船に乗せると言った。
 ギルド長が頭を下げてお願いすると、カノンは森の中の飛行船を取りに出かけた。

「なっがががががぁ~‼︎」

 ディランが空を見上げて、驚いた顔でガタガタ震えている。
 街の外で待っていると、青く輝く空飛ぶ大型船がやって来た。
 乗らなくても分かったみたいだが、乗らないという駄目だ。
 三人が乗ると、飛行船は空の旅に出発した。

「これは速いな。ディラン君、飛び降りる前に二人に言うことはあるかな?」
「申し訳ありませんでしたぁー‼︎ どうか、どうかお許しください‼︎」

 解雇されてもいいが、処刑されたくはない。ディランは必死に謝罪する。
 手首を背中に回されて、ギルド長に船の扉に向かって押されていく。
 ギルド長は腕っ節なら、中級冒険者にも引けを取らない。

「まあまあ、ギルド長。その辺で許してあげてください。良かったら、私が職員として彼を教育しましょう」

 笑顔を浮かべたエリックが、ギルド長の右肩をポンポン軽く叩いて止めた。
 名案を思いついたようだ。

「実は普通の酒を酒場に置いてもらおうと来たんですが、職員として働いた方が娘にも会えるし、正直な酒の感想もお客様から直に聞けます。もちろん給料は要りません。酒の売上げだけで結構です」
「うーん、それは構いませんが……本当によろしいんですか?」

 ギルド長は考えた。優秀な娘は欲しいが、おじさんは欲しくない。
 でも、おじさんを働かせれば、娘が付いてくる。だったら仕方ない。

「もちろんです。酒以外にも食事も提供できます。カノン、お前が作ったパンを出して差し上げなさい」
「はい、お父様。どうぞ、ギルド長様。ディランさんもどうぞ」
「ああ、ありがとう」

 カノンが名前を呼ばれて、舵から手を離してパンを渡しに来た。
 急いで配って戻らないと、飛行船が墜落してしまう。

「おお! これは美味い!」
「では、次はこちらの酒をどうぞ」

 パンを一口食べて、ギルド長は気に入ったようだ。
 エリックはニヤリと笑うと、秘伝のミックスフルーツ酒を取り出した。
 容赦なくトドメを刺すつもりだ。
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