没落令嬢カノンの冒険者生活〜ジョブ『道具師』のスキルで道具を修復・レベルアップ・進化できるようになりました〜

もう書かないって言ったよね?

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20日目

男爵令嬢の朝

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 ——コンコンコン。
 午前6時。いつものように扉を叩いて、女性使用人がカノンの部屋に入って来た。
 一般的に流通している使用人服を着ている。白黒の長袖シャツ、黒スカートだ。

「カノンお嬢様、おはようございます。朝の時間です」
「んんー、嫌です。もうちょっと寝かせてください」
「良い天気ですよ。絶好の散歩日和です」

 カノンの返事を無視して、黒髪の若い使用人は窓を開けて、ベッドの布団を払い退けた。
 カノンの意思は関係ない。ロクサーヌに言われた通りのことをやらせるだけだ。
 だが、使用人ナンシーがカノンの異変に気づいた。

「なっ⁉︎ カノンお嬢様、髪はどうしたんですか⁉︎」
「えっ、何のことですか?」
「30センチも短くなっているじゃないですか!」
「えっ、昨日と一緒ですよ?」
「とぼけても無駄です! 勝手なことしないでください!」

 誤魔化せるレベルを超えていた。
 雇い主の娘だが、三女に敬語は必要ない。使用人にカノンは厳しく叱られる。
 ロクサーヌにとって娘は、政略結婚の道具で商品だ。
 自分から商品価値を下げる商品は、駄目な商品だ。

「別にいいじゃないですか、髪ぐらい……また伸びるんだから」

 髪よりも家の危機だ。使用人の説教は聞きたくない。
 カノンには雑草酒造りを阻止するという使命がある。

「何を他人事みたいに言っているんですか。奥様は18で旦那様と結婚したんですよ。カノンお嬢様のことを夜会で見て、気にいる殿方もいるんですよ」
「そんなに綺麗な長い髪が良いなら、髪と結婚すればいいんですよ」
「髪とは結婚できません。子供みたいなこと言ってないで、着替えてください」
「むぅ~!」

 カノンは自由に動きたいのに、見張りの使用人がいるから難しい。
 昨日のように絞め落とすか、神雷の杖で自然死に見せかけるしかない。

「こほん、こほん、今日は具合が悪いです。部屋で休んでいいですか?」

 カノンが選んだのは仮病だった。
 わざとらしく咳をして、具合が悪いフリをしている。
 使用人はまったく心配していないが、一応おでこに触れて確認している。

「うーん? 熱はないみたいですが、喉が痛いんですか?」
「喉が焼けるようです。あと寒気と激痛がします。動いたら死にそうです」
「……本当ですか? はぁー、仕方ないですね。お医者様を呼ぶので寝ていてください」
「こほん、こほん、すみません」

 重病過ぎてめちゃくちゃ嘘っぽいが、カノンは頷いて返事している。
 使用人が呆れているが、本当だと困る。散歩中に倒れたら大変だ。
 諦めて部屋を出ると、屋敷にいる医者を呼びに行った。

「はぁー、面倒です。ナンシーはあんな感じでしたね。今のうちに抜け出しましょう」

 パジャマを急いで脱いで、カノンは動きやすい服に着替えた。
 豪華な服だと目立つので、街の若い男達が着る布服を選んだ。
 水色の半袖上着に白色の長ズボン、髪は平たい布帽子で隠せば完璧だ。
 誰が見ても、カノンじゃない。

「じゃあ、身代わりは頼みましたよ♪ 絶対にバレないでくださいね」
「ワァーン‼︎」

 絶対に無理だと、パトラッシュはショックを受けている。
 金髪のカツラを被せて、ベッドに寝かせると、カノンは窓から脱出した。

「カノンお嬢様、お医者様を連れて来ました。入りますよ?」
「ワフゥ⁉︎」
「カノンお嬢様、入りますよぉー?」
「ワフゥ⁉︎ ワフゥ⁉︎」

 ——コンコンコン。
 すぐに使用人ナンシーが医者を連れてやって来た。返事がないから何度も呼んでいる。
 医者は30代の男だから、年頃のカノンに気を使っているが、待ちきれないので自分だけ入った。
 パトラッシュは生きた心地がしない。

「返事が出来ないほど、喉が痛いんですか? カノンお嬢様、寝ているんです——きゃああああっー‼︎」

 カノンを起こそうとしたら、金髪がごっそり抜け落ちた。
 使用人が金髪のカツラを掴んだまま、床に尻餅をついて腰を抜かしている。
 本物の髪だったら、本当に重病だが問題ない。

「どうしました!」
「お、お嬢様のカノンお嬢様のか、髪が……」
「こ、これは……!」

 悲鳴を聞いて部屋に駆け込んで来た医者に、偽物だと診断された。
 パトラッシュの任務は失敗した。
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