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第一章
第4話 水色真珠の調合
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「あっ! 会長、会長! 見てくださいっ!」
五匹の巨大イモ虫の群れを見つけて倒していると、七海が大声で呼んできた。
七海は倒したイモ虫を吸収していた。イモ虫から素早く離れて七海を見ると、杖の形が変化していた。
逃げようとするイモ虫達は、あとで追いかけて倒せるので七海の元に向かった。
「やっと成長したのか。遅い成長だ」
「むぅー、会長の方が小さい癖に」
イモ虫を五十三匹吸収して、七海の杖はやっと変化した。
杖から青い光が放出して、七海の手の中でムクムクと膨れ上がっている。
成長というだけあって、長さと太さが大きくなっていく。
長さは30センチが50センチぐらいに変わり、太さは野球のバットより少し小さい。
魔法の杖は指揮棒から棍棒に成長した。これなら武器としても使えそうだ。
「何か頭に浮かんだか?」と杖の成長が止まったので七海に聞いた。
杖の色は薄緑色のままだ。精神的な変化で杖の色が変化すると予想したが違ったようだ。
それとも七海に精神的な変化がまだ起こってないのか、変化しても影響しないかだ。
「はい。『level-up』と『調合・回復薬』の二つが浮かびました。レベルアップって、強くなれるって事ですよね? えっへへへ。私、会長よりも強くなっちゃいましたねぇ!」
俺を真っ直ぐに見て、七海は嬉しそうに言ってくる。俺よりも上になれたと思っているようだ。
レベルアップは七海の言う通り、身体能力を高める効果があると思う。
調合の回復薬は薬といっても、錠剤、粉状、液体と色々とある。
それに特定の材料が必要な場合は、その材料がないと使いものにならない能力になる。
杖の成長と戦力アップは出来たが、調合のやり方を調べないといけない。
「何を喜んでいる? 俺よりも強くなったのなら、お前もイモ虫を倒さないといけないんだぞ」
「えっー! 会長が倒してくださいよぉ!」
「駄目だ。その棍棒でイモ虫を叩き潰せ」
「嫌ですよ! 変な汁とか付きそうじゃないですか!」
新しい仕事を与えてやったのに、七海は棍棒を胸に抱き締めて守っている。
杖は鉄のように硬いのに木のように軽い。これを武器に使わない馬鹿はいない。
「まったく……まずはレベルアップを俺に試せ。逃げたイモ虫を倒してくる」
「フフッ。いいですよ。レベルアップ!」
七海が嬉しそうに杖の先端を向けて、レベルアップと唱えた。
棍棒型の杖の先端に直径10センチの白い球体が出現する。球体も大きくなっている。
「うっ、なるほど。こんな感じになるのか……」
杖から発射された白い光弾が身体にポフッと当たると、ワクワクとした高揚感が湧き上がる。
この高揚感が続いている間は効果があるという事だろう。
スマホのストップウォッチを起動して、正確な時間を測る事にした。
「俺はイモ虫を倒してくるから、七海はその辺の落ち葉や草で調合が出来るか試していてくれ」
「うん、分かった。任せておいて!」
七海に調合を任せるとイモ虫を追いかけた。五十三匹で成長するなら、次は俺の杖で確かめる。
♢
「回復薬になれ! 回復薬になれ!」
イモ虫を倒して七海の元に戻ると、地面に掘った穴に落ち葉と草を入れて、七海が棍棒で掻き混ぜていた。
魔女が鍋で何かを作っているような光景だが、子供のおままごとにしか見えない。
「何をやっているんだ? 呪文を唱えればいいんじゃないのか?」
「そんなの最初にやりました! 呪文を唱えても何も起こらないんです!」
何気なく聞いただけなのに、七海はスッと立ち上がって、手を振り回して怒ってきた。
完全な八つ当たりだ。
「俺に当たっても仕方ないだろう。それにここは異世界なんだ。材料に薬草を使わずに、石ころや砂、魔物の死体を使うのかもしれない。固定観念に縛られない事だ」
「むぅー、会長が葉っぱを使えって言ったのに……」
「俺は全知全能の神様じゃないんだ。間違う事もある。人に頼らずに自分で考えろという事だ」
俺の所為にする七海に自分で少しは考えろと注意する。
言われた方法が駄目なら、自分で考えて、成功するまで試すしかない。
「じゃあ、会長が倒したイモ虫で試すしかないですね」
「それは無理だ。杖で吸収した」
「もぉー、会長! またイモ虫探さないといけないじゃないですか! 何で残しておいてくれないんですかっ!」
「いちいち怒るな。見つけたら試せばいいだけだろう?」
イモ虫はないと伝えると、ショックを受けるよりも先に、七海はまた怒り出した。
七海の杖がまだ成長するとしても、次は百匹以上は吸収させないと駄目だ。
だったら、俺の杖を成長させた方が早い。
「怒って当然です。もうお腹が空いて動きたくないです。会長を信じて頑張ったのにダメダメじゃないですか」
「文句を言っても仕方ないだろう。それにお腹が空いたと言ったら、咥えさせると言ったはずだぞ?」
「うぅぅ、どうせ会長は言わなくてもします。会長はそういう人です」
七海はしゃがみ込むと、地面の穴の中の落ち葉を棍棒で掻き混ぜながら愚痴を言い始めた。
水分を取ってないから、かなり疲れ果てているようだ。自暴自棄になっている。
気合でこれから五十匹近くのイモ虫を探して倒すのは無理そうだ。
地面を掘って水が出るか、オシッコにリカバリーをかけて真水になるか試すしかない。
「危機的状況下で信頼関係は大切だぞ。それにこの場でやれる事もある。ほら、パンツも返してやる」
「そんなの当たり前です。女の子の下半身を冷やすのは駄目なんですよ」
「あぁ、悪かった」
七海の隣にしゃがむと、ブレザーのポケットから黄色の下着を取り出した。
七海は下着を受け取ると立ち上がって、慌てずに自然な動作で履いていく。
「んっ、それでこれから何をするんですか? エッチな事以外でお願いしますよ」
パンツを履き終わると少し機嫌を直した七海が聞いてきた。
「分かっている。考えられる行動は三つだ。七海の棍棒を借りて、俺一人でイモ虫を倒して、杖を成長させる。次に調合できる条件を調べる。最後に杖を成長させる方法をクラスの奴らの所に戻って報告だ」
「えっ! 戻るんですか⁉︎ 会長が言ったじゃないですか! 私がレイプされるから危ないって!」
三つの行動を言うと、七海は三つ目に強く反応した。
集団行動が危ないという最初の考えを否定するつもりはない。
だが、状況的に少数精鋭の選択は避けられない。
「成長した杖には調合があるんだ。食べ物を作れる奴が現れるかもしれない。それに白い杖が成長するとどうなるのか知りたい。食べ物が調合できるなら、レイプは起きにくくなるはずだ」
「そうかもしれないですけど……」
「不安があるのは分かっているが、まずは調合できる条件を調べるのが先だ。それと、出来れば信用できる人間だけに情報は教えたい。殺傷力が高い強力な杖に成長して、独裁者が現れるのは困るからな」
納得できない顔をしている七海に、俺の考えを話していく。
状況が変わり、納得できる理由があれば、気持ちはどうあれ、人は我慢して協力してくれる。
そうした方が良いと分かっているからだ。
「はぁぁ、分かりましたよ。調合できたら、皆んなの所に戻るんですね?」
「いや、人里を探すという選択もある。回復薬が栄養ドリンクのようなタイプなら、水の代わりになるからな」
「なっ⁉︎ もぉー、会長! 優柔不断過ぎます! ハッキリしてくださいよ!」
「結果によって、行動を変えるのは当然だ。喉が渇いているなら、栄養ドリンクが欲しいと考えながら調合するんだな」
七海は進む道が一本道だと思っているようだが、それは違う。
途中で何度も分かれ道があり、時には強制的に進みたくない分かれ道を選ばされる。
自分で選べる道と運命によって選ばされる道がある。
誰もが自分の思った道に進めるわけじゃない。
望まずに異世界に連れて来られた俺達がいい例だ。
「とりあえずこれを使う。手持ちの物で一番魔物に近いからな」
財布から水色真珠を一粒取り出して、指に摘んだ状態で七海に見せた。
水色真珠を見ている七海の顔は、明らかに試す必要がないと思っている顔だ。
「これですか? 石ですよ?」
「言ったはずだ。固定観念に縛られるなと。とりあえず試してみれば分かる」
「はぁーい」と仕方ないといった感じに七海は返事をすると、棍棒の先を地面に置いた水色真珠にくっ付けた。
「調合・回復薬……会長、何も起きませんよ?」
「一つじゃ足りないのかもしれないな。全部使ってみるとするか」
呪文を唱えても水色真珠は変化しなかった。七海は呆れた表情で静かに苦情を言ってきた。
落ち葉を混ぜる相手には言われたくない。財布の中の水色真珠を地面に全部ばら撒いた。
水色真珠は全部で58個ある。これだけあれば足りるはずだ。
「はぁぁ、会長もムキになって子供ですね」
「早くやれ。駄目だったら、イモ虫を探してくる」
「はいはい。調合・回復薬……」
地面の水色真珠を二人で一ヶ所に集めていく。
七海はやる前から結果は分かっていますよ、といった顔をしている。
だが、やらないと結果は分からない。ある程度集まったので、七海に調合させた。
「あっ」と七海が声を出した。
水色真珠が三つ光って合わさると、形を変えていき、緑色の小瓶が一個出来てしまった。
「七海、これは何だと思う?」
「むぅー!」
六角柱のガラスのような小瓶を持ち上げて七海に聞くと、頬を膨らませて睨んできた。
ガラスの小瓶の中には液体が入っている。細長い丸蓋も付いていて、引っ張るだけで簡単に取れた。
瓶に蓋を戻すとピタリとくっ付いて、瓶を振っても蓋のグラつきはない。
蓋を手で押さえて瓶を逆さにして、蓋から軽く手を離して確かめても、蓋は落ちなかった。
これなら持ち運ぶのにも問題なさそうだ。
「量は栄養ドリンクぐらいだな。七海、俺が少し飲むから危ないと思ったら、リカバリーを使ってくれ」
「う、うん。でも、大丈夫だと思うよ」
「念の為だ」
七海が飲んで駄目だったら、回復する人間がいない。俺が毒味するのは当然の選択だ。
口の中に含んだ回復薬をゴクッと飲み込んだ。
味は濃いお茶のような味で少し苦いが、ドロドロした感じはしない。
問題なく飲料水として使える。
「お茶のような味で大丈夫そうだ。七海も飲め」
「それだと会長と間接キスになるじゃないですか」
「拭けば問題ない。それにキスなら直接しただろう? いまさら間接キス程度で恥ずかしがるな」
「べぇー! 別にしたくてしたんじゃないでぇーす!」
大丈夫だと差し出した小瓶を七海は拒否する。
飲めと言っているのに舌を出して、あかんべえをしている。
そして、勝手に二本目の回復薬の調合を始めた。
「好きにしろ。瓶は持ち運ぶのが面倒だから、飲む分だけ作るんだぞ」
「はいはい。分かってますよぉー」
「まったく……」
飲み水が手に入って元気が出たようだ。七海は回復薬を作ってはゴクゴクと一気に飲んでいる。
これだと水色真珠がすぐに無くなってしまう。
容器も手に入ったし、オシッコをリカバリー出来るか試してみないとな。
五匹の巨大イモ虫の群れを見つけて倒していると、七海が大声で呼んできた。
七海は倒したイモ虫を吸収していた。イモ虫から素早く離れて七海を見ると、杖の形が変化していた。
逃げようとするイモ虫達は、あとで追いかけて倒せるので七海の元に向かった。
「やっと成長したのか。遅い成長だ」
「むぅー、会長の方が小さい癖に」
イモ虫を五十三匹吸収して、七海の杖はやっと変化した。
杖から青い光が放出して、七海の手の中でムクムクと膨れ上がっている。
成長というだけあって、長さと太さが大きくなっていく。
長さは30センチが50センチぐらいに変わり、太さは野球のバットより少し小さい。
魔法の杖は指揮棒から棍棒に成長した。これなら武器としても使えそうだ。
「何か頭に浮かんだか?」と杖の成長が止まったので七海に聞いた。
杖の色は薄緑色のままだ。精神的な変化で杖の色が変化すると予想したが違ったようだ。
それとも七海に精神的な変化がまだ起こってないのか、変化しても影響しないかだ。
「はい。『level-up』と『調合・回復薬』の二つが浮かびました。レベルアップって、強くなれるって事ですよね? えっへへへ。私、会長よりも強くなっちゃいましたねぇ!」
俺を真っ直ぐに見て、七海は嬉しそうに言ってくる。俺よりも上になれたと思っているようだ。
レベルアップは七海の言う通り、身体能力を高める効果があると思う。
調合の回復薬は薬といっても、錠剤、粉状、液体と色々とある。
それに特定の材料が必要な場合は、その材料がないと使いものにならない能力になる。
杖の成長と戦力アップは出来たが、調合のやり方を調べないといけない。
「何を喜んでいる? 俺よりも強くなったのなら、お前もイモ虫を倒さないといけないんだぞ」
「えっー! 会長が倒してくださいよぉ!」
「駄目だ。その棍棒でイモ虫を叩き潰せ」
「嫌ですよ! 変な汁とか付きそうじゃないですか!」
新しい仕事を与えてやったのに、七海は棍棒を胸に抱き締めて守っている。
杖は鉄のように硬いのに木のように軽い。これを武器に使わない馬鹿はいない。
「まったく……まずはレベルアップを俺に試せ。逃げたイモ虫を倒してくる」
「フフッ。いいですよ。レベルアップ!」
七海が嬉しそうに杖の先端を向けて、レベルアップと唱えた。
棍棒型の杖の先端に直径10センチの白い球体が出現する。球体も大きくなっている。
「うっ、なるほど。こんな感じになるのか……」
杖から発射された白い光弾が身体にポフッと当たると、ワクワクとした高揚感が湧き上がる。
この高揚感が続いている間は効果があるという事だろう。
スマホのストップウォッチを起動して、正確な時間を測る事にした。
「俺はイモ虫を倒してくるから、七海はその辺の落ち葉や草で調合が出来るか試していてくれ」
「うん、分かった。任せておいて!」
七海に調合を任せるとイモ虫を追いかけた。五十三匹で成長するなら、次は俺の杖で確かめる。
♢
「回復薬になれ! 回復薬になれ!」
イモ虫を倒して七海の元に戻ると、地面に掘った穴に落ち葉と草を入れて、七海が棍棒で掻き混ぜていた。
魔女が鍋で何かを作っているような光景だが、子供のおままごとにしか見えない。
「何をやっているんだ? 呪文を唱えればいいんじゃないのか?」
「そんなの最初にやりました! 呪文を唱えても何も起こらないんです!」
何気なく聞いただけなのに、七海はスッと立ち上がって、手を振り回して怒ってきた。
完全な八つ当たりだ。
「俺に当たっても仕方ないだろう。それにここは異世界なんだ。材料に薬草を使わずに、石ころや砂、魔物の死体を使うのかもしれない。固定観念に縛られない事だ」
「むぅー、会長が葉っぱを使えって言ったのに……」
「俺は全知全能の神様じゃないんだ。間違う事もある。人に頼らずに自分で考えろという事だ」
俺の所為にする七海に自分で少しは考えろと注意する。
言われた方法が駄目なら、自分で考えて、成功するまで試すしかない。
「じゃあ、会長が倒したイモ虫で試すしかないですね」
「それは無理だ。杖で吸収した」
「もぉー、会長! またイモ虫探さないといけないじゃないですか! 何で残しておいてくれないんですかっ!」
「いちいち怒るな。見つけたら試せばいいだけだろう?」
イモ虫はないと伝えると、ショックを受けるよりも先に、七海はまた怒り出した。
七海の杖がまだ成長するとしても、次は百匹以上は吸収させないと駄目だ。
だったら、俺の杖を成長させた方が早い。
「怒って当然です。もうお腹が空いて動きたくないです。会長を信じて頑張ったのにダメダメじゃないですか」
「文句を言っても仕方ないだろう。それにお腹が空いたと言ったら、咥えさせると言ったはずだぞ?」
「うぅぅ、どうせ会長は言わなくてもします。会長はそういう人です」
七海はしゃがみ込むと、地面の穴の中の落ち葉を棍棒で掻き混ぜながら愚痴を言い始めた。
水分を取ってないから、かなり疲れ果てているようだ。自暴自棄になっている。
気合でこれから五十匹近くのイモ虫を探して倒すのは無理そうだ。
地面を掘って水が出るか、オシッコにリカバリーをかけて真水になるか試すしかない。
「危機的状況下で信頼関係は大切だぞ。それにこの場でやれる事もある。ほら、パンツも返してやる」
「そんなの当たり前です。女の子の下半身を冷やすのは駄目なんですよ」
「あぁ、悪かった」
七海の隣にしゃがむと、ブレザーのポケットから黄色の下着を取り出した。
七海は下着を受け取ると立ち上がって、慌てずに自然な動作で履いていく。
「んっ、それでこれから何をするんですか? エッチな事以外でお願いしますよ」
パンツを履き終わると少し機嫌を直した七海が聞いてきた。
「分かっている。考えられる行動は三つだ。七海の棍棒を借りて、俺一人でイモ虫を倒して、杖を成長させる。次に調合できる条件を調べる。最後に杖を成長させる方法をクラスの奴らの所に戻って報告だ」
「えっ! 戻るんですか⁉︎ 会長が言ったじゃないですか! 私がレイプされるから危ないって!」
三つの行動を言うと、七海は三つ目に強く反応した。
集団行動が危ないという最初の考えを否定するつもりはない。
だが、状況的に少数精鋭の選択は避けられない。
「成長した杖には調合があるんだ。食べ物を作れる奴が現れるかもしれない。それに白い杖が成長するとどうなるのか知りたい。食べ物が調合できるなら、レイプは起きにくくなるはずだ」
「そうかもしれないですけど……」
「不安があるのは分かっているが、まずは調合できる条件を調べるのが先だ。それと、出来れば信用できる人間だけに情報は教えたい。殺傷力が高い強力な杖に成長して、独裁者が現れるのは困るからな」
納得できない顔をしている七海に、俺の考えを話していく。
状況が変わり、納得できる理由があれば、気持ちはどうあれ、人は我慢して協力してくれる。
そうした方が良いと分かっているからだ。
「はぁぁ、分かりましたよ。調合できたら、皆んなの所に戻るんですね?」
「いや、人里を探すという選択もある。回復薬が栄養ドリンクのようなタイプなら、水の代わりになるからな」
「なっ⁉︎ もぉー、会長! 優柔不断過ぎます! ハッキリしてくださいよ!」
「結果によって、行動を変えるのは当然だ。喉が渇いているなら、栄養ドリンクが欲しいと考えながら調合するんだな」
七海は進む道が一本道だと思っているようだが、それは違う。
途中で何度も分かれ道があり、時には強制的に進みたくない分かれ道を選ばされる。
自分で選べる道と運命によって選ばされる道がある。
誰もが自分の思った道に進めるわけじゃない。
望まずに異世界に連れて来られた俺達がいい例だ。
「とりあえずこれを使う。手持ちの物で一番魔物に近いからな」
財布から水色真珠を一粒取り出して、指に摘んだ状態で七海に見せた。
水色真珠を見ている七海の顔は、明らかに試す必要がないと思っている顔だ。
「これですか? 石ですよ?」
「言ったはずだ。固定観念に縛られるなと。とりあえず試してみれば分かる」
「はぁーい」と仕方ないといった感じに七海は返事をすると、棍棒の先を地面に置いた水色真珠にくっ付けた。
「調合・回復薬……会長、何も起きませんよ?」
「一つじゃ足りないのかもしれないな。全部使ってみるとするか」
呪文を唱えても水色真珠は変化しなかった。七海は呆れた表情で静かに苦情を言ってきた。
落ち葉を混ぜる相手には言われたくない。財布の中の水色真珠を地面に全部ばら撒いた。
水色真珠は全部で58個ある。これだけあれば足りるはずだ。
「はぁぁ、会長もムキになって子供ですね」
「早くやれ。駄目だったら、イモ虫を探してくる」
「はいはい。調合・回復薬……」
地面の水色真珠を二人で一ヶ所に集めていく。
七海はやる前から結果は分かっていますよ、といった顔をしている。
だが、やらないと結果は分からない。ある程度集まったので、七海に調合させた。
「あっ」と七海が声を出した。
水色真珠が三つ光って合わさると、形を変えていき、緑色の小瓶が一個出来てしまった。
「七海、これは何だと思う?」
「むぅー!」
六角柱のガラスのような小瓶を持ち上げて七海に聞くと、頬を膨らませて睨んできた。
ガラスの小瓶の中には液体が入っている。細長い丸蓋も付いていて、引っ張るだけで簡単に取れた。
瓶に蓋を戻すとピタリとくっ付いて、瓶を振っても蓋のグラつきはない。
蓋を手で押さえて瓶を逆さにして、蓋から軽く手を離して確かめても、蓋は落ちなかった。
これなら持ち運ぶのにも問題なさそうだ。
「量は栄養ドリンクぐらいだな。七海、俺が少し飲むから危ないと思ったら、リカバリーを使ってくれ」
「う、うん。でも、大丈夫だと思うよ」
「念の為だ」
七海が飲んで駄目だったら、回復する人間がいない。俺が毒味するのは当然の選択だ。
口の中に含んだ回復薬をゴクッと飲み込んだ。
味は濃いお茶のような味で少し苦いが、ドロドロした感じはしない。
問題なく飲料水として使える。
「お茶のような味で大丈夫そうだ。七海も飲め」
「それだと会長と間接キスになるじゃないですか」
「拭けば問題ない。それにキスなら直接しただろう? いまさら間接キス程度で恥ずかしがるな」
「べぇー! 別にしたくてしたんじゃないでぇーす!」
大丈夫だと差し出した小瓶を七海は拒否する。
飲めと言っているのに舌を出して、あかんべえをしている。
そして、勝手に二本目の回復薬の調合を始めた。
「好きにしろ。瓶は持ち運ぶのが面倒だから、飲む分だけ作るんだぞ」
「はいはい。分かってますよぉー」
「まったく……」
飲み水が手に入って元気が出たようだ。七海は回復薬を作ってはゴクゴクと一気に飲んでいる。
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そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
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