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中編・前
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コン、コンと扉を叩く音が聞こえてきた。一仕事終えて、疲れて寝ていたのに起こされてしまった。ベッドから出て、扉の前まで移動するとノックに返事をした。
「……はい、何でしょうか……」
「パトリシア、少し話を聞きたいのだがいいか?」
すぐに扉の外からお父様の声が返ってきた。お父様以外にも複数の気配を感じる。きっと屋敷から戻らない王子を心配した御者か護衛の兵士がやって来たのだろう。
薄い寝巻きの上に分厚いガウンを着て、公爵令嬢として人に見られていい服装にすると、ゆっくりと扉を開けた。
「……はい、構いませんよ」
扉を開けると予想通り、お父様以外に兵士が二人いた。二人の男兵士は私を疑っている目をしている。
「そのだなぁ……パトリシア、お前の部屋にアルフォンス様がいるんじゃないのか?」
口髭を生やしたいい歳したお父様が、恥ずかしがり屋の少女のようにドキドキと顔を赤くしたり困ったりしながら聞いてきた。道理でなかなか誰も私の部屋に来ないはずだ。
兵士達は王子が戻って来ない理由を私の部屋で○○○していると想像したようだ。王子を隠し部屋に入れてから、二時間も経過しているので、これだけあれば十分だと判断したのだろう。
……フッ、わたくしは庶民と違って忙しいのです。十五分もあれば十分です。
「いえ、アルフォンス様とは二時間程前に庭園でお別れしました。わたくしの部屋には誰もいません」
心の中で軽く笑うと用意していた答えをお父様と兵士に言った。
「本当か? 本当にいないんだな?」
お父様は私の言葉を信じたい気持ちはあるようだけど、後ろの兵士二人は明らかに部屋の中を見たそうな目つきをしている。王子が行方不明になれば自分達の責任になるのだから、それだけ必死なのだろう。
「は、はい……よろしかったら、部屋の中を探してみてください……」
怯えるような戸惑いの表情を見せて、部屋の扉を大きく開けて、お父様と兵士二人に部屋の中に入ってもらった。二人の兵士は無言で部屋の隅々を探していく。
一応、洋服タンスやベッドの中を探す時は「こちらもよろしいですか?」と丁寧に聞いてくる。もちろん、「はい」と答えて頷いてあげた。この部屋に王子はいない。好きなだけ調べればいい。
「この部屋にはいない。ベッドの上にも痕跡はなかった」
「そうだな……じゃあ、どこに……」
部屋の捜索は終わったようだ。兵士二人は深刻な表情をしている。この後、どうすればいいのか分からないようだ。
「申し訳ありません、パトリシア様。アルフォンス様とはどのような話をしていたのですか?」
「それは……そのぉ……お話できる内容じゃ……」
兵士の一人が私に詰め寄って、庭園での会話を聞かせて欲しいとお願いしてきた。二人だけの内密な話なので答えたくないと私は断る。でも、すぐに兵士のもう一人が頭を下げて再びお願いしていきた。
「申し訳ありません。アルフォンス様が行方不明なのです。ご協力をお願いします」
……はい、予想通りのお願いありがとうございます。もちろん、ご協力してあげますよ。
「……分かりました。アルフォンス様に他に好きな女性が出来たので、婚約を考える時間が欲しいと頼まれました。おそらくその女性のところに向かわれたのかもしれません」
本当に答えたくないように兵士に教えた。衝撃の用意していた答えにお父様は驚いて口を開けている。兵士達は私に聞こえないように小声でパイ子の名前を言っている。これで次はパイ子の屋敷を探しに行くはずだ。頑張って探し回って欲しい。
「ふぅー、これで今日は良く眠れますね」
お父様と兵士達が部屋から出ると、ベッドの中に戻った。夜中に叩き起こされるパイ子の混乱振りを想像しただけで、フフッと笑ってしまう。今日は久し振りに良く眠れる予感がします。
「……はい、何でしょうか……」
「パトリシア、少し話を聞きたいのだがいいか?」
すぐに扉の外からお父様の声が返ってきた。お父様以外にも複数の気配を感じる。きっと屋敷から戻らない王子を心配した御者か護衛の兵士がやって来たのだろう。
薄い寝巻きの上に分厚いガウンを着て、公爵令嬢として人に見られていい服装にすると、ゆっくりと扉を開けた。
「……はい、構いませんよ」
扉を開けると予想通り、お父様以外に兵士が二人いた。二人の男兵士は私を疑っている目をしている。
「そのだなぁ……パトリシア、お前の部屋にアルフォンス様がいるんじゃないのか?」
口髭を生やしたいい歳したお父様が、恥ずかしがり屋の少女のようにドキドキと顔を赤くしたり困ったりしながら聞いてきた。道理でなかなか誰も私の部屋に来ないはずだ。
兵士達は王子が戻って来ない理由を私の部屋で○○○していると想像したようだ。王子を隠し部屋に入れてから、二時間も経過しているので、これだけあれば十分だと判断したのだろう。
……フッ、わたくしは庶民と違って忙しいのです。十五分もあれば十分です。
「いえ、アルフォンス様とは二時間程前に庭園でお別れしました。わたくしの部屋には誰もいません」
心の中で軽く笑うと用意していた答えをお父様と兵士に言った。
「本当か? 本当にいないんだな?」
お父様は私の言葉を信じたい気持ちはあるようだけど、後ろの兵士二人は明らかに部屋の中を見たそうな目つきをしている。王子が行方不明になれば自分達の責任になるのだから、それだけ必死なのだろう。
「は、はい……よろしかったら、部屋の中を探してみてください……」
怯えるような戸惑いの表情を見せて、部屋の扉を大きく開けて、お父様と兵士二人に部屋の中に入ってもらった。二人の兵士は無言で部屋の隅々を探していく。
一応、洋服タンスやベッドの中を探す時は「こちらもよろしいですか?」と丁寧に聞いてくる。もちろん、「はい」と答えて頷いてあげた。この部屋に王子はいない。好きなだけ調べればいい。
「この部屋にはいない。ベッドの上にも痕跡はなかった」
「そうだな……じゃあ、どこに……」
部屋の捜索は終わったようだ。兵士二人は深刻な表情をしている。この後、どうすればいいのか分からないようだ。
「申し訳ありません、パトリシア様。アルフォンス様とはどのような話をしていたのですか?」
「それは……そのぉ……お話できる内容じゃ……」
兵士の一人が私に詰め寄って、庭園での会話を聞かせて欲しいとお願いしてきた。二人だけの内密な話なので答えたくないと私は断る。でも、すぐに兵士のもう一人が頭を下げて再びお願いしていきた。
「申し訳ありません。アルフォンス様が行方不明なのです。ご協力をお願いします」
……はい、予想通りのお願いありがとうございます。もちろん、ご協力してあげますよ。
「……分かりました。アルフォンス様に他に好きな女性が出来たので、婚約を考える時間が欲しいと頼まれました。おそらくその女性のところに向かわれたのかもしれません」
本当に答えたくないように兵士に教えた。衝撃の用意していた答えにお父様は驚いて口を開けている。兵士達は私に聞こえないように小声でパイ子の名前を言っている。これで次はパイ子の屋敷を探しに行くはずだ。頑張って探し回って欲しい。
「ふぅー、これで今日は良く眠れますね」
お父様と兵士達が部屋から出ると、ベッドの中に戻った。夜中に叩き起こされるパイ子の混乱振りを想像しただけで、フフッと笑ってしまう。今日は久し振りに良く眠れる予感がします。
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