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第2章
第32話③キー・イベント
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「旦那様、お待たせしました。お二人を連れて参りました」
「ご苦労。下がっていいぞ」
フィリアとリラを部屋の床に座って待っていると、車椅子に乗せられた二人がメイド二人に連れて来られた。
何故、床に座っているかと聞かれたら、少しでも反省していると態度で示したいからだ。
「呪いを解く方はお前に選ばせてやる。まさか、実の妹にまで手を出してないだろうな?」
「うっ‼︎」
やっぱりお父さん、最初から拷問するつもりだ。
お父さんの期待を裏切るようで悪いですけど、妹に一番多く手も聖剣も出しました。
それはもうたっぷりと。
「い、妹でお願いします!」
だけど、兄妹だ。家族は助け合うものだ。
起こすなら助けてくれる可能性が少しでもある方を選びたい。
リラなんかは起きた瞬間に俺を殴り殺すに決まっている。
拷問に比べたら、それが一番楽な死に方だとしても、希望は最後まで持っていたい。
「妹でいいんだな?」
「はい」
「……分かった。では、武闘家の呪いを解く」
「……はい? えっ、えっ⁇」
妹だと言ったのに、急にお父さんが訳の分からない事を言い出した。
「どうした? 何を慌てている? 看病していただけなら、どっちを起こしても問題なかろう」
「そ、そうですね」
やっぱり最初から拷問するつもりだ。というかもう拷問始まっている気がする。
この部屋に連れて来られる前に、お父さんと執事長の入念な打ち合わせの匂いがプンプンする。
「”アンチカース〟」
てっきり人を呼んで呪いを解くと思っていたのに、お父さんがリラの頭に右手を置いて唱えた。
リラの身体が眩い白い光に包まれて、光に追い出されるように身体から黒いモヤが出てきて弾け飛んだ。
これだけでも分かる。お父さんは最低LV80はある高位の魔法使いだ。
「呪いは解除した。娘、起きられるか?」
「うっ……うっ……」
「あわわわわっ!」
お父さんの声に反応したのか、リラの目蓋がピクピクと二度大きく動いた。
そして、慌てる俺の予想を裏切り、リラの両目蓋が開いてしまった。
「ぐっ……!」
「そのままでいい。話を聞きたいだけだ」
リラが車椅子から立ち上がろうとしたけど、身体に上手く力が入らないみたいだ。
少しお尻が椅子から離れただけで、すぐに座ってしまった。
「くっ、ありがとうございます。聞きたい話とは何でしょうか?」
「まず、眠っている間の意識があったのか聞きたい。答えられるか?」
やっぱり相手によって全然態度が違うんだな。
普段の暴力的な態度と違って、幼馴染が借りてきた猫のように大人しい。
「はい、あります。全部覚えています」
「ひゃぁ!」
猫は猫でも獰猛な肉食猫だった。
ギロリと床に座る俺を睨みつけてきた。
身体が上手く動くなら、絶対にもう殴り殺しに飛びかかっている。
「では、そこの男に何をされたか知っているな? 人に話せないような酷い事をされたのなら無理に話さなくてもいい。頷くだけでいい。あとはこちらで処罰する」
あぁ、もう終わった。頷くだけで俺、殺されるんだ。
「お心遣い感謝します。ですが、看病されていただけです。お貴族様が心配なさるような事は、この臆病者には相手が絶対に起きなくても出来るはずがありません。それは幼馴染の私がよく知っています」
「リラぁ……」
信じられない事が起きてしまった。紛れもない奇跡だ。
あんな酷い事をした俺を許してくれるみたいだ。
お父さんに嘘まで吐いてくれている。
「ほぉー、何もしていないか。本当か?」
「はい、看病されていただけです。私が裸だったのは、この男がタオルで身体を拭いていただけです」
確かにお風呂上がりに身体は拭いていた。
これは嘘じゃない。本当の事だ。
「なるほど……フッ。では、そういう事にしておこう。これからお前達二人には、私の娘の呪いを解く為にダンジョンに行ってもらう。期限は【一ヶ月】だ。それまでにそこの僧侶が呪いを解けるようになれば、私の娘を危険な目に遭わせた事は不問にしよう」
お父さんが軽く笑うと話し始めた。
冒険者なんだから、危険な目に遭っても自己責任ですよね。
……と言えれば楽なんだけど、ヨハネに何したかはバレバレだ。
せっかくチャンスを与えくれているんだから、喜んで引き受けるしかない。
もちろん、俺は引き受けるけど、問題はリラだ。
俺に一ヶ月も付き合って、俺が強くなる手伝いをする必要はない。
「一ヶ月でいいんですね?」
また奇跡が起きてしまった。
やる気があるのか、リラが期限を確認している。
「ああ、一ヶ月だ。一ヶ月以内にこの屋敷に戻って、娘の呪いを解ければ無罪とする。出来なければ有罪として、そこの男に罰を与える。そして、もしも逃げ出した場合は、そこにいる妹に代わりに罰を受けてもらう。これが条件だ」
つまり妹を犠牲にして逃げれば、生きられるという事だ。
もちろん、それが許されるならばだ。
妹は当然許さない。そして、リラも許さないだろう。
「ご苦労。下がっていいぞ」
フィリアとリラを部屋の床に座って待っていると、車椅子に乗せられた二人がメイド二人に連れて来られた。
何故、床に座っているかと聞かれたら、少しでも反省していると態度で示したいからだ。
「呪いを解く方はお前に選ばせてやる。まさか、実の妹にまで手を出してないだろうな?」
「うっ‼︎」
やっぱりお父さん、最初から拷問するつもりだ。
お父さんの期待を裏切るようで悪いですけど、妹に一番多く手も聖剣も出しました。
それはもうたっぷりと。
「い、妹でお願いします!」
だけど、兄妹だ。家族は助け合うものだ。
起こすなら助けてくれる可能性が少しでもある方を選びたい。
リラなんかは起きた瞬間に俺を殴り殺すに決まっている。
拷問に比べたら、それが一番楽な死に方だとしても、希望は最後まで持っていたい。
「妹でいいんだな?」
「はい」
「……分かった。では、武闘家の呪いを解く」
「……はい? えっ、えっ⁇」
妹だと言ったのに、急にお父さんが訳の分からない事を言い出した。
「どうした? 何を慌てている? 看病していただけなら、どっちを起こしても問題なかろう」
「そ、そうですね」
やっぱり最初から拷問するつもりだ。というかもう拷問始まっている気がする。
この部屋に連れて来られる前に、お父さんと執事長の入念な打ち合わせの匂いがプンプンする。
「”アンチカース〟」
てっきり人を呼んで呪いを解くと思っていたのに、お父さんがリラの頭に右手を置いて唱えた。
リラの身体が眩い白い光に包まれて、光に追い出されるように身体から黒いモヤが出てきて弾け飛んだ。
これだけでも分かる。お父さんは最低LV80はある高位の魔法使いだ。
「呪いは解除した。娘、起きられるか?」
「うっ……うっ……」
「あわわわわっ!」
お父さんの声に反応したのか、リラの目蓋がピクピクと二度大きく動いた。
そして、慌てる俺の予想を裏切り、リラの両目蓋が開いてしまった。
「ぐっ……!」
「そのままでいい。話を聞きたいだけだ」
リラが車椅子から立ち上がろうとしたけど、身体に上手く力が入らないみたいだ。
少しお尻が椅子から離れただけで、すぐに座ってしまった。
「くっ、ありがとうございます。聞きたい話とは何でしょうか?」
「まず、眠っている間の意識があったのか聞きたい。答えられるか?」
やっぱり相手によって全然態度が違うんだな。
普段の暴力的な態度と違って、幼馴染が借りてきた猫のように大人しい。
「はい、あります。全部覚えています」
「ひゃぁ!」
猫は猫でも獰猛な肉食猫だった。
ギロリと床に座る俺を睨みつけてきた。
身体が上手く動くなら、絶対にもう殴り殺しに飛びかかっている。
「では、そこの男に何をされたか知っているな? 人に話せないような酷い事をされたのなら無理に話さなくてもいい。頷くだけでいい。あとはこちらで処罰する」
あぁ、もう終わった。頷くだけで俺、殺されるんだ。
「お心遣い感謝します。ですが、看病されていただけです。お貴族様が心配なさるような事は、この臆病者には相手が絶対に起きなくても出来るはずがありません。それは幼馴染の私がよく知っています」
「リラぁ……」
信じられない事が起きてしまった。紛れもない奇跡だ。
あんな酷い事をした俺を許してくれるみたいだ。
お父さんに嘘まで吐いてくれている。
「ほぉー、何もしていないか。本当か?」
「はい、看病されていただけです。私が裸だったのは、この男がタオルで身体を拭いていただけです」
確かにお風呂上がりに身体は拭いていた。
これは嘘じゃない。本当の事だ。
「なるほど……フッ。では、そういう事にしておこう。これからお前達二人には、私の娘の呪いを解く為にダンジョンに行ってもらう。期限は【一ヶ月】だ。それまでにそこの僧侶が呪いを解けるようになれば、私の娘を危険な目に遭わせた事は不問にしよう」
お父さんが軽く笑うと話し始めた。
冒険者なんだから、危険な目に遭っても自己責任ですよね。
……と言えれば楽なんだけど、ヨハネに何したかはバレバレだ。
せっかくチャンスを与えくれているんだから、喜んで引き受けるしかない。
もちろん、俺は引き受けるけど、問題はリラだ。
俺に一ヶ月も付き合って、俺が強くなる手伝いをする必要はない。
「一ヶ月でいいんですね?」
また奇跡が起きてしまった。
やる気があるのか、リラが期限を確認している。
「ああ、一ヶ月だ。一ヶ月以内にこの屋敷に戻って、娘の呪いを解ければ無罪とする。出来なければ有罪として、そこの男に罰を与える。そして、もしも逃げ出した場合は、そこにいる妹に代わりに罰を受けてもらう。これが条件だ」
つまり妹を犠牲にして逃げれば、生きられるという事だ。
もちろん、それが許されるならばだ。
妹は当然許さない。そして、リラも許さないだろう。
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