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16:愛の形②※ END
しおりを挟む今までαに対して抱いたことがない気持ち。αが欲しくて、抱かれたくて堪らない。けど、そのαは龍太じゃなければ意味がない。
Ωとしての本能と俺の欲求を満たすように龍太におねだりする。
「お願い、噛んで……」
敬語も忘れて、ただ懇願する。
「……っ、絶対、後悔させない。三葉、愛してる」
龍太の荒々しい吐息が俺の頸へ掛かる。
いよいよ、俺は龍太と番になるのだ。興奮で、突き出している腰が卑猥なダンスのように揺れ動いてしまう。そんな俺を落ち着かせるようにスリっと優しく尻を撫でる龍太が口を開けた音がした。
はむ……と柔らかい感覚にブルッと身を震えさせる。
歯が皮膚に充てがわれ、位置を調整してから徐々に力が込められていく。
「ぁ……あ、あっ!」
じわじわと不思議な痺れと多幸感の悦楽が襲ってきた。口を大きく開いたことで、喘ぎと空気が出入りする音だけしか出せなくなった。
頸に犬歯が食い込みプツリと皮膚を食い破った瞬間、俺は痛みとも何とも言えない感覚に目の前がチカチカした。
背筋を駆け抜ける電流、頸を中心に全身へ巡る何か。今までそんなに強く感じなかった龍太のフェロモンの香りが鮮明になった。身体が変わっていくのがリアルタイムで実感させられる。
血が溢れて、頸を伝う感触すら俺を興奮させる要素のひとつ。
『ピュク……ピュク、ピュッ』
頸を齧り付かれて、もう出ないと思っていた自分のモノがぴこぴこ跳ねながら、下敷きにしている龍太の服に白濁を飛ばしている。
龍太に噛まれた。俺は龍太だけのものという幸福感で堪らない気持ちにさせられた。
強く背後から抱きしめられ、噛み跡から溢れる血をペロリと舐められる。その柔らかな刺激すら気持ち良くて堪らない俺は完全に龍太のメスだった。
「ひ、あ……た、りゅーた」
「三葉……私の、三葉」
荒い呼吸を整えながら後ろを振り返ると龍太の熱の籠った目と視線が合う。そのまま手繰り寄せられるように唇が重なる。
快感を分け合うようにキスをしながら、どちらともなく腰を押し付けあい、再び中へ招き入れる。
先程の強過ぎる快感とはまた違った、じんわりとした甘い快感。
『グチュン』
「はぁ、柔らかい……三葉、動いていいですか?」
余裕のない声色。それでも俺に問い掛けてくれる龍太にコクリと頷くと、腰骨を掴まれて揺さぶられた。
腰を引かれる時にカリ首が内壁を掻き、差し込まれる時には奥まで抉られる。俺も腰をしならせて、より深い快感を龍太も感じられるように身体を密着させた。
激しいピストン運動で、ソファに座っている腰が引け、龍太が逃さないとばかりに激しく打ち込む。ズリズリと追い込まれて、ソファと龍太に挟まれて身動きが出来なくなった。良いところに当たりすぎて身体が仰け反る。その快楽に意識を落とさぬよう必死に背もたれへ掴まって意識を保つ。
「は、あん、ああっ、あっ! あ!」
「気持ちいい……止まらない、ずっと、三葉を愛していたい」
「ん、ひぅ、あい、してぇ、りゅーた」
限界が近い龍太の声も上擦っていて、腰を打ち付ける度に派手に卑猥な水音が響く。そこにソファの軋む音も混じり俺の鼓膜を犯す。
「ぅ、ん……あぁ、イッくぅ、イク! ひあ、ぁぁっーー!」
「くっ! すご……」
『ドクッ! ドクッ! ドクッ!』
力強く俺の中に大量の精を注ぎ込んできた龍太。俺はその心地良さに仰け反り痙攣しながら深く長い絶頂を迎えた。
「あ……ぁ、んんっ、りゅ──『ズブン!』かはっ!」
「三葉ごめん……もうちょっと付き合って」
「や、やぁ、今、イってる! りゅーた、ま、まって! ああ"あ"!!」
俺の制止の声を無視して、龍太はまた俺を穿ち始めた。
ほぼ背面座位で、ソファに挟まれている為、身動きできないし逃げられない。
「やぁあイく、イッく、ひぐぅうう、んあ、あぁ、あん"!」
「はぁ、はぁ、三葉、三葉ぁ」
絶頂してすぐに次の絶頂へ強制的に昇らされる。腰をガクガクと跳ねさせる俺を龍太が的確に休みなく突き上げる。
何度も何度も快楽の頂点から降りてこれず、更にその上へと連れて行かれそうになっている俺を繋ぎ止めているのも龍太だ。
「ごめ、止まらないんだ。三葉にもっと、私を刻んで、愛したい。好き、大好き」
龍太の愛の囁きを一つも聞き漏らしたくない。
『キュゥ』
「んああ!」
抱き寄せている手で乳首を弄られて身体が仰反ったタイミングで、中をごりごりと擦りながら奥の子宮を目掛けて腰を打ち突けてくる。
この期に及んでまだ快楽を追加されて、俺はジワリと下腹部から何かが迫り上がってくる感覚に腿を震わせた。
「あ、あぁ……やっ!」
「もう少し、んん! 出、る」
「やぁあだああああッ! おねがぃ、りゅーた待っ──ひゃぁあああ!!」
龍太は三度目となる精を中へ放った。それを受けて、俺は迫り上がってきたモノを押し留める事が出来ずに、呆気なくイった。
『プシャアア、ピュ、プシャ、ジョボ』
自分の意思では止められない潮が溢れてソファと服をビシャビシャと濡らしてしまった。
「あ、ああ……ひぅ、ん」
イきすぎて過敏になった全身が龍太の腕の中で余韻で未だ細かく痙攣している。
倦怠感に浸っていれば、中に入れていたモノを抜いた龍太が俺を抱き上げて浴室へ運び出した。
湯船には湯が張ってあり、身体も洗わずそこへゆっくり降ろされた。
そのまま龍太は俺を前から支えながら後へ指を二本入れた。
先程出した精を掻き出すように、ぐぷぐぷと粘着質な音を立てながら中を掻き乱す。
「龍太……もっと」
「もっと?」
『グリュ』
「ひぐッ! 違、もっとゆっくり!」
「あ、ごめん」
勘違いに慌てて指の動きを直す龍太。俺を見つめながら、中を掻き出す手付きは段々と滑らかになっていった。
温かいお湯でリラックスしていたら、龍太は俺の身体を抱きしめながら時折胸を優しく揉んだり、キスしたりしてきた。
そして頸にくっきり残った噛み跡を慈しむように舌でなぞる。愛されてるな、と幸せな気持ちのまま、俺は湯船でカクンと寝落ちした。
※※※
発情期セックスの後始末を全部、龍太に任せてしまった。
しかも、俺は一日で発情期が終わってしまい、龍太が発情期の間は接触禁止を士郎さんに言い渡されてしまった。
我を忘れてセックス三昧になって仕事が出来なくなるからだろう。事に雪崩れ込む様子が容易に想像が付く。
「……ふふ」
頸の凹凸に指を這わせて、跡が残っているのを確認する。
龍太のモノだという証を付けられたことで、発情期が終了しても発情中のような多幸感があった。
それから一ヶ月後、産人科へ経過報告を行なったのち、エコー検査を受けた。
先生は言い辛そうにしていたが、俺はずっと前から知ってるし、受け入れている。
子どもが出来ないって事は。
発情期も来て、番として身体も変化したからといって、不妊が治るかなんて博打でしかない。
女性の子宮とΩ男性の子宮は位置も形も違う為、女性向けの不妊治療が転用出来ない。治療法がない故、博打に頼らなければならない。今後の医療発展を祈る。
けど、今の俺にとって不妊はもうコンプレックスでもなく、ただの状態に過ぎない。
産人科の先生を前に、俺の内心は零せない。
「(……不妊で良かったなんて、先生の前で絶対言えない)」
辛い事も多かった。傷付く事も多かった。何度自殺が頭を過ぎったかわからない。けれど、俺のこの体質があったから、龍太と出会えた。龍太が俺を見つけてくれた。
龍太と出逢って、俺は一人の人間として漸く、幸せだと、胸を張れる。
出来ない事は出来ない。それでいい。
幸せの形は一つじゃない。
俺達の愛の形も一つじゃない。
「おかえりなさい。どうだった?」
「やっぱ出来ないって」
「そっかぁ。じゃ、私と三葉、ずっと二人っきりだね。ふふ、完璧な人生だ」
家に帰ってリビングで報告すると嬉しそうに抱き寄せられる。
士郎さんの前だけど、ぎゅうぎゅう抱き締められても恥ずかしがる事も無くなった。
敬語も無くなりグッと近くなった距離。
「龍太様、私はお邪魔ですか?」
「とんでもない。お前も側にいてくれ士郎。じゃないと三葉を家に一人にしてしまうし、心配で私は出勤出来ない」
「いや、そんな過保護にならなくても」
「三葉様、龍太様の過保護は一生ものですので覚悟していてください」
「マジかぁー……」
こんなに幸せでいいのか?
いいのか。うん。愛されていいんだ。愛していいんだ。
「末永く、よろしく」
「こちらこそ。さて、プランを考えなきゃ」
「プラン?」
「新婚旅行のプラン」
「お、ぉ」
まだまだ慣れない事は多そうだが、それもきっと良い思い出に出来るだろう。
龍太となら。
END
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