【R18】十二年の孤独な両片思い――解けない愛の無理関数

夜子

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番外章 カラー・オブ・ホーム:プライベート・コレクション :石小路家の色彩

作品 No.05 ——『深夜オフィスの告白』

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窓の外は、晩秋の冷たい雨。
誰もいないオフィスで、真翠がただ淡々とキーボードを叩く音だけが響いていた。
商談帰りの煌人は、酒のせいで少し顔を上気させ、手持ち無沙汰にゲーミングチェアを左右に揺らしている。

「……真翠、お前、いじめられてんの?」
「は? 何言ってるの。明日の作業がスムーズにいくように、自分の担当分を整理してるだけ」

煌人は少し視界が揺れるのを感じていた。新人の身代わりで飲んだ酒が、じわじわと頭を締め付ける。でも、真翠の隣にいると、尖った心が自然と丸くなっていくのが自分でも分かった。真翠は彼の赤い顔を見て、小さくため息をつく。

「休憩室のソファで横になってきたら? これ終わったら一緒に帰るから」
「……ん、わかった」

煌人は重い腰を上げ、技術部の休憩室へ向かった。ドアは閉めず、開けたまま。そこから見える真翠の横顔が、彼にとっての安らぎだった。
微睡みの中で、煌人は彼女がこの会社に来たばかりの、あの秋のことを思い出していた。

入社早々、「二人はデキてる」なんて噂が広まった。中には「コネ入社だ」と陰口を叩く奴までいた。
(バカかよ。こいつを面接に引っ張り出すまで、俺がどれだけ必死だったか……何も知らないくせに)

真翠はいわゆるFランク大学の出身だった。煌人はずっとそれを自分のせいだと思っていた。受験の時、無理を承知で自分の大学を受けろと強要したからだ。
追い込みの時期、煌人は真翠以上に必死で、鬼のような量の課題を彼女に押し付けた。泣きべそをかいている彼女を叱咤し、寝る間も惜しませて机に縛り付けるようにして勉強させた。一時は絶交寸前までいったが、彼女は彼が自分のために必死だと分かっていたから、黙ってついてきた。
結果は、当然のように不合格。彼女は滑り止めの大学に行くことになった。それでも彼女の両親も真翠も、一度も彼を責めなかった。

卒業後、就職がうまくいかずプログラミングの受託で食いつないでいた彼女を見かねて、煌人は彼女の両親に頭を下げた。「俺が責任を持って面倒を見るから」と。そうして、彼女をこの場所へ連れてきた。

真翠本人は、周囲の噂などどこ吹く風だった。
高校時代は他クラスの女子から煌人へのラブレターを預かり、大学ではバレンタインが近づくたびに、彼が好きなチョコ味を聞き出そうとする女子たちが彼女の元へ押し寄せた。煌人の周りが騒がしいのは、彼女にとってすでに「日常」であり、完全な免疫ができていたのだ。

ある時、煌人が真翠に真面目な顔で「会社ではどう振る舞うのが正解だと思う?」と尋ねた。真翠は、心底どうでもよさそうに言い放った。
「え? 別に今まで通りでいいんじゃない? 普通にしてれば」
その言葉を真に受けたのか、あるいは抑えきれなくなったのか。それからの煌人は、隠すどころか、いっさいの遠慮を捨てた。用もないのに甲斐甲斐しく技術部へ顔を出し、真翠の機嫌を窺っては差し入れを置いていく。
だが、意外なことに、その「堂々としすぎている特別扱い」が、かえって周囲の邪推を封じ込める結果となった。あまりに隠す様子がないので、同僚たちは「あぁ、あいつらは昔馴染みの、家族みたいな関係なんだな」と勝手に納得してしまい、かえって悪意のある噂は立ち消えていったのだ。

あの日も、今日と同じことを聞いた。
「真翠、いじめられてないか?」
真翠は手を止め、呆れたように彼を見た。
「ないってば」
「じゃあ、なんでお前一人だけ残業してんだよ」
「こういう仕事だから。自分の書いたコードは自分にしか分からないし、人に任せる方がよっぽどストレスなの」
「……そっか。ごめんな」
「え? 何が」
「技術部がこんなにキツいなんて、知らなかった」
「大げさだよ」
「給料だってそんなにいいわけじゃないのに、そこまで頑張る必要あんのか?」
「専業主婦になるよりはマシ。私、自分のお金で生きていきたいし」
「主婦もいいだろ。お前の母さんみたいにさ」
「お母さんね、『専業主婦になったのが人生最大の後悔』って言ってたよ」
「……嘘だろ。おじ様、あんなに尽くしてるのに」
「アイデンティティがすり減っていく感じがしたんだって」
「でも……俺なら、おじ様みたいに……」

その先の言葉を、煌人は飲み込んだ。まだ働き始めて一年。必死に食らいついているが、真翠の父親のような安定感なんて、今の自分には逆立ちしても出せない。

「はぁ……。お父さんみたいな人、なかなかいないよね」
真翠が自嘲気味に笑う。
「……いるよ。将来の子供にだって、俺なら……」
「誰が? どこの子供よ!」
真翠が本気で驚いた顔をする。煌人はニヤリと笑って、「俺たちの子供」と言いそうになるのをグッと堪えた。
そんな記憶を反芻しながら、彼はいつの間にか深い眠りに落ちていた。

「煌人。……煌人、起きて。終わったよ」

真翠の声が聞こえるが、意識が戻らない。薄暗い休憩室で、真翠は彼の寝顔を見つめていた。酒の匂いと、少し乱れた髪。
「……石小路煌人。誘惑したのは、そっちなんだからね」
真翠は独り言を漏らすと、吸い寄せられるように身をかがめ、彼の頬に唇を寄せた。それでは足りず、そっと、重なり合うように、彼の唇を塞ぐ。

その瞬間、煌人の意識が覚醒した。
キスされていると気づいた瞬間、彼は弾かれたように飛び起き、彼女の肩を掴んで引き離した。
真翠はぽかんとしている。「……どうしたの。煌人。キス、嫌だった?」

煌人はそれ以上にパニックになっていた。
「違う! ダメなわけないだろ! ただ……っ」
「ただ?」
「お前からさせるわけにいかないんだよ! ちゃんと家まで送って、お前の両親に挨拶して……」
「……家まで送る?」
「いや、違う。その前に、言わなきゃいけないことが……」
「何を?」
「ちょっと待て、三秒……いや、三十秒くれ」

煌人は深呼吸を繰り返し、震える手で真翠を立ち上がらせた。下を向いて「好きだ」「ずっと……」と呪文のように呟いている。三分後、ようやく彼は顔を上げ、真翠を正面から見据えた。両手で彼女の肩をがっちりと固定する。

「……石小路真翠。好きだ。死ぬほど好きだ。俺と、付き合ってくれ」

唐突なストレート。
真翠は言葉を失い、視界がじわじわと滲んでいった。こんな言葉、もう一生聞けないと思っていたから。
泣き出した彼女を見て、煌人は血の気が引いた。
「真翠、ごめん! 嫌ならいいんだ、忘れてくれ! 泣かないで!」

真翠は涙を拭い、満面の笑みを見せた。
「……『はい』だよ。ずっと待ってた」

「……マジで? ありがとう、真翠!」
煌人は彼女を壊れんばかりに抱きしめた。
だが、その安堵感は一瞬で別の熱に変わる。彼の手は吸い付くように彼女の上着の下へ滑り込み、背中を這い上がり、ブラジャーのホックを指先で探り始めた。

「――石小路煌人!!」
一喝され、煌人はようやく正気に戻る。
「あ、真翠……!」
「どこ触ってんの! ここ、会社!」
「ごめん! 寝ぼけてて……手が勝手に……!」

真翠は彼を突き放すと、猛烈な勢いで駐車場へ向かった。
(ほんっとに、純情なのは数秒だけ。四六時中、盛ってるの犬か、あいつは……!)

「真翠! 奥さん! 悪かったって! 手が、手が俺の言うこと聞かなかったんだよ!」
喚きながら追いかけてくる煌人を無視して、真翠は彼の車を運転してマンションへと向かった。雨の夜道。隣で運転する真翠の、少し真剣な表情を盗み見る。
あぁ、やっぱり夢じゃない。俺、本当にこいつと結婚したんだ。
さっき会社で怒鳴られたはずなのに、今の俺は「彼女の苗字を名乗る愛しい妻」が隣にいる幸福感だけで、もうおなかいっぱいだった。

玄関のドアを閉めた瞬間、煌人は背後から彼女を包み込んだ。
「……ごめん、真翠」
「どこが悪かったか、分かってるの?」
「……告白するのが、遅すぎたこと」
真翠は小さくため息を吐いた。「……やっぱり、私たちが考えてることって、全然違うんだね、でも、まあいいわ」

煌人は腕の力を緩めず、さらに深く彼女を抱きしめる。その腕は、かすかに震えていた。
「真翠……もし、17歳の時に言ってたら、頷いてくれた?」
真翠は彼の手を優しく叩いた。「……うん」
「19歳は?」
「……もちろん」
「23歳は?」
「……頷いてた」
「24歳は?」
「……ずっと『はい』って言いたかったよ」

高校、大学、あの秋……。煌人は過去の自分に問いかけるように繰り返し、最後に絞り出すような声で言った。
「……じゃあ、28歳の……あの最低だった時の俺は?」
声は、罪悪感で激しく震えていた。

真翠は彼の手をそっと解き、向き直ってその胸に飛び込んだ。
「頷くよ。煌人なら、いつだって、何度だって『はい』って答えるに決まってる」

積年の罪悪感が、ようやく溶けていく。
「……ごめんな、真翠。本当に、待たせた」
「いいよ。煌人だから」
「ありがとう。……こんな俺を、見捨てないでいてくれて」
「私の方こそ。……ずっと愛してくれて、ありがとう」

煌人は真翠の肩に額を預けたまま、熱っぽい吐息を漏らした。
「……ねぇ、真翠。ベッドに行こう。もう……我慢できない」

真翠は小さくため息をつきながらも、彼の手を引いて寝室へ向かった。
ベッドに倒れ込むと、真翠は煌人のあの柔らかい髪を自分の胸元に抱き寄せた。
「十五分だけ。エッチなことは考えちゃダメ」
煌人が顔を上げる。
「疲れた? したくないの?」
「……黙ってて」
「……ん、わかった」

十五分。秒針の音と雨音だけが響く静寂。
時間が過ぎるやいなや、煌人の手は吸い寄せられるように真翠の胸元を弄り始めた。
「真翠、時間だよ」
「……煌人、一つ聞いていい?」
「ん?」
「……いつから私に興味持ったの? ……あ、そうじゃなくて、私の『体』に興味持ったのはいつ?」

煌人は動きを止め、少し考えるように目を細めた。
「……初めてお前の家に連れて行ってもらった時。壁の隙間に挟まったお前を助けた、あの時かな」
「……やめてよ、恥ずかしい」
「俺が覚えているのは、真翠の胸が意外と大きくて、触ってみたいって思ったことだけ。……今みたいに」

そう言いながら、煌人の指先が下着の奥へと滑り込む。
「……っ……んあ……っ」
「真翠、気持ちいい? ……したくなった?」
「……ん……。あんなに何も言わないで、いつも……『お前みたいな華のない女、誰も欲しがらないよ』って、……私をバカにしてたクセに……っ」

煌人の動きが、凍りついたように止まった。
その言葉は、彼がかつて、彼女が自分から離れていかないようにと放ち続けた、呪いよりも残酷な「嘘」だった。

真翠の胸には、何年も積もり重なった「空っぽな自分」への絶望が渦巻いた。
偏差値の低い大学、取り柄のない性格、特徴のない顔。
(私は、誰にも欲しがられない、中身なんて何もない空っぽな女なんだ。煌人があんなに酷いことを言うのは、それが事実だからなんだ……)
そう思い込まされ、彼女は自分の殻に閉じこもってきたのだ。

煌人はシャツのボタンを外す手を止め、真翠の顔を覗き込んだ。その瞳は、後悔と、自らの卑劣さへの嫌悪で激しく揺れている。
「……不細工になんて、思ってない。華がないなんて、嘘だ。一度だって、そんなこと思ったことない……っ」

吸い付くような音を立てながら、煌人は掠れた声で、自分の罪を認めるように愛を零した。
「……真翠が、あまりにも良すぎて。……俺、自信がなかったんだ。お前が自分の価値に気づいて、誰かに奪われるのが怖くて……だから、あんな最低な言葉でお前を縛って、俺のそばに閉じ込めておきたかったんだ……っ。……ちゅ、……ん」

煌人の答えを聞いた瞬間、真翠の中で何かが弾けた。
思考がそこに至った時、真翠の手は無意識に動いていた。
胸元にあるその毛羽立った頭を、思い切りはたく。

「――いったっ……! ……真翠?どうした、真翠。俺、なんか痛いことしたか?」

「……石小路煌人」
「……ん、はい」
「これから、またあんたの好きなチョコの味を聞きに来る女がいたら、こう言ってやるから。……『こいつは私の男だから、手を出すな』って」

煌人は呆然と真翠を見上げた。その真剣な、少しだけ潤んだ瞳を見て、ふっと相好を崩す。
「……あはは、是非そう言って。もし真翠が勝てそうになかったら、俺も加勢するし」
「……そこは『そんな女は現れないよ』って言うところでしょ」
「あぁ、そうか。……ごめん、真翠。そんな奴、もう現れないよ。……今まで、ずっと寂しい思いさせて、ごめんな」

「大丈夫ですよ」

煌人は体を起こすと、真翠の瞳をじっと見つめ、その唇に深いキスを落とした。
「……俺にはあなたが必要なんだ、真翠。……お前がいないと、もうダメなんだ。これから、俺の全部をお前に捧げるから」

煌人の唇が真翠の鎖骨をなぞり、喉から漏れる声を吸い取るように何度も唇を重ねた。十数年抑えてきた渇望が、深い接吻となって真翠を酔わせていく。
煌人の手は、真翠の細い腰をしっかりと抱き寄せた。
「真翠、……俺だけを見て。……他の誰でもない、今ここにいる俺を、その瞳に焼き付けて……」

真翠が潤んだ瞳で彼を見つめ返すと、煌人の視線はさらに熱を帯びた。
彼は彼女の脚をゆっくりと、慈しむように開き、自身の熱い楔を入り口に押し当てる。
「……あ、……ぁ……っ」

結合の瞬間、真翠は煌人の肩に顔を埋めた。
彼は急ぐことなく、真翠の身体が自分を受け入れるのを待つように、じわじわと、深く、深く沈み込んでいく。
重なり合う場所からは、「……くちゅり」と、微かだけれど確実な、甘く湿った音が漏れ出した。

「……真翠……ずっと、こうしたかった。お前の全部を、俺のものにしたかったんだ」

煌人の動きは、どこまでも執拗で、そして心底丁寧だった。
真翠が一番弱くなる場所を、彼は逃さず、けれど優しく抉るように突き上げる。
腰を動かすたびに、「……ちゅぷ、……じゅぷ」と、密着した肌の間から愛液が溢れ出し、シーツを濃い色に変えていく。

「……あ、……そこ、……っ、あ……っ!……煌、人……っ、……っ」
「……いいよ。……もっと、声聞かせて。……俺の名前を、呼んで……」

煌人は真翠の指を再び絡め取り、彼女をシーツに深く沈めながら、さらに深く、深く密着した。
肌と肌が激しく吸い付くたびに、「……ぺちっ、……じゅるり」という卑猥な音が、二人の体温を極限まで引き上げていく。
真翠の首筋には、煌人の荒い呼吸が吹きかかり、彼女はその熱に浮かされるように、ただ彼の背中に爪を立てた。

「……あ、あぁっ……!……煌、人……っ!……すき、……だいすき、……っ」
「……真翠……っ!……ああ、……愛してる、……っ……愛してる……!」

絶頂が近づくにつれ、煌人の動きは少しずつ余裕を失い、激しさを増していく。
けれど、その根底にあるのは、彼女を壊したくないという切ないほどの慈しみ。
弾けるような衝撃ではなく、とろけるような熱情が、二人の境界線を完全に溶かしていった。

煌人は最後の一突きで、彼女の奥深くに全てを解き放った。
「……っ、……あ……ああ、真翠。……やっと、俺のものになった……」

しばらくの間、二人は繋がったまま、互いの心音を確認するように強く抱きしめ合っていた。
窓の外の秋雨は、二人をこの世界から切り離し、永遠に閉じ込めるための静かな結界のように、降り続いていた。
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