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番外章 カラー・オブ・ホーム:プライベート・コレクション :石小路家の色彩
作品 No.03 ——『 窓外の花火 』
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仕事で積み重なった疲れも、真翠と煌人の夏祭りへの情熱を消し去ることはできなかった。二人がこうして祭りの雰囲気を楽しむのは、一体いつ以来だろう。数年前は仕事の忙しさですれ違い、ここ数年はどこか落ち着かない空気が続いていた。だが、結婚してようやく、あの頃のような初々しい熱情を取り戻したのだ。
煌人は真翠の手を引き、人混みを縫うように進んでいく。二人が着ているお揃いの浴衣は、真翠がこの日のために特別に用意したものだ。ずっと夢見ていた――こうして堂々と手を繋いで、祭りに来ることを。
煌人は真翠を連れて、ある懐かしい場所へと辿り着いた。
「真翠、ここ、覚えてるか?」
「えっ……急に何?」
「覚えてるみたいだな。じゃあ、埋め合わせをしてくれよ」
「埋め合わせって……何言ってるの、変なの」
「前、ここに来た時……君にキスしたくて、おかしくなりそうだったんだ」
「……誰かに見られちゃうよ」
「俺たちは夫婦だ。見られたって構わないだろ?」
「も……もう、キスだけだよ?」
「ああ、キスだけだ」
真翠がそっと目を閉じると、煌人の唇が重なった。何度も、深く、名残惜しそうに。やがて彼は、真翠の襟元をわずかに広げ、その肩先にも柔らかなキスを落とした。
「待って……」
「嫌か?」
「ダメ……ここではダメよ……」
「見られるのが怖い?」
「ここでしちゃうと、バチが当たるわ」
「ふーん……じゃあ、場所を変えよう」
「でも、打ち上げ花火が……」
「あそこからでも見えるよ。俺と一緒に来てくれるか?」
真翠は顔を伏せ、煌人の手をぎゅっと握り返した。向かったのは、河川敷からほど近いラブホテルの予約していた一室。
「……いつから予約してたの?」
「一ヶ月前だ。ここなら眺めがいいから、特等席で花火が見えると思って」
真翠はベッドに腰を下ろすと、わざと襟元を少しはだけさせてみせた。
「……ねぇ、あなたが本当に見たいのは花火なの? それとも……別のもの?」
煌人は不敵に笑いながら近づいてきた。「俺の言う『花火』は、空に上がるやつだけじゃないんだ。試してみるか?」
窓の外で大きな破裂音が響き、夜空が真紅に染まった。その鮮やかな光が、薄暗い部屋のベッドに座る二人のシルエットを浮き彫りにする。
煌人(あきひと)は真翠(まつい)を膝の上に抱き上げたまま、その細い腰を大きな手で引き寄せた。
「真翠……本当は外で一緒に花火を見たかったんだ。……我慢できなくて、ごめんな」
真翠は彼の首に腕を回し、耳元で小さく笑った。
「いいよ。……私も、こうしたかったから。それに、ここからでも花火は見えるでしょ?」
その言葉が合図だった。煌人は彼女の唇を塞ぐように深く、貪るようなキスを落とした。
「なぁ、真翠……。家でもたまに浴衣を着てくれないか?」
煌人の手が、彼女の腰に巻かれた帯の結び目に掛かる。
「えっ……どうして?」
「……脱がせる時、すごく興奮するんだ」
「……変態」
真翠は顔を赤らめながらも、彼の肩に顔を埋めた。帯が解かれ、重なり合っていた布地がハラリと床に落ちる。
「嫌いか?」
「嫌いじゃないけど……。……本当に、たまにだけだよ?」
「ありがとう。真翠は俺の願いを全部叶えてくれるな。……まるで女神様だ。いや、真翠こそが俺の唯一の女神だよ」
「……っ、こんな時にそんなこと言わないで。恥ずすぎるわ……」
煌人の手が、はだけた浴衣の下、熱を帯びた肌に直接触れた。
「……真翠、見て」
窓の外では、黄金色の柳のような花火がゆっくりと枝垂れ落ちていた。
「外の花火も綺麗だけど……俺が見たいのは、こっちだ」
煌人は彼女をゆっくりとベッドに押し倒した。
「準備、できてるか?」
「……もう、野暮なこと聞かないで……」
半開きのカーテンの隙間から、打ち上げ花火の極彩色が容赦なく流れ込んでくる。
煌人は真翠の腰をがっしりと掴み、窓の方を向かせるように四つん這いにさせた。
「……っ、見て、真翠。……外、すごく綺麗だ」
外では、空を震わせるほどの轟音が響き渡っていた。「ドン――ッ!!」
大輪の『菊』が夜空に弾けた瞬間、煌人はその振動に合わせるように、真翠の奥深くへと腰を叩きつけた。
「あ、ああああっ……! 煌人、すごい……っ!」
「ドン、ドン、ドン――ッ!!」
連続して打ち上がるスターマイン。その破裂音と、肉体の衝突音が、完璧なリズムで同調(シンクロ)し始めた。
「……はぁ、はぁ……真翠、聞こえるか?……外の音と、お前のナカの音……一緒だ……」
「……っ、もう、やめて……おかしくなっちゃう……! あ、ああああっ!!」
煌人が腰を突き入れるたびに、窓ガラスがガタガタと震え、彼女の身体も同じリズムで激しく揺さぶられた。
「……行くぞ、真翠……っ! 花火と一緒に……っ!!」
煌人は最後の一突きを、これ以上ないほど深く、重く、叩き込んだ。
「ドォォォォン――ッ!!!」
黄金色の『錦冠』が夜空を埋め尽くした瞬間、真翠は絶叫に近い声を上げ、絶頂に達した。
夜空が静寂を取り戻し、煌人はぐったりとした真翠を抱き上げ、浴室へと運んだ。シャワーを浴びた後、二人はそのまま広めの浴槽へと身を沈めた。
「真翠……さっき、すごく熱かっただろ?」
「……ん、どうして急にそんなこと聞くの?」
「花火の温度って、1000度から2000度にもなるらしいよ。……でも、俺にはお前の中の方がずっと熱く感じた」
「……っ、もう。……バカなこと言わないで」
「今度は、この水の中で試してみようか」
煌人の手が、水面下で真翠の滑らかな腹部をなぞり、再びあの場所へと指を滑らせた。
「……信じられない。……あなた、疲れっていう言葉を知らないの?」
「真翠となら、何度だって疲れないよ。……真翠は、もう疲れたか?」
「……あと一回くらいなら、大丈夫……かな」
「……ふっ、じゃあ、しようか」
湯船の中で、煌人は背後から真翠を抱きしめた。
「真翠……花火、見えたか?」
「……ん、少しだけ見えたかな」
「来年は……もっとちゃんと、一緒に見られるように頑張るから」
「本当? 約束してくれる?」
「うーん……やっぱり、やめとく。万が一また守れなかったら、真翠をがっかりさせちゃうだろ?」
「……知ってた。バカね、煌人」
「なぁ、真翠……今、すごく熱くないか?」
「えっ? 急にどうしたの?」
「さっきの1000度が、まだ全然冷めないんだ。だから、もう一回……このお風呂の中でしなきゃいけない気がする」
「……何バカなこと言ってるの。したいなら、素直にそう言いなさいよ」
「……うん、したい。真翠、いいだろ?」
「……一回だけなら、まあ。明日も仕事なんだからね」
「……明日、二人で休んじゃわないか?」
「石小路煌人! あなた、社会人でしょ! わがまま言わないの!」
「はい! じゃあ、社会人へのご褒美として、もう一回……いただくよ」
「……ちょっ、煌人……っ」
真翠の抗議は、煌人の深い口づけによって飲み込まれた。
狭い浴槽の中で、煌人は真翠を自分と向き合うように膝の上に乗せた。水流が激しく波打ち、お湯がタイルに音を立ててこぼれ落ちる。
「……フルネームで呼ばれるの、嫌いじゃないよ。……もっと、俺の名前を呼んで」
「……あっ、んぅ……っ、本当……あなたは……っ」
「社会人の特権だよ。……真翠、愛してる」
煌人は浮力を利用して深く、力強く突き上げる。
「あ……は……っ、真翠、二番戦(にかいせん)最高だ……。お前の中、すごく柔らかくて……まるで俺の形を覚えてるみたいだ」
「……っ、そんなこと言わないで……あぁっ!」
「真翠、気持ちいいか?」
「……わかん、ない……っ」
「本当に? 本当にわからないのか、それとも……」
再び、今度はさらに深く、内壁を抉るように腰を叩きつけた。
「んっ……んぅ……っ!!」
「真翠、すごく感じてるだろ。……いい声だ。もっと大きく鳴いていいよ、ここは防音バッチリだから」
「……やめて、いじめないで……っ、水音が、すごすぎて……恥ずかしい……っ」
「言わせてくれないなら、身体で分からせるしかないよな……っ」
煌人は容赦のない速度で突き上げを再開した。
「バシャッ、バシャバシャッ!!」
「……あ、ああっ! 煌人、そこ……っ、ダメ、おかしくなる……っ!」
「ダメじゃない……もっと、俺を締め付けて……そう、いい子だ……」
煌人は真翠の唇を強引に奪い、声を封じ込めた。
「……んむっ、んんぅ……っ!!」
煌人が最後の一突きを渾身の力で叩き込んだ瞬間、真翠は絶頂の波に呑み込まれていった。
煌人は真翠を抱き抱えたまま浴槽から出ると、洗い場にある椅子に腰を下ろした。そして、彼女を自分の膝の上に正面から向き合わせるように座らせた。
真翠の豊満な胸が、煌人の硬い胸筋にぴったりと密着する。
「真翠、対面して。さっき一回だけって約束したのに……。でもあまりにも気持ちよくて、もう一回だけ、いいだろ? 一回だけ。真翠は座ってればいい、俺が動くから」
「……あなた……本当に、疲れを知らないのね……」
「真翠なら、真翠なら、何度だって疲れないよ。入れるよ」
「あ……あ……ん……」
「気持ちいいか、真翠、気持ちいいか?」
煌人は彼女の腰をぐっと引き寄せ、自らの楔を、下から深く突き上げた。
「――っ、あ、あああ……っ!!」
座った状態での結合は、今までのどの体位よりも深く、真翠を圧迫した。
「……あ、ああっ……深い、深すぎるわ……っ、煌人……っ!」
「真翠……いい子だ。お前はただ、俺に身を任せて座っていればいい。……あとは全部、俺がやるから」
「……っ、ふ、あぁっ……! す、すごい……っ、中が、全部……あなたので、埋まってる……っ!!」
浴室には、激しい水音の名残と、二人の重なり合う吐息がいつまでも響き渡っていた。
煌人は、腕の中でついに力尽きて深い眠りに落ちた真翠の寝顔を、月光の下でじっと見つめていた。さっきまでの激しい熱狂が嘘のように、今の彼女は穏やかな呼吸を刻んでいる。
「真翠……愛してるよ」
届かないと分かっていても、彼はその耳元で、羽毛が触れるような小さな声で囁いた。
煌人は彼女の頬を指先でそっと撫でる。吸い付くような、驚くほど柔らかな肌の感触。
(……夏祭り、やっぱり最高だったな)
煌人の胸の奥には、まだあの打ち上げ花火のような高揚感が燻っている。
(来年もきっと、こうして我慢できずに連れ帰っちゃうんだろうな……。……あぁ、約束しなくて正解だったよ。真翠には悪いけど)
彼は満足げに口角を上げると、彼女の頬を親指で優しくなぞった。
「真翠……お前、もしあの時もっと強硬に『花火が見たい』って言ってたら、俺だってちゃんと最後まで付き合ったのに」
煌人は真翠の鼻先に自分の鼻を擦り寄せ、彼女から漂う石鹸と情愛の混じった甘い香りを深く吸い込んだ。
「……本当、真翠はどうしてどこもかしこも、こんなに柔らかいんだ……。ふふっ、ずるいよな、お前は」
煌人は彼女をさらに強く、壊れ物を扱うような手つきで抱きしめ直した。
窓の外では、祭りの後の静寂がどこまでも深く広がっている。
けれど、煌人の腕の中に灯った小さな火は、朝が来るまで消えることはなさそうだった。
煌人は真翠の手を引き、人混みを縫うように進んでいく。二人が着ているお揃いの浴衣は、真翠がこの日のために特別に用意したものだ。ずっと夢見ていた――こうして堂々と手を繋いで、祭りに来ることを。
煌人は真翠を連れて、ある懐かしい場所へと辿り着いた。
「真翠、ここ、覚えてるか?」
「えっ……急に何?」
「覚えてるみたいだな。じゃあ、埋め合わせをしてくれよ」
「埋め合わせって……何言ってるの、変なの」
「前、ここに来た時……君にキスしたくて、おかしくなりそうだったんだ」
「……誰かに見られちゃうよ」
「俺たちは夫婦だ。見られたって構わないだろ?」
「も……もう、キスだけだよ?」
「ああ、キスだけだ」
真翠がそっと目を閉じると、煌人の唇が重なった。何度も、深く、名残惜しそうに。やがて彼は、真翠の襟元をわずかに広げ、その肩先にも柔らかなキスを落とした。
「待って……」
「嫌か?」
「ダメ……ここではダメよ……」
「見られるのが怖い?」
「ここでしちゃうと、バチが当たるわ」
「ふーん……じゃあ、場所を変えよう」
「でも、打ち上げ花火が……」
「あそこからでも見えるよ。俺と一緒に来てくれるか?」
真翠は顔を伏せ、煌人の手をぎゅっと握り返した。向かったのは、河川敷からほど近いラブホテルの予約していた一室。
「……いつから予約してたの?」
「一ヶ月前だ。ここなら眺めがいいから、特等席で花火が見えると思って」
真翠はベッドに腰を下ろすと、わざと襟元を少しはだけさせてみせた。
「……ねぇ、あなたが本当に見たいのは花火なの? それとも……別のもの?」
煌人は不敵に笑いながら近づいてきた。「俺の言う『花火』は、空に上がるやつだけじゃないんだ。試してみるか?」
窓の外で大きな破裂音が響き、夜空が真紅に染まった。その鮮やかな光が、薄暗い部屋のベッドに座る二人のシルエットを浮き彫りにする。
煌人(あきひと)は真翠(まつい)を膝の上に抱き上げたまま、その細い腰を大きな手で引き寄せた。
「真翠……本当は外で一緒に花火を見たかったんだ。……我慢できなくて、ごめんな」
真翠は彼の首に腕を回し、耳元で小さく笑った。
「いいよ。……私も、こうしたかったから。それに、ここからでも花火は見えるでしょ?」
その言葉が合図だった。煌人は彼女の唇を塞ぐように深く、貪るようなキスを落とした。
「なぁ、真翠……。家でもたまに浴衣を着てくれないか?」
煌人の手が、彼女の腰に巻かれた帯の結び目に掛かる。
「えっ……どうして?」
「……脱がせる時、すごく興奮するんだ」
「……変態」
真翠は顔を赤らめながらも、彼の肩に顔を埋めた。帯が解かれ、重なり合っていた布地がハラリと床に落ちる。
「嫌いか?」
「嫌いじゃないけど……。……本当に、たまにだけだよ?」
「ありがとう。真翠は俺の願いを全部叶えてくれるな。……まるで女神様だ。いや、真翠こそが俺の唯一の女神だよ」
「……っ、こんな時にそんなこと言わないで。恥ずすぎるわ……」
煌人の手が、はだけた浴衣の下、熱を帯びた肌に直接触れた。
「……真翠、見て」
窓の外では、黄金色の柳のような花火がゆっくりと枝垂れ落ちていた。
「外の花火も綺麗だけど……俺が見たいのは、こっちだ」
煌人は彼女をゆっくりとベッドに押し倒した。
「準備、できてるか?」
「……もう、野暮なこと聞かないで……」
半開きのカーテンの隙間から、打ち上げ花火の極彩色が容赦なく流れ込んでくる。
煌人は真翠の腰をがっしりと掴み、窓の方を向かせるように四つん這いにさせた。
「……っ、見て、真翠。……外、すごく綺麗だ」
外では、空を震わせるほどの轟音が響き渡っていた。「ドン――ッ!!」
大輪の『菊』が夜空に弾けた瞬間、煌人はその振動に合わせるように、真翠の奥深くへと腰を叩きつけた。
「あ、ああああっ……! 煌人、すごい……っ!」
「ドン、ドン、ドン――ッ!!」
連続して打ち上がるスターマイン。その破裂音と、肉体の衝突音が、完璧なリズムで同調(シンクロ)し始めた。
「……はぁ、はぁ……真翠、聞こえるか?……外の音と、お前のナカの音……一緒だ……」
「……っ、もう、やめて……おかしくなっちゃう……! あ、ああああっ!!」
煌人が腰を突き入れるたびに、窓ガラスがガタガタと震え、彼女の身体も同じリズムで激しく揺さぶられた。
「……行くぞ、真翠……っ! 花火と一緒に……っ!!」
煌人は最後の一突きを、これ以上ないほど深く、重く、叩き込んだ。
「ドォォォォン――ッ!!!」
黄金色の『錦冠』が夜空を埋め尽くした瞬間、真翠は絶叫に近い声を上げ、絶頂に達した。
夜空が静寂を取り戻し、煌人はぐったりとした真翠を抱き上げ、浴室へと運んだ。シャワーを浴びた後、二人はそのまま広めの浴槽へと身を沈めた。
「真翠……さっき、すごく熱かっただろ?」
「……ん、どうして急にそんなこと聞くの?」
「花火の温度って、1000度から2000度にもなるらしいよ。……でも、俺にはお前の中の方がずっと熱く感じた」
「……っ、もう。……バカなこと言わないで」
「今度は、この水の中で試してみようか」
煌人の手が、水面下で真翠の滑らかな腹部をなぞり、再びあの場所へと指を滑らせた。
「……信じられない。……あなた、疲れっていう言葉を知らないの?」
「真翠となら、何度だって疲れないよ。……真翠は、もう疲れたか?」
「……あと一回くらいなら、大丈夫……かな」
「……ふっ、じゃあ、しようか」
湯船の中で、煌人は背後から真翠を抱きしめた。
「真翠……花火、見えたか?」
「……ん、少しだけ見えたかな」
「来年は……もっとちゃんと、一緒に見られるように頑張るから」
「本当? 約束してくれる?」
「うーん……やっぱり、やめとく。万が一また守れなかったら、真翠をがっかりさせちゃうだろ?」
「……知ってた。バカね、煌人」
「なぁ、真翠……今、すごく熱くないか?」
「えっ? 急にどうしたの?」
「さっきの1000度が、まだ全然冷めないんだ。だから、もう一回……このお風呂の中でしなきゃいけない気がする」
「……何バカなこと言ってるの。したいなら、素直にそう言いなさいよ」
「……うん、したい。真翠、いいだろ?」
「……一回だけなら、まあ。明日も仕事なんだからね」
「……明日、二人で休んじゃわないか?」
「石小路煌人! あなた、社会人でしょ! わがまま言わないの!」
「はい! じゃあ、社会人へのご褒美として、もう一回……いただくよ」
「……ちょっ、煌人……っ」
真翠の抗議は、煌人の深い口づけによって飲み込まれた。
狭い浴槽の中で、煌人は真翠を自分と向き合うように膝の上に乗せた。水流が激しく波打ち、お湯がタイルに音を立ててこぼれ落ちる。
「……フルネームで呼ばれるの、嫌いじゃないよ。……もっと、俺の名前を呼んで」
「……あっ、んぅ……っ、本当……あなたは……っ」
「社会人の特権だよ。……真翠、愛してる」
煌人は浮力を利用して深く、力強く突き上げる。
「あ……は……っ、真翠、二番戦(にかいせん)最高だ……。お前の中、すごく柔らかくて……まるで俺の形を覚えてるみたいだ」
「……っ、そんなこと言わないで……あぁっ!」
「真翠、気持ちいいか?」
「……わかん、ない……っ」
「本当に? 本当にわからないのか、それとも……」
再び、今度はさらに深く、内壁を抉るように腰を叩きつけた。
「んっ……んぅ……っ!!」
「真翠、すごく感じてるだろ。……いい声だ。もっと大きく鳴いていいよ、ここは防音バッチリだから」
「……やめて、いじめないで……っ、水音が、すごすぎて……恥ずかしい……っ」
「言わせてくれないなら、身体で分からせるしかないよな……っ」
煌人は容赦のない速度で突き上げを再開した。
「バシャッ、バシャバシャッ!!」
「……あ、ああっ! 煌人、そこ……っ、ダメ、おかしくなる……っ!」
「ダメじゃない……もっと、俺を締め付けて……そう、いい子だ……」
煌人は真翠の唇を強引に奪い、声を封じ込めた。
「……んむっ、んんぅ……っ!!」
煌人が最後の一突きを渾身の力で叩き込んだ瞬間、真翠は絶頂の波に呑み込まれていった。
煌人は真翠を抱き抱えたまま浴槽から出ると、洗い場にある椅子に腰を下ろした。そして、彼女を自分の膝の上に正面から向き合わせるように座らせた。
真翠の豊満な胸が、煌人の硬い胸筋にぴったりと密着する。
「真翠、対面して。さっき一回だけって約束したのに……。でもあまりにも気持ちよくて、もう一回だけ、いいだろ? 一回だけ。真翠は座ってればいい、俺が動くから」
「……あなた……本当に、疲れを知らないのね……」
「真翠なら、真翠なら、何度だって疲れないよ。入れるよ」
「あ……あ……ん……」
「気持ちいいか、真翠、気持ちいいか?」
煌人は彼女の腰をぐっと引き寄せ、自らの楔を、下から深く突き上げた。
「――っ、あ、あああ……っ!!」
座った状態での結合は、今までのどの体位よりも深く、真翠を圧迫した。
「……あ、ああっ……深い、深すぎるわ……っ、煌人……っ!」
「真翠……いい子だ。お前はただ、俺に身を任せて座っていればいい。……あとは全部、俺がやるから」
「……っ、ふ、あぁっ……! す、すごい……っ、中が、全部……あなたので、埋まってる……っ!!」
浴室には、激しい水音の名残と、二人の重なり合う吐息がいつまでも響き渡っていた。
煌人は、腕の中でついに力尽きて深い眠りに落ちた真翠の寝顔を、月光の下でじっと見つめていた。さっきまでの激しい熱狂が嘘のように、今の彼女は穏やかな呼吸を刻んでいる。
「真翠……愛してるよ」
届かないと分かっていても、彼はその耳元で、羽毛が触れるような小さな声で囁いた。
煌人は彼女の頬を指先でそっと撫でる。吸い付くような、驚くほど柔らかな肌の感触。
(……夏祭り、やっぱり最高だったな)
煌人の胸の奥には、まだあの打ち上げ花火のような高揚感が燻っている。
(来年もきっと、こうして我慢できずに連れ帰っちゃうんだろうな……。……あぁ、約束しなくて正解だったよ。真翠には悪いけど)
彼は満足げに口角を上げると、彼女の頬を親指で優しくなぞった。
「真翠……お前、もしあの時もっと強硬に『花火が見たい』って言ってたら、俺だってちゃんと最後まで付き合ったのに」
煌人は真翠の鼻先に自分の鼻を擦り寄せ、彼女から漂う石鹸と情愛の混じった甘い香りを深く吸い込んだ。
「……本当、真翠はどうしてどこもかしこも、こんなに柔らかいんだ……。ふふっ、ずるいよな、お前は」
煌人は彼女をさらに強く、壊れ物を扱うような手つきで抱きしめ直した。
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