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続・魔界王立幼稚園ひまわり組
15:近づく嵐
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木1「見ないでー」
木2「こないれー」
木3「食うじょー」
姫 「王子しゃまはどこー?」
はい、ここで先生のナレーション。
『どうしても突然消えてしまった王子様に会いたかったお姫様は、コウモリの案内で喋る森を進んでいきました。そしてとうとう見つけたのです』
蝙蝠「何を見ても驚かないと約束しましたね、お姫様」
姫 「あでぇー! 竜れすぉ!」
飛竜「おちめしゃま!」
……すごい。すごすぎる。なんだ、この迫真の演技は。
お遊戯会まであと一週間。只今劇の練習中です。
もっと簡単なものにしないと無理だと思っていたが、グダグダながらも劇は形になっている。三・四歳児に照れは無い。表情豊かにオーバーアクションでなりきれるのがすごい。
若干クライマックス担当のリノ姫とさんちゃん竜王子の舌滑が不安だが、このシーンで最も台詞が多いのがコウモリさんと森の木々だ。うん、ペルちやんがコウモリさんで本当に良かった。それに木とか石とか全部に台詞があるのがすごい。マジで喋って動くしね、木も石も。
「上手だったよ。ペルちゃんはよく台詞を覚えたね。森の木さんもうねうね上手だったよ」
うねうねは本物だしね。蔦のボウちゃんのリアル蔓だ。
「じゃあ、今日はこれまで。明日は最後までやってみようね。次はお歌だよ」
「あーい!」
そろそろ衣装も出来上がるし、本番が楽しみだね。
バラ組さん、スミレ組さんからも可愛い歌声が響いてくる。あと一週間。保護者の方々も楽しみにしてくれてるし、素敵なお遊戯会になるといいな。
オルガンに合わせてご機嫌で子供達がお歌を唄っていると、いきなりドアがバーンとけたたましい音を立てて開いた。
……犯人は一人だ。相変わらずだね。
「エイジ君、もう少しそーっと開けようよ。ドア怒ってるよ」
「ココナさん、今すぐ来て下さい!」
すごく焦った顔のエイジ君。何か普通で無いという事はわかった。
「どうしたの?」
「ここでは……」
子供達を見渡して、エイジ君が目で早く来いと訴えたので、何か言いたげなてんちゃんとメイア先生に後を任せて続いた。
廊下に出て数歩行った所で、エイジ君は立ち止まって私の肩に両手を置いた。そして難しい顔で大きく息を吸った。
「お、おお、おちっ、落ち着いて聞いて下さいっ」
「エイジ君も落ち着こうか」
もう一度大きく息を吸ったエイジ君は絞りだすような声で言った。
「天界の使者が攻めて来ました」
「え?」
一瞬意味がわからなかった。だがその意味を理解した時、じわじわと恐怖が沸き起こってきた。
天界の者が魔界に来る理由は唯一つ。
「場所はツツルです。幸い……でも無いですが、今のところ人民の被害は最少にとどめられています」
「最少って、被害が出たの!?」
「一人だけ……ですが」
ものすっごい緊急事態じゃないのよ! 長閑にお遊戯会の練習をしている場合じゃないじゃないの。
エイジ君について魔王様の玉座の間へ走る。私が行ったところで事態が変るわけでもないのだが、魔王様が心配。それに……。
ああ、さっちゃん。きっと一番傷ついて落ち込んでいるのはさっちゃんだわ。きっと自分を責めているに違いない。
「魔王様!」
部屋に飛び込むとやんわりと受け止められた。当然といえば当然なのだが、ウリちゃんが先に来ていた。
「ココナさん、静かに」
彼の顔にもいつもの微笑みは無い。大好きな緑の瞳は悲しげな光を湛えていた。
天井近くのステンドグラスの光だけの、薄暗い魔王様の玉座の間。
響くのは嗚咽と自分を責める言葉だけ。
「私の、私のせいです……私がいるから……」
床に泣き臥せってるのはさっちゃん、サリエノーアさん。その横に魔王様が静かに立っておられた。
その魔王様の目の前には信じられない姿があった。それはよく知った人。
キラキラと輝く透き通った輝き。顔も、髪の一筋まで全く変ってないのに
そこには水晶細工の様な美しい石像と化してしまった……。
「ツツルから連絡を受け、こちらに転移させた」
魔王様の静かな声。
「メル……ヒノア様……?」
それは魔王様の姉上、ツツルの王妃メルヒノア様だった。
一人だけの犠牲者ってお姉様だったの?
いや……嫌だ。他の誰かでも悲しいけど、でも、でも。肉親といってもよい人だなんて。賑やかで可愛くて元気な、心はずっと子供のままのメルヒノア様。足が震えて力が入らない。倒れそうになって魔王様に支えられた。
魔王様は涙も見せておられない。本当のお姉様だもの。私なんかより余程辛くていらっしゃるはずなのに、それでも堪えておいでなのだ。だから私も一生懸命涙を堪えた。
「突然現れた天使がサリエノーアさんの所在を探していたそうです。つてを辿ってメルヒノア様の幼稚園へ。ペルルリル君が通っていましたからね。そこで子供達を守るために身を晒されたメルヒノア様が……」
ウリちゃんが魔王様に代わって説明してくれた。
そうだね、きっとメルヒノア様なら躊躇いも無く自分を犠牲にして子供達を守ろうとなさるだろう。きっと私でもそうする。でも、あれ?
「ちょっと待って? 確かに最初にさっちゃんが魔界に降りて来て住んでいたのはツツルだったかもしれないけど、お父さんは夏祭りの日にこのドドイルにいるってもう見つけたはず。そして魔王様が説得して帰られたのでしょう?」
「きっと母です……こんな事を出来るのは母しかいません」
小さくさっちゃんが呟いた。
「母は冷たく、冷酷な死の天使。私と同じ目を持つ天使。お父様の言う事を聞くような方ではありません。きっと私が飛び込んだ窓から自らおいでに……」
なるほど。そういうことか。それならば辻褄があう。
「やはり私は魔界にいてはいけないのです。私が今更帰ったとて、大事な魔王様の姉上が生き返るわけでも無いのですが……私一人の勝手で沢山の方に迷惑をかけ、多くの命を奪い……お願いします。私を殺してください、魔王様!」
血の出るような叫び。
辛いだろう、苦しいだろう。でも、でもそれじゃ駄目なの、さっちゃん。それでは何も変わらないの。悲しみだけが大きくなるだけで。きっとそんな事誰も望んでない。ペルちゃんのお父さんもメルヒノア様も。何より魔王様にそんな事が出来るわけが無いじゃないの。優しい魔王様にそんな残酷なお願いをしないで。それは嫌いと言うよりも酷い事なの。
「……子はどうする?」
ほんの僅かに眉を顰められただけに見える魔王様は、搾り出すような声でそうとだけ仰った。でも握り締めた手が震えているのが見えた。
何か声を掛けようにもそんな雰囲気じゃなかった。私はそろりと黙って見守っているウリちゃんやエイジ君の方へ移動した。
しばらくの沈黙の後、魔王様が口を開かれた。
「帰る事も許さぬ、死ぬ事も許さぬ。それでは何の解決にもならない。私はこの世の民を守る義務がある。あなたの子も私の国の民。悲しい思いをさせて良いのか? 私は許さないぞ。そして、自分の親に自らの意思を告げてもらわないと困るのだ。自分に罪の意識があるならば、それを償ってもらわねば」
冷たい言い方だったが、魔王様は何一つ間違った事は仰っていない。感情に任せて動かれるような方でなくて本当に良かった。
泣き崩れるさっちゃんを見おろしていた魔王様が、いきなり私の方を向かれた。
「ココナさん、これを」
え? 私っ?
いきなり傍観者から中央に振られて思いきり動揺したが、示された通りに手を出すと、魔王様は私の手の上に何かを置かれた。
「姉上はまだ生きておられる。そう強い魔力は持ってないが、姉とて魔王の実の娘。虚空に消える事無く、魂をここへ移動されたのだ」
魔王様が差し出されたのは銀の鎖の小さな花のトップのペンダント。
「これは……私が誕生日に差し上げた首飾り」
そう。何年か前、百三十三歳のお誕生日にユーリちゃんと一緒に作ってお渡ししたものだ。魔界では百三十三がおめでたい数だからと、それを記念して。真ん中に髪の色と同じ真っ赤な魔法石を嵌めて、周りをオレンジの石で飾ったの。丁度ひまわりみたいな形に。大好きなお姉様がずっと元気で笑顔でありますようにと願いをこめて。
微かに赤い石が規則正しく光っている。温かく優しい光。
「メルヒノア様……」
本当にここにいるのですね。ああ、ほんの少しだけど嬉しい!
「理由はわからない。だが、考えてみれば人間の勇者が攻めて来た時も、天界の力を籠めた腕輪を跳ね返したのはココナさんだった。あれと同じ力が働いたのだと思う。だから姉上はこうして消えずに済んだのだ。ぜひ、魂を守ってやって欲しい」
「はあ……」
そういえばそんな事もあったわね。でも何? 私は別に特別なことをしたわけでも無いのに。それに石になってしまったメルヒノア様を戻すことが出来るわけでも無いのに。
それは魔王様が考えておいでだった。
「私はまだ諦めてはいない。姉上はこうして生きておいでなのだ。体を元に戻すことさえ出来れば良いのだから」
魔王様が力強く言われた。
「元に戻すことが出来るのはこうした本人だけだ。つまりもう一度お母様には来ていただかねばならない。それ故、今天界に帰られても困るのだ、サリエノーアさん」
「魔王様……」
気がつくと晴天だった空は土砂降りに変わっていた。
きっとこれは魔王様の涙の雨。
前もそういえば大変な事はお遊戯会の前だった。そして今度も……。
でも、私は子供達の笑顔を消すわけにはいかない。私に何が出来るかわからないけれど、それでも。
嵐が近づいていた。
木2「こないれー」
木3「食うじょー」
姫 「王子しゃまはどこー?」
はい、ここで先生のナレーション。
『どうしても突然消えてしまった王子様に会いたかったお姫様は、コウモリの案内で喋る森を進んでいきました。そしてとうとう見つけたのです』
蝙蝠「何を見ても驚かないと約束しましたね、お姫様」
姫 「あでぇー! 竜れすぉ!」
飛竜「おちめしゃま!」
……すごい。すごすぎる。なんだ、この迫真の演技は。
お遊戯会まであと一週間。只今劇の練習中です。
もっと簡単なものにしないと無理だと思っていたが、グダグダながらも劇は形になっている。三・四歳児に照れは無い。表情豊かにオーバーアクションでなりきれるのがすごい。
若干クライマックス担当のリノ姫とさんちゃん竜王子の舌滑が不安だが、このシーンで最も台詞が多いのがコウモリさんと森の木々だ。うん、ペルちやんがコウモリさんで本当に良かった。それに木とか石とか全部に台詞があるのがすごい。マジで喋って動くしね、木も石も。
「上手だったよ。ペルちゃんはよく台詞を覚えたね。森の木さんもうねうね上手だったよ」
うねうねは本物だしね。蔦のボウちゃんのリアル蔓だ。
「じゃあ、今日はこれまで。明日は最後までやってみようね。次はお歌だよ」
「あーい!」
そろそろ衣装も出来上がるし、本番が楽しみだね。
バラ組さん、スミレ組さんからも可愛い歌声が響いてくる。あと一週間。保護者の方々も楽しみにしてくれてるし、素敵なお遊戯会になるといいな。
オルガンに合わせてご機嫌で子供達がお歌を唄っていると、いきなりドアがバーンとけたたましい音を立てて開いた。
……犯人は一人だ。相変わらずだね。
「エイジ君、もう少しそーっと開けようよ。ドア怒ってるよ」
「ココナさん、今すぐ来て下さい!」
すごく焦った顔のエイジ君。何か普通で無いという事はわかった。
「どうしたの?」
「ここでは……」
子供達を見渡して、エイジ君が目で早く来いと訴えたので、何か言いたげなてんちゃんとメイア先生に後を任せて続いた。
廊下に出て数歩行った所で、エイジ君は立ち止まって私の肩に両手を置いた。そして難しい顔で大きく息を吸った。
「お、おお、おちっ、落ち着いて聞いて下さいっ」
「エイジ君も落ち着こうか」
もう一度大きく息を吸ったエイジ君は絞りだすような声で言った。
「天界の使者が攻めて来ました」
「え?」
一瞬意味がわからなかった。だがその意味を理解した時、じわじわと恐怖が沸き起こってきた。
天界の者が魔界に来る理由は唯一つ。
「場所はツツルです。幸い……でも無いですが、今のところ人民の被害は最少にとどめられています」
「最少って、被害が出たの!?」
「一人だけ……ですが」
ものすっごい緊急事態じゃないのよ! 長閑にお遊戯会の練習をしている場合じゃないじゃないの。
エイジ君について魔王様の玉座の間へ走る。私が行ったところで事態が変るわけでもないのだが、魔王様が心配。それに……。
ああ、さっちゃん。きっと一番傷ついて落ち込んでいるのはさっちゃんだわ。きっと自分を責めているに違いない。
「魔王様!」
部屋に飛び込むとやんわりと受け止められた。当然といえば当然なのだが、ウリちゃんが先に来ていた。
「ココナさん、静かに」
彼の顔にもいつもの微笑みは無い。大好きな緑の瞳は悲しげな光を湛えていた。
天井近くのステンドグラスの光だけの、薄暗い魔王様の玉座の間。
響くのは嗚咽と自分を責める言葉だけ。
「私の、私のせいです……私がいるから……」
床に泣き臥せってるのはさっちゃん、サリエノーアさん。その横に魔王様が静かに立っておられた。
その魔王様の目の前には信じられない姿があった。それはよく知った人。
キラキラと輝く透き通った輝き。顔も、髪の一筋まで全く変ってないのに
そこには水晶細工の様な美しい石像と化してしまった……。
「ツツルから連絡を受け、こちらに転移させた」
魔王様の静かな声。
「メル……ヒノア様……?」
それは魔王様の姉上、ツツルの王妃メルヒノア様だった。
一人だけの犠牲者ってお姉様だったの?
いや……嫌だ。他の誰かでも悲しいけど、でも、でも。肉親といってもよい人だなんて。賑やかで可愛くて元気な、心はずっと子供のままのメルヒノア様。足が震えて力が入らない。倒れそうになって魔王様に支えられた。
魔王様は涙も見せておられない。本当のお姉様だもの。私なんかより余程辛くていらっしゃるはずなのに、それでも堪えておいでなのだ。だから私も一生懸命涙を堪えた。
「突然現れた天使がサリエノーアさんの所在を探していたそうです。つてを辿ってメルヒノア様の幼稚園へ。ペルルリル君が通っていましたからね。そこで子供達を守るために身を晒されたメルヒノア様が……」
ウリちゃんが魔王様に代わって説明してくれた。
そうだね、きっとメルヒノア様なら躊躇いも無く自分を犠牲にして子供達を守ろうとなさるだろう。きっと私でもそうする。でも、あれ?
「ちょっと待って? 確かに最初にさっちゃんが魔界に降りて来て住んでいたのはツツルだったかもしれないけど、お父さんは夏祭りの日にこのドドイルにいるってもう見つけたはず。そして魔王様が説得して帰られたのでしょう?」
「きっと母です……こんな事を出来るのは母しかいません」
小さくさっちゃんが呟いた。
「母は冷たく、冷酷な死の天使。私と同じ目を持つ天使。お父様の言う事を聞くような方ではありません。きっと私が飛び込んだ窓から自らおいでに……」
なるほど。そういうことか。それならば辻褄があう。
「やはり私は魔界にいてはいけないのです。私が今更帰ったとて、大事な魔王様の姉上が生き返るわけでも無いのですが……私一人の勝手で沢山の方に迷惑をかけ、多くの命を奪い……お願いします。私を殺してください、魔王様!」
血の出るような叫び。
辛いだろう、苦しいだろう。でも、でもそれじゃ駄目なの、さっちゃん。それでは何も変わらないの。悲しみだけが大きくなるだけで。きっとそんな事誰も望んでない。ペルちゃんのお父さんもメルヒノア様も。何より魔王様にそんな事が出来るわけが無いじゃないの。優しい魔王様にそんな残酷なお願いをしないで。それは嫌いと言うよりも酷い事なの。
「……子はどうする?」
ほんの僅かに眉を顰められただけに見える魔王様は、搾り出すような声でそうとだけ仰った。でも握り締めた手が震えているのが見えた。
何か声を掛けようにもそんな雰囲気じゃなかった。私はそろりと黙って見守っているウリちゃんやエイジ君の方へ移動した。
しばらくの沈黙の後、魔王様が口を開かれた。
「帰る事も許さぬ、死ぬ事も許さぬ。それでは何の解決にもならない。私はこの世の民を守る義務がある。あなたの子も私の国の民。悲しい思いをさせて良いのか? 私は許さないぞ。そして、自分の親に自らの意思を告げてもらわないと困るのだ。自分に罪の意識があるならば、それを償ってもらわねば」
冷たい言い方だったが、魔王様は何一つ間違った事は仰っていない。感情に任せて動かれるような方でなくて本当に良かった。
泣き崩れるさっちゃんを見おろしていた魔王様が、いきなり私の方を向かれた。
「ココナさん、これを」
え? 私っ?
いきなり傍観者から中央に振られて思いきり動揺したが、示された通りに手を出すと、魔王様は私の手の上に何かを置かれた。
「姉上はまだ生きておられる。そう強い魔力は持ってないが、姉とて魔王の実の娘。虚空に消える事無く、魂をここへ移動されたのだ」
魔王様が差し出されたのは銀の鎖の小さな花のトップのペンダント。
「これは……私が誕生日に差し上げた首飾り」
そう。何年か前、百三十三歳のお誕生日にユーリちゃんと一緒に作ってお渡ししたものだ。魔界では百三十三がおめでたい数だからと、それを記念して。真ん中に髪の色と同じ真っ赤な魔法石を嵌めて、周りをオレンジの石で飾ったの。丁度ひまわりみたいな形に。大好きなお姉様がずっと元気で笑顔でありますようにと願いをこめて。
微かに赤い石が規則正しく光っている。温かく優しい光。
「メルヒノア様……」
本当にここにいるのですね。ああ、ほんの少しだけど嬉しい!
「理由はわからない。だが、考えてみれば人間の勇者が攻めて来た時も、天界の力を籠めた腕輪を跳ね返したのはココナさんだった。あれと同じ力が働いたのだと思う。だから姉上はこうして消えずに済んだのだ。ぜひ、魂を守ってやって欲しい」
「はあ……」
そういえばそんな事もあったわね。でも何? 私は別に特別なことをしたわけでも無いのに。それに石になってしまったメルヒノア様を戻すことが出来るわけでも無いのに。
それは魔王様が考えておいでだった。
「私はまだ諦めてはいない。姉上はこうして生きておいでなのだ。体を元に戻すことさえ出来れば良いのだから」
魔王様が力強く言われた。
「元に戻すことが出来るのはこうした本人だけだ。つまりもう一度お母様には来ていただかねばならない。それ故、今天界に帰られても困るのだ、サリエノーアさん」
「魔王様……」
気がつくと晴天だった空は土砂降りに変わっていた。
きっとこれは魔王様の涙の雨。
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