魔界王立幼稚園ひまわり組

まりの

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続・魔界王立幼稚園ひまわり組

16:実験してみよう

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 子供達が帰った後、大好きな伯母さんの姿を見て泣き崩れたユーリちゃんも含め、身内だけで緊急会議とあいなった。
 さっちゃんはアイマスクのせいで泣いてるのかどうかはよくわからないが、黙って座っている。本当はお部屋で休ませてあげたいところだけど、そうもいかない。ペルちゃんはリノちゃんと共にお城の人達に預けてきた。
 すぐにでもお遊戯会中止の決定を出すべきだと、魔王様には私達全員が進言した。だが魔王様は聞き入れて下さらなかった。
「あんなに一生懸命練習している子供達になんと説明する?」
「しかし……国賓もおいでになり、危険ではございませんか」
 ウリちゃんが真っ当な事を言っている。
 人間の国からも子供達が来るし、多分王様も来る。保護者の方々も皆……この城に人が集まるとなると、もしその時に来られたら多くの被害が予想される。
「確かに天界の力にも魔力にも直接被害を受けないのが人間ですが、恐らく石化の邪視には耐えられますまい。」
「それはそうだがな……」
 うーんと唸る男性陣一同。
「じゃあ、いっそもっと早くにサリエノーアさんのお母さんに来てもらえば? お遊戯会前に事を済ましてしまえばいいんじゃないかな。メル伯母さんも早く元に戻してあげて欲しいし」
 ユーリちゃんのご意見です。いずれにせよメルヒノア様を元に戻すには、もう一度さっちゃんのお母様に来てもらわなければならない。うん、それはいいかもしれない。
「それはそうだが。こちらの話を聞いて下さるだろうか? 強制的に娘を連れ帰るだけでは無いのだろうか」
 一同の目がさっちゃんに集中する。
「あの、お母さんって……怖い?」
「頑固で怖い方です。お父様の百倍くらいは」
「……」
 規準はわかり辛いが、あの目玉のお父さんはとりあえず魔王様の説得に応じてくれる理解はあったしね。
 なぜだかわからないが、ここは女として私が何か意見を出さないといけない気がするのだ。たとえこのなかで一番当事者から遠いのが私であっても。
 何だかんだで、違う世界の天使だったって子の母親だ。私や幼稚園の園児の保護者の方々と同じなんじゃなかろうか。
 頑固で怖いお母さん。でも娘の事を心配して来ちゃうんだから、やはりそこは親の情があるはず。
 考えろ、私。
 はいっ、と思わず手を上げてみた。
「なんでしょう、ココナさん」
 魔王様が発言を許してくれたので、立ち上がってみる。
「お母様はペルちゃんの事を知ってるんですよね?」
「姉上の幼稚園に押しかけたくらいだからな。知っているだろう」
「勿論、お父様もご存知ですよね」
「そうだな。祭りのときに話した」
「……そこです」
 ぴきーんと何かが閃きましたよ。
 さっちゃんママにある程度の一般常識が通用するとしての前提だが。
「ペルちゃんはさっちゃんの子供。という事は、天界のご両親はおじいちゃん、おばあちゃんと言う事になりますよね。孫に会わせてあげたらどうでしょう」
 一同きょとーんです。
「それに何か意味があるのだろうか」
「大有りです。たとえ出来ちゃった婚で親と不仲になった親子でも、大抵相手が誰であろうと孫は可愛いもの。特にあんなに可愛い子ですもの、きっとおばあちゃんはメロメロになっちゃいますよ」
「あー、なんかオレの親戚もそんな感じでした」
 エイジ君がうんうんと頷いている。
「自分の子は可愛いです。でも孫はもっと可愛いかもしれないと思いませんか、魔王様? 直接責任の無い分、無条件で可愛い存在、それが孫」
 うーんと唸っている魔王様だが、きっといつものリノちゃんを溺愛するあのじじぃっぷりだからわかってくれると思うんですよね。
「その……何となくわかるかな」
「もし、天界のお母様かお父様に連絡する手段があるとすれば、孫に合わせてあげますよ~とご招待すればいいんですよ。で、ペルちゃん同伴のもと話し合いの場を持てば、きっと納得していただけると思うんです」
「……孫ごと連れて帰るとか言い出しませんかね?」
 はっ! ウリちゃんのツッコミはその通りだった。
 いや……考えてみたら魔王様さえ納得していただけたら、それもありかなとも思うけど。いや待てよ、ペルちゃんは半分とはいえ、れっきとした魔族だ。まだ小さいし、天界では生きてはいけないかもしれない。
「私……こんな事を言えた立場ではないですが……帰りたくない」
 ぽつりとさっちゃんが呟いた。
 誰だかわからないけど、好きな人がいるんだもんね。辛いよね、それも。
「同じ魔族だったら、ペルちゃんがお友達と仲良くしてる姿や、お遊戯会で一生懸命劇をやってるところでも見せられたら変ると思うんですけどね」
 大抵、モンスターペアレントでも意識かわるよね。
「あ……!」
 うーんと考えこんでいたウリちゃんが何か閃いたように顔を上げた。
「わたくしも閃いたかもしれませんよ」
 そしてにやっと満面の笑みを浮かべた。あ、なんがその笑いは黒い。その顔で思いつく事はあまり良いとは思えない。
「魔王様、ちょっと……」
 何ですか、耳打ちって。最初の肝心のところは私の地獄耳をもってしても聞えなかったが、そのあとの小声のやりとりは聞えた。
「うむ、それは。上手くいけば素晴らしいが……」
「でしょう? というわけで早速試してみましょうか」
「試すといってもな……」
「そこは、まあもし失敗してもよいもので」
 なにやら魔王様と宰相閣下の間で意見がまとまった模様。
 魔王様がウリちゃんと同時にこちらを向かれた。
「実験してみたいことがあるが、よろしいかな? ココナさん」
 へっ、また私っ?
「エイジ、ジラソレを連れて来てくれ。出来れば二体」
「は、はあ。今すぐ」
 魔王様に言われて、エイジ君が部屋を飛びだして行った。
 実験? 何だろう、ジラソレを使って何を実験するんだろう? わーなんかよい方向に頭が回らないんだけど。思わずペンダントに手をやった。メルヒノア様、なんだか怖いですよぉ。
『大丈夫よ』
 そんな返事があった気がした。

 待つこと数分。相変わらず乱暴にドアが開くと、なんだかちょっと嫌そうなジラソレ一号と二号がエイジ君に隠れるように一緒にやってきた。
 そこで魔王様が次に声を掛けたのは……。
「サリ……さっちゃん、あなたにもお願いする」
「わ、私でございますか?」
 何故か魔王の間の中央に引き出された私、さっちゃん、ジラソレ達。立会いはウリちゃんです。魔王様達は少し離れた所で見ておいでです。
「わはははは、おい、先生。なんか怖ええよ」
「私だって怖いわよ」
 何の実験をするつもりなんだろう?
「ココナさん、ジラソレ二号にキスしてやってください」
「はあ?」
 何で~!?
「一号はそのまま立ってなさい。大丈夫、種は拾ってあげます」
「……わは、は……」
 ううっ、なんかやりたい事がわかってきたよ! でもさー、さっき失敗してもいいものとかウリちゃん言ったよね? 魔王様、ジラソレ可哀相だと思いませんか? とりあえず二号のオデコ? にちゅっ。
「わはははは、先生のちゅう、照れるな」
「暢気な事言ってんじゃないわよ。失敗したら石だよ?」
「わは……えええ?」
 ようはアレだな。以前天界の腕輪の力を跳ね返した時の再現をしろというわけだな。
「流石に石化は防げるかどうかわからないですから、まずはサリエノーアさん、神力を注ぐ感じで一号の手を握ってみてください」
 ああ、良かった。いきなりアイマスクを取るんじゃなくて。
「あの、本当にいいんでしょうか?」
「わははは、俺達は死なないから、思う存分」
「何処が手ですか?」
「葉ですね」
 言われた通り、さっちゃんがジラソレの葉を掴んだ。少し辺りが明るくなったような気がした。
 思ったとおり、一号はみるみる黒ずんで、くてっと倒れてしまった。
「きゃあああ!」
 さっちゃんが悲鳴をあげて飛び退いた。まあ、驚くわよね。
「大丈夫です。種は残ってますね」
 ウリちゃんが残骸の中から種を拾い上げた。ああ、良かった。
「次、二号。サリエノーアさん、目隠しをとって、邪視で見てやってください。大丈夫ですから」
 ええ? やっちゃうか? やっちゃうのかウリちゃん。失敗したら種も取り出せないよ?
「ココナさん、ちょっと避難しましょうか」
「う、うん」
 というわけで、離れてみました。
「ココナさん、一応ジラソレの無事を願ってやってください」
「一応も何も思いきり願ってるわよ」
 どうか無事でありますように。
 さっちゃんがアイマスクを外した。そして横からだけど美しい顔の目が開くのが見え、私は怖くて目を閉じた
「もういいですよ」
 ウリちゃんの事務的な声が聞こえて、目を開けるとそこにはぴんしゃんしているジラソレがいた。
「わはははは! なんか先生に守られた感じがしたぞ、おい」
 実験は成功したようだ。
「やはり出ましたね、シールドが。ペンダントだったので体までは守れませんでしたが、これがメルヒノア様の魂を守ったのです。ココナさんが上手くこれをつかえれば、魔界の者を全く傷付ける事無く、いつでも天界のご両親に来ていただけます」
 え~! なんかそれって、私に……。
「というわけでいっその事、サリエノーアさんのお母様をお遊戯会にご招待いたしましょう。これでお遊戯会の中止も無く、また上手く説得できるかもしれない。めでたしめでたしではないですか」

 ……そんな! 魔界の人々の命を私一人に託されても!
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