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続・魔界王立幼稚園ひまわり組
25:上手く行くよね
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無事……とは言い難いがお遊戯会も終わり、子供達は保護者の方々と共にお家に帰ったし、マファル国王と園児のみんなも魔王様の転移陣で帰っていった。明日・明後日は休園日なので会場の片付けもぼちぼちやると言う事で、お疲れの先生方も今日は早々に切り上げてもらった。
本当は打ち上げパーティをやる予定だったのだが、この後何が起こるかわからないので、極力皆を遠ざけたかったのもある。
本当ならリノちゃんもどこかに避難させたいくらいなのだが、ペルちゃんにはいてもらわないと困るし、二人で仲良く遊んでくれているので今はサロンで執事のギリムさんが見てくれている。
「本当にお招きいただいて嬉しかったですわ。このような素晴らしい集いは生まれて初めてです。子供達の可愛らしい事と言ったら!」
天界からの脅威は、迎賓の間でご機嫌な笑顔を見せておいでだ。まだ興奮冷めやらぬという風情で、ぴかぴか光っておいでです。
「喜んでいただけて良かった」
魔王様が眩しそうに目を細めておいでだ。うん、サングラスが欲しいね。魔王様に黒いサングラスは似合いそうだなどと、いらんことを思ってみる。
で、だ。この後本題の話し合いがあるはずなのだが、何故か私もおります。かなり魔力を消耗しているので、本当は寝込みたいくらいなんですが、一応魔王様の家族扱いですので同席を求められました……魔王様をお守りする盾の役割もあるしね。
おもてなしのパーティ風に私は黒のドレスに、ウリちゃんもユーリちゃんも長い上着の正装。さっちゃんも侍女服でなくドレスでとっても綺麗。まぁ、相変わらずのアイマスクですけども……。
とりどりの料理が並べられておりますが、ザラキエルノ様はお菓子の一つすら召し上がりません。そういえばお遊戯会の時に用意したお茶も召し上がらなかった。
「折角ご用意いただきましたのにすみせん。異界の物を口にすると中から少しづつ弱ってしまいます。天界での裁きの力を行使出来なくなりますので」
「美味しいのに。野菜は幼稚園の畑でペルも皆と一緒に育ててますのよ」
さっちゃんが言うと、名残惜しそうにお皿の方に顔を向けられたが仕方ないよね。成程、もうこちらで普通に過ごしているさっちゃんは堕天していなくてもかなりこちらに染まってしまっているということなのか。
「思った以上に魔界は良いところですのね。娘が来たがったのも少しわかる気がします」
ザラキエルノ様がぽつりと溢された。
「本当は娘を強制的にでも連れて帰ろうと思っていました。孫も一緒に。しかし今日の歌や劇を見て、考えが変りました。お友達とあんなに仲良く楽しそうにしている子を、どうしてここと引き離せましょう」
「じゃあ……!」
思わず心の中でガッツポーズした。魔王様も安心のお顔だ。ウリちゃんとユーリちゃんはハイタッチしている。
「ただし」
ザラキエルノ様の言葉には続きがあった。おもわずドキッと固まる一同。
「サリエノーアは一度天界に戻り、父や兄姉に謝りなさい」
「本当に謝らなければとは思うけど……でも……」
まあ、お母様のご意見も正しいとは思う。多分さっちゃんは二度ともどれなくなるかもと心配なのだろう。そうなったらペルちゃんと別れ別れになってしまうかもしれないよね。
ザラキエルノ様もその辺はちゃんと考えておいでのようだった。
「何もペルちゃんと引き離そうというのでは無いわ。そのような可哀相な事をあんなに可愛い孫にするはずがありません。私が天界の泉の前で裁きを下せば、正真正銘の堕天使になれるでしょう。本来私の職務です。そうすれば完全に魔界の住人となれる」
おおお! なんかそれすごい。そういう手があったのか。魔王様も命懸けで何やらしなくても良いのかも。だが、これにも続きがあった。
「心配を掛けたからだけでは無いのですよ。一族から堕ちた者を出せば、以後下級神である父にも将来を約束された兄や姉にも周りの目は厳しく、迷惑を掛ける事になる。その事を心から詫びろと言うのです」
「……」
一同しーん。そうか……変な話、犯罪者家族と同じになっちゃうって事か。それは謝って済むような事ではないよねぇ。
「その事ですが……」
魔王様で無くウリちゃんが発言を求めた。地味に微笑んでいるが黒い方の笑いに見えるのは気のせいだろうか。
「わたくしも遠い先祖が神に背き堕ちて来たゆえ、他人事ではございませんが、例えばもし裁きを受けてではなく、魔側に堕とされたのであれば、残された家族は被害者として立場は悪くはならないのでは?」
言い回しが難しくて一瞬理解しかねた。それはザラキエルノ様もさっちゃんもそうだったみたいだ。しばらく考えてその意味がわかった時、思わずああやっぱりウリちゃんは黒いわーと、我が夫ながら感心した。
「ええと、それはつまり……」
「こちらでサリエノーアさんに堕ちていただければ、後はご家族の了解だけで話は丸く収まると思いまして」
つまりアレだ。当初の天協さんの計画に戻そうというだけの話である。魔王様が頑張れば~というやつである。
「ま、まあ。それはそうなのですけども。私も娘の事に関しては既に子供まで出来る様な事をいたしたという地点で納得しておりますし、主人も説得すれば。しかし、それでも駄目だったのに……ねぇ」
何故か頬を少し染められたようなザラキエルノ様は、意味を理解されているようだ。当のさっちゃんはきょとーんだが。
今です、魔王様。名乗り出ましょう!
が、魔王様は横にいるユーリちゃんに聞かれたくないと見える。まあ気持ちはわからなくも無いけどね。
「ユ、ユーリ。その……ちょっと外してくれると有難いが」
「何故ですか。僕にも聞く権利はあると思いますよ」
「魔王様、先の事を考えたら王子にも立ち会っていただくべきです」
差し出がましく口を挟ませていただきました。ユーリちゃんと目があって思わず笑ってしまいました。
昨夜の事だった。
長い学校の休暇が終わり、お遊戯会が終わったらそろそろ寮に帰らなければいけないユーリちゃんと二人だけで話す機会があった。貴族の子弟がほとんどの学校も寮もそう不便はないものの、それでもお城育ちの王子様には質素な生活だ。あれもこれも持たせようと荷造りを手伝っていたのだ。
「こっちは飛豚毛の新しい歯ブラシ。虫歯にならないようにちゃんと朝晩歯を磨いてね。お腹を冷やすといけないから腹巻もいるかなぁ」
本や着替えを詰め込んだ鞄は既にパンパン。
「魔王様とウリちゃんが一人で眠れないと大変だからって、新しいくまさんを用意してたけど、流石にぬいぐるみは入らないねぇ」
「もうみんな……僕はちっちゃい子じゃないんだから」
苦笑いの王子様。魔王様、私、ウリちゃんにとってはいつまで経ってもちっちゃい子なのですよ。永遠にね。
「また寂しくなっちゃうね。子供達もすごく懐いてたのに」
「僕も寂しいよ。子供達は本当に可愛いもの。このまま幼稚園の先生でいたいくらい。だけどまずはいっぱい勉強して強くならないとね。また次の休みにも帰って来るから。夏祭りにも出られたし、お遊戯会の準備から見られて明日本番が見られるだけで嬉しかったよ」
荷造りは終わったが、もう一つ確認しておかなければいけない事があった。実はこれが本題だった。いつ切り出そうかと迷ってついにここまで来たが、今日しかその機会が無いと思うのだ。
魔王様の実の息子であるユーリちゃんには避けては通れない事。魔王様本人から話すのは大変だろうし、ウリちゃんからでも気が引ける。というわけで天界の力の防御共々、またしても私に託されたのだ。なんかこういう役回りは全部私に投げてませんか? まあこれに関しては自分も気になるので買って出たのだが……。
息を吸い込んで背筋を伸ばして、わざと固い口調で言った。
「王子は魔王様がもう一度ご結婚なさるとしたら、賛成されますか? 魔王様のお相手と言う事は王子の継母上になられるという事ですが」
薄々はいつかこの時が来るとユーリちゃんもわかっていたのだろう。そう驚いた様子も無く、軽く頷いた。でもその目は少し悲しそうだった。
「サリエノーアさんの事でしょう?」
「ええ」
「丸わかりだもの、父上。下手したら魔界の危機だし、メル叔母様の事もあるのに暢気だなと思わなくも無いけど、本気だよね、あれは……」
ふう、と溜息をついたユーリちゃんは酷く大人っぽく見えた。
「色々問題があるけどサリエノーアさんは素敵な女性だと思う。ペルちゃんもあんなにいい子だもの、本当の弟になってくれたら嬉しい。それに、あの歳で片親しかいないという寂しさは僕には他の誰よりわかるから。父上なら余所の子だって区別なく愛せる一番いい親になれると思う」
「ユーリちゃん……」
そうだよね。お母さんがいなかったユーリちゃんには、お父さんがいないペルちゃんの気持ちが一番わかるだろうね。しかも愛する人を自らの力で亡くしてしまったという苦悩する親の立場も同じなのだ。
「……でも僕は……正直面白くは無いよ。僕の中ではココナさんが唯一ずっとお母さんであり姉さんだ。父上とは結婚しなかったけど、それでも。今更新しいお母さんなんていらない。だけど……父上にも好きな人と幸せになって欲しいと心から思うから反対はしない」
そう言い切ったユーリちゃんが愛おしくて思わず抱きしめた。腕の中にすっぽり納まるくらいだった小さな小さな王子様は、もう私よりも大きくなっちゃったけど、それでも何時まで経っても大事な大事な可愛い私のユーリちゃん。実の娘のリィンノエラよりも長い事その成長と共に生きてきたのだから。
「私もユーリちゃんが大事。本当の子と同じ。これからもずっとあなたの家族でありたい。ずっと一生」
「嬉しい……」
ぎゅっと抱きしめてくれる腕は、まだ細いけど長くて大人と変わりない。少し震えてる様にも思えるのは涙を堪えてるんだろうか。心中は複雑だろう。なのに強いね、大人になったね。
「明日、上手く行くといいね。お遊戯会も、魔王様も」
「大丈夫。何もかも上手くいくよ、きっと」
何もかも上手く行く……ユーリちゃんはそう言ってくれたね。
お遊戯会は上手く行ったよ。後は魔王様だよね。
本当は打ち上げパーティをやる予定だったのだが、この後何が起こるかわからないので、極力皆を遠ざけたかったのもある。
本当ならリノちゃんもどこかに避難させたいくらいなのだが、ペルちゃんにはいてもらわないと困るし、二人で仲良く遊んでくれているので今はサロンで執事のギリムさんが見てくれている。
「本当にお招きいただいて嬉しかったですわ。このような素晴らしい集いは生まれて初めてです。子供達の可愛らしい事と言ったら!」
天界からの脅威は、迎賓の間でご機嫌な笑顔を見せておいでだ。まだ興奮冷めやらぬという風情で、ぴかぴか光っておいでです。
「喜んでいただけて良かった」
魔王様が眩しそうに目を細めておいでだ。うん、サングラスが欲しいね。魔王様に黒いサングラスは似合いそうだなどと、いらんことを思ってみる。
で、だ。この後本題の話し合いがあるはずなのだが、何故か私もおります。かなり魔力を消耗しているので、本当は寝込みたいくらいなんですが、一応魔王様の家族扱いですので同席を求められました……魔王様をお守りする盾の役割もあるしね。
おもてなしのパーティ風に私は黒のドレスに、ウリちゃんもユーリちゃんも長い上着の正装。さっちゃんも侍女服でなくドレスでとっても綺麗。まぁ、相変わらずのアイマスクですけども……。
とりどりの料理が並べられておりますが、ザラキエルノ様はお菓子の一つすら召し上がりません。そういえばお遊戯会の時に用意したお茶も召し上がらなかった。
「折角ご用意いただきましたのにすみせん。異界の物を口にすると中から少しづつ弱ってしまいます。天界での裁きの力を行使出来なくなりますので」
「美味しいのに。野菜は幼稚園の畑でペルも皆と一緒に育ててますのよ」
さっちゃんが言うと、名残惜しそうにお皿の方に顔を向けられたが仕方ないよね。成程、もうこちらで普通に過ごしているさっちゃんは堕天していなくてもかなりこちらに染まってしまっているということなのか。
「思った以上に魔界は良いところですのね。娘が来たがったのも少しわかる気がします」
ザラキエルノ様がぽつりと溢された。
「本当は娘を強制的にでも連れて帰ろうと思っていました。孫も一緒に。しかし今日の歌や劇を見て、考えが変りました。お友達とあんなに仲良く楽しそうにしている子を、どうしてここと引き離せましょう」
「じゃあ……!」
思わず心の中でガッツポーズした。魔王様も安心のお顔だ。ウリちゃんとユーリちゃんはハイタッチしている。
「ただし」
ザラキエルノ様の言葉には続きがあった。おもわずドキッと固まる一同。
「サリエノーアは一度天界に戻り、父や兄姉に謝りなさい」
「本当に謝らなければとは思うけど……でも……」
まあ、お母様のご意見も正しいとは思う。多分さっちゃんは二度ともどれなくなるかもと心配なのだろう。そうなったらペルちゃんと別れ別れになってしまうかもしれないよね。
ザラキエルノ様もその辺はちゃんと考えておいでのようだった。
「何もペルちゃんと引き離そうというのでは無いわ。そのような可哀相な事をあんなに可愛い孫にするはずがありません。私が天界の泉の前で裁きを下せば、正真正銘の堕天使になれるでしょう。本来私の職務です。そうすれば完全に魔界の住人となれる」
おおお! なんかそれすごい。そういう手があったのか。魔王様も命懸けで何やらしなくても良いのかも。だが、これにも続きがあった。
「心配を掛けたからだけでは無いのですよ。一族から堕ちた者を出せば、以後下級神である父にも将来を約束された兄や姉にも周りの目は厳しく、迷惑を掛ける事になる。その事を心から詫びろと言うのです」
「……」
一同しーん。そうか……変な話、犯罪者家族と同じになっちゃうって事か。それは謝って済むような事ではないよねぇ。
「その事ですが……」
魔王様で無くウリちゃんが発言を求めた。地味に微笑んでいるが黒い方の笑いに見えるのは気のせいだろうか。
「わたくしも遠い先祖が神に背き堕ちて来たゆえ、他人事ではございませんが、例えばもし裁きを受けてではなく、魔側に堕とされたのであれば、残された家族は被害者として立場は悪くはならないのでは?」
言い回しが難しくて一瞬理解しかねた。それはザラキエルノ様もさっちゃんもそうだったみたいだ。しばらく考えてその意味がわかった時、思わずああやっぱりウリちゃんは黒いわーと、我が夫ながら感心した。
「ええと、それはつまり……」
「こちらでサリエノーアさんに堕ちていただければ、後はご家族の了解だけで話は丸く収まると思いまして」
つまりアレだ。当初の天協さんの計画に戻そうというだけの話である。魔王様が頑張れば~というやつである。
「ま、まあ。それはそうなのですけども。私も娘の事に関しては既に子供まで出来る様な事をいたしたという地点で納得しておりますし、主人も説得すれば。しかし、それでも駄目だったのに……ねぇ」
何故か頬を少し染められたようなザラキエルノ様は、意味を理解されているようだ。当のさっちゃんはきょとーんだが。
今です、魔王様。名乗り出ましょう!
が、魔王様は横にいるユーリちゃんに聞かれたくないと見える。まあ気持ちはわからなくも無いけどね。
「ユ、ユーリ。その……ちょっと外してくれると有難いが」
「何故ですか。僕にも聞く権利はあると思いますよ」
「魔王様、先の事を考えたら王子にも立ち会っていただくべきです」
差し出がましく口を挟ませていただきました。ユーリちゃんと目があって思わず笑ってしまいました。
昨夜の事だった。
長い学校の休暇が終わり、お遊戯会が終わったらそろそろ寮に帰らなければいけないユーリちゃんと二人だけで話す機会があった。貴族の子弟がほとんどの学校も寮もそう不便はないものの、それでもお城育ちの王子様には質素な生活だ。あれもこれも持たせようと荷造りを手伝っていたのだ。
「こっちは飛豚毛の新しい歯ブラシ。虫歯にならないようにちゃんと朝晩歯を磨いてね。お腹を冷やすといけないから腹巻もいるかなぁ」
本や着替えを詰め込んだ鞄は既にパンパン。
「魔王様とウリちゃんが一人で眠れないと大変だからって、新しいくまさんを用意してたけど、流石にぬいぐるみは入らないねぇ」
「もうみんな……僕はちっちゃい子じゃないんだから」
苦笑いの王子様。魔王様、私、ウリちゃんにとってはいつまで経ってもちっちゃい子なのですよ。永遠にね。
「また寂しくなっちゃうね。子供達もすごく懐いてたのに」
「僕も寂しいよ。子供達は本当に可愛いもの。このまま幼稚園の先生でいたいくらい。だけどまずはいっぱい勉強して強くならないとね。また次の休みにも帰って来るから。夏祭りにも出られたし、お遊戯会の準備から見られて明日本番が見られるだけで嬉しかったよ」
荷造りは終わったが、もう一つ確認しておかなければいけない事があった。実はこれが本題だった。いつ切り出そうかと迷ってついにここまで来たが、今日しかその機会が無いと思うのだ。
魔王様の実の息子であるユーリちゃんには避けては通れない事。魔王様本人から話すのは大変だろうし、ウリちゃんからでも気が引ける。というわけで天界の力の防御共々、またしても私に託されたのだ。なんかこういう役回りは全部私に投げてませんか? まあこれに関しては自分も気になるので買って出たのだが……。
息を吸い込んで背筋を伸ばして、わざと固い口調で言った。
「王子は魔王様がもう一度ご結婚なさるとしたら、賛成されますか? 魔王様のお相手と言う事は王子の継母上になられるという事ですが」
薄々はいつかこの時が来るとユーリちゃんもわかっていたのだろう。そう驚いた様子も無く、軽く頷いた。でもその目は少し悲しそうだった。
「サリエノーアさんの事でしょう?」
「ええ」
「丸わかりだもの、父上。下手したら魔界の危機だし、メル叔母様の事もあるのに暢気だなと思わなくも無いけど、本気だよね、あれは……」
ふう、と溜息をついたユーリちゃんは酷く大人っぽく見えた。
「色々問題があるけどサリエノーアさんは素敵な女性だと思う。ペルちゃんもあんなにいい子だもの、本当の弟になってくれたら嬉しい。それに、あの歳で片親しかいないという寂しさは僕には他の誰よりわかるから。父上なら余所の子だって区別なく愛せる一番いい親になれると思う」
「ユーリちゃん……」
そうだよね。お母さんがいなかったユーリちゃんには、お父さんがいないペルちゃんの気持ちが一番わかるだろうね。しかも愛する人を自らの力で亡くしてしまったという苦悩する親の立場も同じなのだ。
「……でも僕は……正直面白くは無いよ。僕の中ではココナさんが唯一ずっとお母さんであり姉さんだ。父上とは結婚しなかったけど、それでも。今更新しいお母さんなんていらない。だけど……父上にも好きな人と幸せになって欲しいと心から思うから反対はしない」
そう言い切ったユーリちゃんが愛おしくて思わず抱きしめた。腕の中にすっぽり納まるくらいだった小さな小さな王子様は、もう私よりも大きくなっちゃったけど、それでも何時まで経っても大事な大事な可愛い私のユーリちゃん。実の娘のリィンノエラよりも長い事その成長と共に生きてきたのだから。
「私もユーリちゃんが大事。本当の子と同じ。これからもずっとあなたの家族でありたい。ずっと一生」
「嬉しい……」
ぎゅっと抱きしめてくれる腕は、まだ細いけど長くて大人と変わりない。少し震えてる様にも思えるのは涙を堪えてるんだろうか。心中は複雑だろう。なのに強いね、大人になったね。
「明日、上手く行くといいね。お遊戯会も、魔王様も」
「大丈夫。何もかも上手くいくよ、きっと」
何もかも上手く行く……ユーリちゃんはそう言ってくれたね。
お遊戯会は上手く行ったよ。後は魔王様だよね。
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