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第1章「転生しました!」
第03話「スライムって進化するの?」
しおりを挟むさらに数日が過ぎ、彼はさらに大きくなっていた。
(スライム8匹分‥‥? キングスラ‥‥いや、やめておこう)
前世の記憶はまだしっかりとしていた。
それは知識と経験だけで、家族の名前とか友人の名前とかはあやふやなままだったけれど、スライムとして生きていくためには特に支障は無さそうだ。
スライムで知識チートで成り上がり、というのも無理な話だが。
基本、待つ狩りのために考える時間は多分にあった。
まずは記憶について。
死後に会った人だか神だかの謎の人物は、前世の記憶は失われると言っていた。それはおそらく失われるのではなく、思い出せなくなるだけなのだろう。
人間の場合だが、生まれる赤子の脳細胞は「つながっていない」らしい。語弊はあるけれど、脳が赤子の脳であり大人とは違っているらしく、それが学習や経験を重ねることにより、分断されたり接続されたりを繰り返し、記憶をしていくのだとどこかの科学雑誌か何かで見聞した。
おそらく人間や他の知的生物に転生したのなら、そういった状態で以前の記憶を失ってしまうのだろうと彼は思う。そして自分は特別に変だったのだろうと。
(スライムって‥‥脳とか無いしなぁ‥‥)
つまり、記憶がリセットされないからこそ、前世の記憶が残ったのだろうと考えた。
どこに記憶されているのか、単細胞生物では謎だけれど。
どこかの書物で読んだ覚えがある。記憶は脳だけで行うものでは無いという考えがあるらしいという事。それは肉体や魂にも刻まれる、という推測だ。
とあるピアノに秀でた少女がお亡くなりになり、その内臓移植を受けた別の少女が習ってもいなかったピアノの才能をみせた、という話もある。
さらに前世の記憶があるという事は、脳だけじゃなく魂に刻まれていたからこそ、転生しても思い出せる訳で。もっとも全てをハッキリと思い出せる訳でもないけれど。
くどいようだがスライムで知識チートで成り上がり、というのも本当の本当に無理な話だが。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(知識チート万歳!!)
彼は大喜びしていた。
スライム8匹分(概算)であっても、どうやらゴブリン1匹程度の容積しかなく、がんばってがんばってがんばって、やっとゴブリン1匹を仕留められるくらいだった。
しかも、それだけがんばってもゴブリンは不味い。
たまにやって来る大トカゲは美味しいかも知れないが、さすがに彼以上の体格に立ち向かうには無謀過ぎた。オークはやはり豚の味なのだろうか?
そこで再び「ピコーン!」である。
今度はレベルアップではなく、名案の方だが。
(罠を仕掛けるのはアリじゃね?)
専門知識は無かったが、試行錯誤を繰り返してやっとこさ罠でオークを仕留めることができた。しかしオークよりも大きな大トカゲを狙うには、まだ威力不足みたいだ。
さらに残念なことに、オークも美味しいという程でもなく、「まぁ肉の味かな」程度。
そうガッカリしていたら。
(何コレ! 美味いじゃん! オーク激美味じゃん!)
3匹目のオークを消化吸収した時、衝撃が走った。
それと同時に、頭に響く「ピコーン!」の音。
(もしかして、また進化した? そんな物語みたいなこと、あるの?)
今度は体積は増えていないようだった。
しかし味覚が上昇したようで、ゴブリンはやはり不味かったが、トカゲはそれなりに美味く、オークはさらに美味く感じられるのだ。
さらに手先が器用になっていた。手先というか触手というか。
これまでかなり苦労していた罠の設置が、かなり楽になった感じだ。
それならば、と大トカゲ用の罠を設置してみた。
今までは腰のある樹木をバネにして、梢からつる植物をより合わせた紐を引っ張って引っ張って引っ張って、やっとこさオークの足を止める程度の罠だったのだが、バネ樹木を3重にし、つる植物をさらに編み込んで強度を稼いだのである。
その結果。
(大トカゲ、思ったほど美味くないな。生の鶏肉みたいな感じ?)
もちろん生肉なんて食べた経験はない。
なのでオークも焼けば豚肉っぽいのかも知れないと考えた。
(今度、火を熾して焼いてみるか?)
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