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第1章「転生しました!」
第06話「スライムvs冒険者」
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なりゆきでヒト族を助けたが、ここで敵対の意思をみせる訳にもいかない。
やはり彼は人間寄りの思考をしているのだ。
まずは馬車を何とかしないと。
「**! スライム***!」
(ああ、この世界でもスライムはスライムって発音なんだな)
聞き取れた単語からそんなどうでも良いことを考えつつ、彼は護衛の人間を遠巻きに避ける様に馬車に近付いた。
慌てたように護衛が止めようとするが、彼は「両手を出して」掲げて見せる。「待て」と「敵意は無い」という手の平を見せるジェスチャーだ。
スライムの身体から手が出ているのだ、初見ではさぞシュールな光景だろう。
「??」
護衛のヒト族たちが戸惑っている間に、彼は横倒しの馬車の下にもぐり込み、起こそうと持ち上げた。だが動きはするものの、重過ぎて起こすことは叶わなかった。
ならば、と馬車に触手を絡め、反対側の丈夫そうな木にも触手を伸ばす。チェーン式ジャッキの要領だ。これで何とか起こすことが出来た。
護衛だけでなく、馬車の中からも「おお~」と感嘆の声が上がる。
次に倒れた馬を見れば容態が酷かった。1頭は首を弓で射られており、もう1頭は足が折れている。これでは馬車を牽くのは無理だと思えた。
(あの沼の泥は傷を癒す効果があるようだったが‥‥魔物でなくても効くのか?)
彼は泥を体内に大量に溜め込んでいる。
普通の動物に効くかどうかはわからなかったが、患部に塗ってみると矢傷も骨折もたちどころに治ったようだ。馬は喜びあふれるように立ち上がると、その大きなスライムに興奮気味に鼻を寄せ、感謝を表すように舐めてくる。
馬車の大きさからして4頭立てでもおかしくないと彼は思うが、2頭で牽けるということは、もしかするとこちらの馬は前の世界より強いか、ひょっとしたら馬型の魔物なのかも知れない。
(猜疑心が無い分、動物の方が受け入れ易いんだな)
(馬だってスライムだと、魔物だとわかっているだろうに)
「**! スライム! *****?」
長居は面倒かも、と彼が思っていたら、案の定。護衛の1人が剣を彼に突き付けて何事か叫んでいる。「敵か味方か?」とでも訊ねているのかも。
ここは言葉が通じない以上、「逃げるが勝ち」と彼は触手で木を渡って姿を消した。
さすがにヒト族の追えるスピードでは無い。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい! スライム! まだ治癒薬はあるのか?」
護衛の1人、プレートメイルを着込んだ盾職らしき男が、スライムに短剣を向けて問い質した。すると馬と戯れていたようなスライムはその姿を消す。
それはどっちに向かったのかさえわからない程のスピードで、それだけでも並のスライムではないことを窺わせた。
もっともオーク数体を瞬殺するなど、普通のスライムでは元から考えられない強さではあるのだが。
「あぁ、行っちゃった‥‥ハンス、そんな脅すような物言いしなくても‥‥」
「た、確かにそうだが、奴はスライムだぞ?」
それでも助けられたという意識はあるようで、ハンスと呼ばれた男は言葉を取り繕う。
ため息でもってハンスに話し掛けたナイフに革鎧の女性は、残念がっていた。
「馬を助けた薬がまだあれば、依頼人のケガも何とかなったかも知れないのにね」
「む‥‥‥‥むぅ‥‥」
「御者は軽傷で済みました。馬が大丈夫ならすぐに発てるそうです」
グレーのローブに青い魔石の魔法の杖を持つ魔法使いらしき男が、御者と乗客の応急処置を済ませ、2人に訊ねる。
御者は、ということは乗客の何人かは重傷なのだろうが。
「明らかに我々を助太刀に来ましたよね。何てスライムでしょう?」
「普通より巨大だったし、色合いも緑じゃなかったわね」
「もし、次に出会えたら、素直にお礼するよ」
「次があれば良いけど?」
そう言いつつ、護衛たちは後部扉から馬車に乗り込み、街道を最寄りの街に引き返した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(今日は厄日か?)
逃げ出した先、今度は街道ではなく森の少し深い場所で、彼はまたもやオークとヒト族との争いに出くわした。
まだヒト族の言葉を習得していない彼にとって、対話の出来ない間はヒト族と関わるのに益は無いと考えていたのだ。
おそらくこれまでの経験から、ヒト族をもう何人か消化すればヒト族の情報や言葉が習得できると思われた。しかし彼にとって人を食うのはハードルがいささか高い。
盗賊や強盗など、明らかに悪そうな連中を狩って食うのは、少し罪悪感が減るけれど、何の罪も無い人を殺めるのはやはり忌避感があるのだ。なのでここは静観を決め込み、もしヒト族が負けるようならオークを倒してヒト族を食うとしよう。
そう決めたのだが。
(ダメだ、やはり助けよう)
彼の内側で何かが叫び、オークに対して劣勢なヒト族3人に加勢することにした。加勢どころか、彼にとってオーク4匹は瞬殺レベルだけど。
ヒト族3人は、盾役、魔法使い、弓師という構成。
攻撃役が足りない印象で、剣と槍を持つオークたちに明らかに押されていた。しかもヒト族は魔法使いと弓師の2人が女ということで、物語にあったような「繁殖のために女を捕らえる習性」があるのを彼は経験を以って知っている。なので男の盾役に攻撃を集中しようとしているのにもうなずける。
それはさせじと、彼はスライムのまま飛び込んだ。
触手一閃、オークは後方から両足の腱を切られ、仰向けに倒れる。
そしてうなじに短刀を突き刺され、絶命した。
先程と違い、血を撒き散らさない倒し方をしたのは、3人のヒト族に対する心配りだった。なぜか「そうするべき」という意識があったのだ。
やはり彼は人間寄りの思考をしているのだ。
まずは馬車を何とかしないと。
「**! スライム***!」
(ああ、この世界でもスライムはスライムって発音なんだな)
聞き取れた単語からそんなどうでも良いことを考えつつ、彼は護衛の人間を遠巻きに避ける様に馬車に近付いた。
慌てたように護衛が止めようとするが、彼は「両手を出して」掲げて見せる。「待て」と「敵意は無い」という手の平を見せるジェスチャーだ。
スライムの身体から手が出ているのだ、初見ではさぞシュールな光景だろう。
「??」
護衛のヒト族たちが戸惑っている間に、彼は横倒しの馬車の下にもぐり込み、起こそうと持ち上げた。だが動きはするものの、重過ぎて起こすことは叶わなかった。
ならば、と馬車に触手を絡め、反対側の丈夫そうな木にも触手を伸ばす。チェーン式ジャッキの要領だ。これで何とか起こすことが出来た。
護衛だけでなく、馬車の中からも「おお~」と感嘆の声が上がる。
次に倒れた馬を見れば容態が酷かった。1頭は首を弓で射られており、もう1頭は足が折れている。これでは馬車を牽くのは無理だと思えた。
(あの沼の泥は傷を癒す効果があるようだったが‥‥魔物でなくても効くのか?)
彼は泥を体内に大量に溜め込んでいる。
普通の動物に効くかどうかはわからなかったが、患部に塗ってみると矢傷も骨折もたちどころに治ったようだ。馬は喜びあふれるように立ち上がると、その大きなスライムに興奮気味に鼻を寄せ、感謝を表すように舐めてくる。
馬車の大きさからして4頭立てでもおかしくないと彼は思うが、2頭で牽けるということは、もしかするとこちらの馬は前の世界より強いか、ひょっとしたら馬型の魔物なのかも知れない。
(猜疑心が無い分、動物の方が受け入れ易いんだな)
(馬だってスライムだと、魔物だとわかっているだろうに)
「**! スライム! *****?」
長居は面倒かも、と彼が思っていたら、案の定。護衛の1人が剣を彼に突き付けて何事か叫んでいる。「敵か味方か?」とでも訊ねているのかも。
ここは言葉が通じない以上、「逃げるが勝ち」と彼は触手で木を渡って姿を消した。
さすがにヒト族の追えるスピードでは無い。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい! スライム! まだ治癒薬はあるのか?」
護衛の1人、プレートメイルを着込んだ盾職らしき男が、スライムに短剣を向けて問い質した。すると馬と戯れていたようなスライムはその姿を消す。
それはどっちに向かったのかさえわからない程のスピードで、それだけでも並のスライムではないことを窺わせた。
もっともオーク数体を瞬殺するなど、普通のスライムでは元から考えられない強さではあるのだが。
「あぁ、行っちゃった‥‥ハンス、そんな脅すような物言いしなくても‥‥」
「た、確かにそうだが、奴はスライムだぞ?」
それでも助けられたという意識はあるようで、ハンスと呼ばれた男は言葉を取り繕う。
ため息でもってハンスに話し掛けたナイフに革鎧の女性は、残念がっていた。
「馬を助けた薬がまだあれば、依頼人のケガも何とかなったかも知れないのにね」
「む‥‥‥‥むぅ‥‥」
「御者は軽傷で済みました。馬が大丈夫ならすぐに発てるそうです」
グレーのローブに青い魔石の魔法の杖を持つ魔法使いらしき男が、御者と乗客の応急処置を済ませ、2人に訊ねる。
御者は、ということは乗客の何人かは重傷なのだろうが。
「明らかに我々を助太刀に来ましたよね。何てスライムでしょう?」
「普通より巨大だったし、色合いも緑じゃなかったわね」
「もし、次に出会えたら、素直にお礼するよ」
「次があれば良いけど?」
そう言いつつ、護衛たちは後部扉から馬車に乗り込み、街道を最寄りの街に引き返した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(今日は厄日か?)
逃げ出した先、今度は街道ではなく森の少し深い場所で、彼はまたもやオークとヒト族との争いに出くわした。
まだヒト族の言葉を習得していない彼にとって、対話の出来ない間はヒト族と関わるのに益は無いと考えていたのだ。
おそらくこれまでの経験から、ヒト族をもう何人か消化すればヒト族の情報や言葉が習得できると思われた。しかし彼にとって人を食うのはハードルがいささか高い。
盗賊や強盗など、明らかに悪そうな連中を狩って食うのは、少し罪悪感が減るけれど、何の罪も無い人を殺めるのはやはり忌避感があるのだ。なのでここは静観を決め込み、もしヒト族が負けるようならオークを倒してヒト族を食うとしよう。
そう決めたのだが。
(ダメだ、やはり助けよう)
彼の内側で何かが叫び、オークに対して劣勢なヒト族3人に加勢することにした。加勢どころか、彼にとってオーク4匹は瞬殺レベルだけど。
ヒト族3人は、盾役、魔法使い、弓師という構成。
攻撃役が足りない印象で、剣と槍を持つオークたちに明らかに押されていた。しかもヒト族は魔法使いと弓師の2人が女ということで、物語にあったような「繁殖のために女を捕らえる習性」があるのを彼は経験を以って知っている。なので男の盾役に攻撃を集中しようとしているのにもうなずける。
それはさせじと、彼はスライムのまま飛び込んだ。
触手一閃、オークは後方から両足の腱を切られ、仰向けに倒れる。
そしてうなじに短刀を突き刺され、絶命した。
先程と違い、血を撒き散らさない倒し方をしたのは、3人のヒト族に対する心配りだった。なぜか「そうするべき」という意識があったのだ。
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