スライムの、のんびり冒険者生活

南柱骨太

文字の大きさ
7 / 47
第1章「転生しました!」

第07話「スライム町へ行く」

しおりを挟む
「な、何だ? 助かった‥‥のか?」

 ヒト族の男が目の前の事実に、信じられないといった顔でつぶやく。
 それはそうだろう、いきなり何者かが現れオークを瞬殺し、それがスライムだったのだから。
 本来、スライムとはこの森での最底辺の生き物だ。その多くは魔素溜りから自然発生されるとして、死肉や汚物、枯葉などを食らう“森の掃除屋さん”といった生き物なのだ。それがオークを倒すなど、特異個体だとしても考えられないし聞いた事もない。
 その超特異個体が目前に居る。
 助かったどころではない、次は自分たちかと3人は震え上がるのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「***? *****?」

 相変わらずヒト族の言葉は聞き取れない。
 まぁ仕方がないと彼はオークを吸収しておくことにした。
 先程は20体以上と数も多かった上に、恐れさせてはならないと遠慮したのだけれど、今回は遠慮はいらないという意識からだった。

(何だろう、さっきから何者かの意思が介入しているように感じる‥‥)
<ピコーン!>

 そう感じたとたん、何かが起きた。それはパズルのピースがピタッとはまるような衝撃的な感覚。

「‥‥**て、次はあたしたちかも知れない‥‥」
「だよな、やっぱそうだよな?」
「いや、食わねーよ!」
「「「しゃべった!!」」」

 彼は急に理解できるようになったヒト族のあまりの言葉に、思わずツッコミを入れてしまった。
 驚くタイミングもピッタリというのは、やはり仲の良い幼馴染だけはあると彼は感じている。この感覚は「そういうコトか」と彼は納得し、感覚に従って話し始めた。

「お前ら、こんな森の奥は危険だから、もう帰れ。探している仲間はもう死んだ」
「‥‥え?」

 そんな言い方しなくても、と彼本人も思うが、ソレは3人が心配ゆえのことだろう。
 そして“少年”が持っていた剣と盾を出して、3人に見せ付けた。

「それを持っていた少年はゴブリンに殺された。そのゴブリンも僕が全滅させたけどね」
「彼は‥‥オーリィはどうなったんですか?」

 遺品を確認し、涙を浮かべる少女に対し、どう話したもんかと彼が逡巡していたら、感覚が勝手にバラしてしまう。

「遺体は食った! あのまま放置していてもマズいし、誰かの餌になるくらいなら、ね」
「そんな‥‥そんな‥‥本当にオーリィだったんですか?」
「すまないな、こんな少年だった」

 何とか後付けで謝罪はしたものの、3人の衝撃は大きかっただろう。駄目押しになるが、擬態で少年の姿をとる。
 すると少女がとうとう、声を上げて泣き出した。
 それは“感覚”も嫌だったらしく、意味不明な感情を押し付けてくる。おそらく慌てているのだろうと、彼は理解した。なので未練を遂げさせてやることに。

「ルイ、ごめんな。約束、守れなかった‥‥」
「‥‥ッ!!」
「少年は心残りがあったみたいだ。こういう気持ちだけが残っている」

 嗚咽をあげて泣く少女を、もう1人の少女がなだめている。
 どうやら亡くなった少年の気持ちとか心残りが、彼の中に残っていたようだ。だから少年は仲間を助けたかったし、少女に伝えたかったのだろう。
 この世界にはありがちな話だが、冒険者という職業が存在する。国や市町村の行政とは別の独立機関として冒険者ギルドというものがあり、そこで依頼を達成し業績を積めばギルドが制定する冒険者レベルが上がるというものだ。
 レベルは10級から1級まであって、初心者は10級からのスタートとなる。
 この仕事を達成すれば、少年の冒険者レベルが8に上がるはずだったらしく、8になれば大手を振って冒険者と名乗れるらしい。それはまた収入が安定することにもつながり、そうなったら少年は少女に結婚を申し込むつもりだったようだ。
 それがゴブリンの討伐という依頼の途中、運悪くオークに出くわしてしまい、仲間を逃がす囮役を務めたものの失敗し、最後はゴブリンの集団に討ち取られたという事らしかった。
 4人の少年少女は同じ村の出身で、一緒に村を出て冒険者になった仲だ。当然、仲間意識も強かったけれど、それで彼に働きかけてきたのだろう。お陰でヒト族の言葉も、ある程度の情報も得られたようなものだ。

「これ、形見にもらってもいい?」

 少女は少年の剣と盾を抱き締めるように問うてくる。
 もちろん構わないし、もう1つ渡すものがあった。少年のギルドカードだ。
 少年の知識では、登録者が死亡した場合は極力カードを返却することになっている。なので差し出すと、少年が代わりに受け取ってくれた。

「お前、スライムなのに人間っぽいな」
「ん~~~、前世が人間だったからな」
「へっ?」

 ちょっとだけ迷ったが、彼らには打ち明けることにした。
 前世の概念とか色々と説明も必要だったけれど、何とか1度死んで今のスライムに生まれ変わってきたのだと納得してくれたようだ。どうやらこの世界と宗教には「転生」という概念が無いらしい。命とは生まれる時に神から与えられ、死ぬ時に神に返すという考えなんだそうだ。
 彼の中の感覚は、あ~そうだっけ?的な意識で、どうも宗教とかには興味が無かったようで。おそらくやんちゃ坊主とか、脳筋とかの人種だったのではと推測された。

「あと、頼みがあるんだが」
「何だ? 無理難題だと困るぞ?」
「僕を街まで連れて行って欲しい」

 スライムではあるけれど中身は人間な訳で、出来れば人の世で生活したいと彼が少年たちに伝えると、難しい顔をされた。

「その姿じゃ、ちょっとなぁ‥‥」
「あ、彼の姿じゃマズいか。‥‥これならどうだ?」

 黒髪、黒目の17歳くらいの姿に変えてみた。元の日本人の彼の、高校生の頃の姿だ。
 多分、出来ると思ってやってみると、ちゃんと出来た。鏡が無いのでハッキリとはわからないが、イメージ通りのハズだ。

「それなら‥‥まあ‥‥」
「人を襲ったりしないよね?」
「しない、しない!」
「街へ行って何をするの?」
「とりあえず冒険者ギルドに登録かな? あと、まともな料理を食べたい」

 料理に関しては彼の切望でもあった。魔物はもう飽きたのだ。
 何かもじょもじょと相談している3人。そして少年は応える。

「よし! 一緒に街へ帰ろう!」
「ありがとう、助かるよ。お礼にこれを渡しとくね」

 彼は懐と見せかけて体内からゴブリンの右耳を取り出した。
 5つあれば依頼達成のはずだ。
 3人はちょっと渋ったけれど、誰が倒したかなんてバレないだろうと言ったら受け取ってくれた。

 いざ、ヒト族の街へ!!
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

処理中です...