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#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 01-07
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となると、前にも風葉のようにおっかなびっくりこの通路を通った誰かが居るという事か。
少し安堵する風葉。
そうして生まれた心の余裕は、やがて風葉にいくつかの奇妙な点を気付かせた。
船、というには磯のにおいがまったくしない事。
けっこう歩いたはずなのに、窓らしい窓を一つも見かけなかった事。
だが何よりも気になったのが、これまで何人かすれ違った凪守職員達の反応だ。
「こんにちは……いや、こんばんは、かな」
「お、その子がそうなのか」
「わぁかわいい。モフってもいい?」
とまぁ、そんな感じである。誰も彼も忙しいのは共通しているようで、職員達は皆挨拶もそこそこに通路の向こうへと消えていった。まぁ若干一名ほど残念そうな表情を隠さない職員も居たが。
そしてその間際、職員達は二種類の視線をこちらに向けて来た。
一つは好奇心。言うまでも無く、奇妙な銀髪と犬耳をした来訪者、霧宮風葉に向けられたものだ。
もう一つは、畏怖、だろうか。程度の差はあれ、誰も彼もが辰巳を、よそよそしい目で見るのだ。
どこか冷たい、一歩引いたような視線で。
「んん……?」
首をひねる風葉だが、無論理由など分かるはずも無い。それでも疑問を転がそうとした風葉は、ふと真横の窓に目を止めた。
「あ、窓あった」
ようやく見つけた、小さな丸窓。均等に三つ並んでいるその直径は六十センチくらいだろうか。風葉ですら潜れそうにないサイズの窓は、丸い枠いっぱいに星空を浮かべていた。先ほどすれ違った職員が「こんばんは」と言っていたのは、これが理由だったようだ。
だがそれにしても、海面が見えないのはどうしてなのか。
「そんな高いトコだったのか、な――」
何気なく窓をのぞき込んだ風葉は、そこで声を失った。
やはりどこを見ても星空だけで、海はまったく見えない。が、それはどうでも良い。
何かの外部装置らしい巨大な青色のアーチが、天来号の船体をぐるりと覆っているのも見えたが、それもどうでも良い。
窓の向こう、やや右上。
ふと見上げた先で見つけた球体に、風葉の視線は釘付けられた。
最初は月かと思ったが、どうも違う。そもそも月はあんなに青くない。
真っ黒い空の只中で、それでもなお瑞々しい輝きをたたえているその球体の名前を、風葉は良く知っていた。
少し安堵する風葉。
そうして生まれた心の余裕は、やがて風葉にいくつかの奇妙な点を気付かせた。
船、というには磯のにおいがまったくしない事。
けっこう歩いたはずなのに、窓らしい窓を一つも見かけなかった事。
だが何よりも気になったのが、これまで何人かすれ違った凪守職員達の反応だ。
「こんにちは……いや、こんばんは、かな」
「お、その子がそうなのか」
「わぁかわいい。モフってもいい?」
とまぁ、そんな感じである。誰も彼も忙しいのは共通しているようで、職員達は皆挨拶もそこそこに通路の向こうへと消えていった。まぁ若干一名ほど残念そうな表情を隠さない職員も居たが。
そしてその間際、職員達は二種類の視線をこちらに向けて来た。
一つは好奇心。言うまでも無く、奇妙な銀髪と犬耳をした来訪者、霧宮風葉に向けられたものだ。
もう一つは、畏怖、だろうか。程度の差はあれ、誰も彼もが辰巳を、よそよそしい目で見るのだ。
どこか冷たい、一歩引いたような視線で。
「んん……?」
首をひねる風葉だが、無論理由など分かるはずも無い。それでも疑問を転がそうとした風葉は、ふと真横の窓に目を止めた。
「あ、窓あった」
ようやく見つけた、小さな丸窓。均等に三つ並んでいるその直径は六十センチくらいだろうか。風葉ですら潜れそうにないサイズの窓は、丸い枠いっぱいに星空を浮かべていた。先ほどすれ違った職員が「こんばんは」と言っていたのは、これが理由だったようだ。
だがそれにしても、海面が見えないのはどうしてなのか。
「そんな高いトコだったのか、な――」
何気なく窓をのぞき込んだ風葉は、そこで声を失った。
やはりどこを見ても星空だけで、海はまったく見えない。が、それはどうでも良い。
何かの外部装置らしい巨大な青色のアーチが、天来号の船体をぐるりと覆っているのも見えたが、それもどうでも良い。
窓の向こう、やや右上。
ふと見上げた先で見つけた球体に、風葉の視線は釘付けられた。
最初は月かと思ったが、どうも違う。そもそも月はあんなに青くない。
真っ黒い空の只中で、それでもなお瑞々しい輝きをたたえているその球体の名前を、風葉は良く知っていた。
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