神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

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#1 レツオウガ起動

Chapter02 凪守 02-09

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 一言で言い表すなら、それはドームだった。
 薄墨に染まった海の只中に、赤色の半球が浮いていたのだ。
 だが建物では無い。何か、巨大な光の塊――強いて言えば昨日、日乃栄高校の中庭で見た光柱に似ているが、いかんせん規模が違う。
 手前に写っている模型サイズの駆逐艦が本物ならば、優にキロメートル単位の大きさのはずだ。
「これが、その……?」
「そ、キューバ危機で出来ちゃった霊地さ。直径約10キロに及ぶこの霊地は、当時の世界中の不安、恐怖、怒りが収束されてた。まぁー当時の人からすりゃ生きた心地なんてしなかったろうしねー。何せ第三次世界大戦の瀬戸際だった訳だからさー。だから――」
 頬杖を突くのを止め、巌はまっすぐに風葉を見据える。
「――そこから生まれちゃったのさ。擬似的にとはいえ、北欧神話に記された世界の終焉ラグナロクがね。で、その頭文字を取ってRフィールドってワケ」
「ラグ、ナロク」
 聞き覚えだけはうっすらとあるその単語を、オウム返しに風葉は呟く。
「正確にはその一説、炎の巨人が出現しただけだったんだけど、それでもまぁ被害は甚大だったらしいよ。幻燈結界だけはどうにか間に合ったものの、三度に渡る殲滅作戦は全て失敗。それでも四度目で何とか安定化させる事だけは出来たのさ」
「安定化、だけ、と言う事は――」
「そ、Rフィールドそのものは未だに存在してるんだよねー。ある程度薄まったとはいえ、今も世界中から不安とかの霊力を集めてる真っ最中なのさー」
「だ、大丈夫なんですか?」
「ま、その辺は心配しなくても良いんじゃないかなー。理由はどうあれ、今のRフィールドはただのでっかい霊地だからねー。で、ここからが本題なワケだけど、その前におかわり」
「まったくよう飲むのう」
 少し呆れつつも、雷蔵は空になった湯飲みを受け取る。
「さて、そんなRフィールドを殲滅させよう、って作戦自体は今も続いてるんだよねー。で、そのために必要なのがフェンリルなワケさー」
「犬耳が、ですか?」
「そ。正確には『ラグナロクに幕を引く役目を持ってる』事そのものだね。この属性を術式で補強拡張変換その他諸々色々と加工して突っ込んで、Rフィールドを部分的に、少しずつ切り取って行こうって寸法さ」
 出がらしになった茶葉を入れ替え、手早く急須にお湯を注ぐ雷蔵を横目に、巌は続ける。
「そうすれば、Rフィールドもただの霊力として還元していける――つまりフェンリルは世界的な危険物を、無害かつ莫大なパワーソースへ変換できる、とんでもなくオイシイ代物なのさ。注目度ウナギ登りなのも当然だねー」
「これに、そんな事が……」
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