136 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 11-07
しおりを挟む
「な、え、はっ、はぁ!?」
想定外にも程があるこの状況に、辰巳はわかりやすくうろたえた。左手がコンソールから外せたなら、風葉に詰め寄っていた事だろう。
「な、なんで――」
「ストップ! 気持ちは分かるけどその前に聞かせて!」
平手を突き出し、風葉は辰巳を強引に遮る。
「その、ええと……落ちて来るまでの間、私のコト見えてた? このバイクの運転手だって分かってた?」
「そんなわけないだろ!?」
「そう。ならいいんだ」
乱れたスカートを手直しし、念のため尻尾で腰回りを覆い隠して、風葉は一息つく。
が、辰巳の方は一息つく暇なんてない。
「良くない。まったくもって良くない。何で霧宮さんがここに居るんだ? 冥はどうしたんだ? それにその耳と尻尾は!?」
まくし立てる辰巳。あまりの状況にギノアすら動きを止めていたが、風葉は意に介さない。
「ああ、これ? フェンリルと同調したんだよ。私が、私の意志で」
「どうしてそんな事を!?」
苛立ちを隠そうともしない辰巳。割れたバイザーの向こうから覗く苛立ちと困惑を、風葉はまっすぐに見据えた。
「自爆」
一息。
放たれた一言に、辰巳の表情が消えた。
「するつもり、だったんでしょ」
言いつつ、風葉はレックウのシートから降りた。合体状態におけるレックウ搭乗者の役目は、主に特殊装備への霊力供給である。最初の起動に必要な霊力は合体時に供給済みなので、こうした融通は効くのだ。
「そういうの、何て言うか、困る」
二歩、三歩。風葉は風葉の後ろから、真横に移動する。
「うん、すごい困る。大体私、五辻くんに言いたいことがあるもの」
「言いたい事……?」
「そ。さっき、寮の玄関先で言いそびれたこと」
風葉が頷いたのと同時に、オウガのEマテリアルへ光が灯る。
足首。膝。手首。肩。そして胸部。未だ最適化が終わらぬ辰巳の左手首に先駆け、新たな術式が銀色の息吹に輝く。
「私はね、五辻くん」
そんな銀色に照らされながら、風葉はまっすぐに辰巳を見た。
近い。あと一歩で互いの息がかかりかねない至近距離から、金色の双眸が辰巳を見据える。
そして、言った。
「キミの事が、嫌いなんだよ」
想定外にも程があるこの状況に、辰巳はわかりやすくうろたえた。左手がコンソールから外せたなら、風葉に詰め寄っていた事だろう。
「な、なんで――」
「ストップ! 気持ちは分かるけどその前に聞かせて!」
平手を突き出し、風葉は辰巳を強引に遮る。
「その、ええと……落ちて来るまでの間、私のコト見えてた? このバイクの運転手だって分かってた?」
「そんなわけないだろ!?」
「そう。ならいいんだ」
乱れたスカートを手直しし、念のため尻尾で腰回りを覆い隠して、風葉は一息つく。
が、辰巳の方は一息つく暇なんてない。
「良くない。まったくもって良くない。何で霧宮さんがここに居るんだ? 冥はどうしたんだ? それにその耳と尻尾は!?」
まくし立てる辰巳。あまりの状況にギノアすら動きを止めていたが、風葉は意に介さない。
「ああ、これ? フェンリルと同調したんだよ。私が、私の意志で」
「どうしてそんな事を!?」
苛立ちを隠そうともしない辰巳。割れたバイザーの向こうから覗く苛立ちと困惑を、風葉はまっすぐに見据えた。
「自爆」
一息。
放たれた一言に、辰巳の表情が消えた。
「するつもり、だったんでしょ」
言いつつ、風葉はレックウのシートから降りた。合体状態におけるレックウ搭乗者の役目は、主に特殊装備への霊力供給である。最初の起動に必要な霊力は合体時に供給済みなので、こうした融通は効くのだ。
「そういうの、何て言うか、困る」
二歩、三歩。風葉は風葉の後ろから、真横に移動する。
「うん、すごい困る。大体私、五辻くんに言いたいことがあるもの」
「言いたい事……?」
「そ。さっき、寮の玄関先で言いそびれたこと」
風葉が頷いたのと同時に、オウガのEマテリアルへ光が灯る。
足首。膝。手首。肩。そして胸部。未だ最適化が終わらぬ辰巳の左手首に先駆け、新たな術式が銀色の息吹に輝く。
「私はね、五辻くん」
そんな銀色に照らされながら、風葉はまっすぐに辰巳を見た。
近い。あと一歩で互いの息がかかりかねない至近距離から、金色の双眸が辰巳を見据える。
そして、言った。
「キミの事が、嫌いなんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる
ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる