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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 13-10
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轟々と、タービュランス・アーマーが燃えている。圧縮しきれない過剰な霊力が、コロナのように吹き上げているのだ。
オーディンと同様の、オーバードライブモード。
状況は、改めて互角。
「――」
もはや言葉はない。ただ静かに二刀を、長槍を、二機の神影鎧装は構えた。
矢をつがえた弓のように、機体が、闘志が、限界まで引き絞られる。
そして、放たれた。
レツオウガは下へ、オーディンは上へ。決着をつけるために、己を貫くために、激突する二つの光。
爆発、爆発、爆発。
剣戟が閃くたびに、機体がぶつかるたびに、剣戟と霊力が灰色のカンバスに激戦の模様を描き出す。
「――っ」
その片方、レツオウガを操りながら、辰巳は待っていた。機を、氷のように冷静な心で。
同時に、組み上げていた。素人の風葉に出来たなら、自分にもやれるはずだ――と。
「あ、あ、あああああッ!」
もう片方、オーディンを操りながら、ギノアは見ていた。過去を、その脳裏に。
微笑む女。楽しそうな少年。順風満帆だった、あの頃。
「あの、頃、だとォ――!?」
二刀に斬撃を受け止められながら、ギノアはコンマ数秒考える。
それはいつだ。それにあの女は、あの少年は誰なんだ。
いや、そもそも。
「私はなぜ、こんな事をしているんだぁぁ――!!?」
もう幾度打ち合ったか分からぬグングニルを受け止めたまま、一瞬動きを止めるレツオウガ。パイロット達が動揺したのだ。
だがギノアは自分自身、言葉の意味が分からない。ただ生じた隙を突き、追撃の回し蹴りを見舞うのみだ。
「ああア!」
虚を突く一撃は、しかし霊力装甲噴射による緊急回避で空を切る。そのままレツオウガは降下し、道路の真ん中へ着地する。
「この――」
体勢を立て直しながら見下ろすギノアは、その矢先にゴトリという音を聞く。
音源は足元。見下ろせば、そこには何か仮面のような物が転がっている。他には何もない。
――よく分からない。
更に仮面の側には、薄黄ばんだ何かの粉が散らばっている。形を維持する霊力すら、全て絞り出されてしまったのだ。オーディンとの同調が切れたのもそれが理由である。
限界が、訪れたのだ。
――よく、分からない。
「が、あ、アァァアアアアッ!」
分からない、分からない、分からない。
分かっているのはたったの二つ。この身を燃やし尽くす激昂と、それが教える敵の存在だけだ。
「レ、ツ、オ、ウ、ガぁぁぁぁっ!」
残った霊力を、最後の生命をまき散らしながら、一直線に強襲するオーディン。
それは花火か、あるいは流れ星か。
「本当にカラッポだな。誰かの都合で、自分をなくすってのは」
そのつぶやきが、辰巳なりの手向けであった。
オーディンと同様の、オーバードライブモード。
状況は、改めて互角。
「――」
もはや言葉はない。ただ静かに二刀を、長槍を、二機の神影鎧装は構えた。
矢をつがえた弓のように、機体が、闘志が、限界まで引き絞られる。
そして、放たれた。
レツオウガは下へ、オーディンは上へ。決着をつけるために、己を貫くために、激突する二つの光。
爆発、爆発、爆発。
剣戟が閃くたびに、機体がぶつかるたびに、剣戟と霊力が灰色のカンバスに激戦の模様を描き出す。
「――っ」
その片方、レツオウガを操りながら、辰巳は待っていた。機を、氷のように冷静な心で。
同時に、組み上げていた。素人の風葉に出来たなら、自分にもやれるはずだ――と。
「あ、あ、あああああッ!」
もう片方、オーディンを操りながら、ギノアは見ていた。過去を、その脳裏に。
微笑む女。楽しそうな少年。順風満帆だった、あの頃。
「あの、頃、だとォ――!?」
二刀に斬撃を受け止められながら、ギノアはコンマ数秒考える。
それはいつだ。それにあの女は、あの少年は誰なんだ。
いや、そもそも。
「私はなぜ、こんな事をしているんだぁぁ――!!?」
もう幾度打ち合ったか分からぬグングニルを受け止めたまま、一瞬動きを止めるレツオウガ。パイロット達が動揺したのだ。
だがギノアは自分自身、言葉の意味が分からない。ただ生じた隙を突き、追撃の回し蹴りを見舞うのみだ。
「ああア!」
虚を突く一撃は、しかし霊力装甲噴射による緊急回避で空を切る。そのままレツオウガは降下し、道路の真ん中へ着地する。
「この――」
体勢を立て直しながら見下ろすギノアは、その矢先にゴトリという音を聞く。
音源は足元。見下ろせば、そこには何か仮面のような物が転がっている。他には何もない。
――よく分からない。
更に仮面の側には、薄黄ばんだ何かの粉が散らばっている。形を維持する霊力すら、全て絞り出されてしまったのだ。オーディンとの同調が切れたのもそれが理由である。
限界が、訪れたのだ。
――よく、分からない。
「が、あ、アァァアアアアッ!」
分からない、分からない、分からない。
分かっているのはたったの二つ。この身を燃やし尽くす激昂と、それが教える敵の存在だけだ。
「レ、ツ、オ、ウ、ガぁぁぁぁっ!」
残った霊力を、最後の生命をまき散らしながら、一直線に強襲するオーディン。
それは花火か、あるいは流れ星か。
「本当にカラッポだな。誰かの都合で、自分をなくすってのは」
そのつぶやきが、辰巳なりの手向けであった。
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