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あなたを好きになる理由
最終話
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王城のパーティ会場には、贅を凝らしたドレスやアクセサリーをつけた、貴族達が広い広間を埋め尽くしている。会場を守る衛士は、まるで彫刻のように不動で立っており、王族の周囲には騎士達が会場に合わせた華やかな騎士服で警護をしている。王女に付き添う侍女は粛々と本日の主役を支え、彼らを一目見ようと群がる令嬢達の装いはいつも以上に華やかだった。
「アイシス。この会場の誰よりも、君が輝いているよ」
「こんなに人がいるのよ。そんなわけないじゃない」
会場の中央に陣取る王族の様子など、見向きもせず、深紅のドレスを着たアイシスと、紺色のタキシードを着たエリクは壁際でお互いを見つめている。
エリクが開発した薬により、人前に出られるようになった王女のお祝いに、五年に一度王宮で開かれている王族主催のパーティはとても豪華なものになった。
体の線が強調された、深紅のドレスを身につけて金の髪を巻き上げたアイシスは、周囲の参加者全員の目を奪うほど美しいのだが、当の本人は、会場の豪華さに圧倒されてエリクにピッタリと寄り添うようにして過ごしている。
「あっ!みてあの衛士あなたと同じ防具よ!」
会場の入り口を守る衛士に向かって、アイシスがふふっと表情を崩し微笑みかければ、彫刻のように動かなかった衛士が明らかにフラついたのがエリクには分かってしまった。
「え~だめだよ。君が好きなのは医薬研究所の裏門の門番だろ」
「そうよ。でも、もう会えないんだもの」
「早く、所長を好きになってくれないと嫉妬で屋敷に閉じ込めてしまいそうだ」
「だめよ。やっと隣国の王女様の輿入れが決まったのよ。絶対専属侍女になってみせるんだからっ」
「本当は俺専属でいいんだけどなぁ」
ふふっと笑ったアイシスは、絡ませた腕を引き寄せ、エリクの耳元で囁いた。
「夜はあなた専属なんだからいいでしょ。旦那様」
「あ~……。今日は優しくできないからね」
「エリクから優しさ取ったら何も残らないじゃない!」
「爵位が残るだろ?」
「私が好きなのは爵位じゃなくて優しい所なのっ!」
頬を膨らませたアイシスを抱き寄せ、パーティの終わりを待つ事なく出口に向かったエリクは、伯爵家の紋章を掲げた馬車にアイシスを乗せ、いつものように御者に銀貨を笑顔で渡した。
笑顔で銀貨を受け取った御者はゆっくりゆっくり馬車を動かし、伯爵邸とは逆方向に馬車を走らせた。
屋敷に帰ると手加減ができなくなると分かっているエリクなりの優しさなのだが、アイシスに伝わる事はなく、「やっぱり優しくないっ」というアイシスの叫びと漏れ出す吐息を馬車の走る音がかき消していった。
「アイシス。この会場の誰よりも、君が輝いているよ」
「こんなに人がいるのよ。そんなわけないじゃない」
会場の中央に陣取る王族の様子など、見向きもせず、深紅のドレスを着たアイシスと、紺色のタキシードを着たエリクは壁際でお互いを見つめている。
エリクが開発した薬により、人前に出られるようになった王女のお祝いに、五年に一度王宮で開かれている王族主催のパーティはとても豪華なものになった。
体の線が強調された、深紅のドレスを身につけて金の髪を巻き上げたアイシスは、周囲の参加者全員の目を奪うほど美しいのだが、当の本人は、会場の豪華さに圧倒されてエリクにピッタリと寄り添うようにして過ごしている。
「あっ!みてあの衛士あなたと同じ防具よ!」
会場の入り口を守る衛士に向かって、アイシスがふふっと表情を崩し微笑みかければ、彫刻のように動かなかった衛士が明らかにフラついたのがエリクには分かってしまった。
「え~だめだよ。君が好きなのは医薬研究所の裏門の門番だろ」
「そうよ。でも、もう会えないんだもの」
「早く、所長を好きになってくれないと嫉妬で屋敷に閉じ込めてしまいそうだ」
「だめよ。やっと隣国の王女様の輿入れが決まったのよ。絶対専属侍女になってみせるんだからっ」
「本当は俺専属でいいんだけどなぁ」
ふふっと笑ったアイシスは、絡ませた腕を引き寄せ、エリクの耳元で囁いた。
「夜はあなた専属なんだからいいでしょ。旦那様」
「あ~……。今日は優しくできないからね」
「エリクから優しさ取ったら何も残らないじゃない!」
「爵位が残るだろ?」
「私が好きなのは爵位じゃなくて優しい所なのっ!」
頬を膨らませたアイシスを抱き寄せ、パーティの終わりを待つ事なく出口に向かったエリクは、伯爵家の紋章を掲げた馬車にアイシスを乗せ、いつものように御者に銀貨を笑顔で渡した。
笑顔で銀貨を受け取った御者はゆっくりゆっくり馬車を動かし、伯爵邸とは逆方向に馬車を走らせた。
屋敷に帰ると手加減ができなくなると分かっているエリクなりの優しさなのだが、アイシスに伝わる事はなく、「やっぱり優しくないっ」というアイシスの叫びと漏れ出す吐息を馬車の走る音がかき消していった。
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