【R18】【短編集】気持ちいい魔法の杖から、私のことが大好きな竜が生まれました【タイトルは最新作名】

ToRa

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宵の約束は化かしあい

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「んっ!」
「なんじゃ? 貢物か?」

 数日後、また夕暮れ時、泣いていた少年が階段を登って来て、宵乃に風呂敷に包まれた何かを渡してきた。

 あれから何度か、階段の下まで来ては、登る事なく去っていく事を繰り返していた事は知っていた。

 今日はついに、自ら、息をあげながら、階段を登り、前回と同じ場所まで登ってきた。

 そして、何かを宵乃に押し付けている。

「僕の名前はリュカ。リュカ・ヴェルディエだよ。あなたからは名前を聞いたのに、僕は名乗らずに帰ってしまったから。お詫び」
「はっはっはっ! なんて律儀なわっぱなのじゃ!」
「ワッパじゃないよ! リュカだ! でも、最初に無礼をしたのは僕だから……家の者に聞いたんだ。狐は何が好きなのかと」
「ほう?」
「だから、これはお詫びだよ」

 嫌な予感しかしない包みを開けてみると、カゴに入れられた、丸々と太ったネズミが三匹いた。

「これをあげるから僕のことは食べないでね」
「……ほー」

 宵乃は、カゴを開け放つと、ガサガサと逃げ惑うネズミを掴み、神社の周りの森に向けて放った。

「あっ! なんで放しちゃうの? 探すの大変だったのに!」
「妾はネズミなぞ食わん!」
「えっ! そうなの?!」
「妾は化狐だと言ったではないか!」
「狐が人の姿になっているのではないの?」
「違う! 妾は妾じゃ!」
「そうなんだ。じゃあ、何を食べるの?」
「そうじゃなー……。逞しい人間のオスが好物じゃ」
「……人間食べるの?」
「ふふっ どうじゃろな」

 怯えるようにこちらを見上げた新緑の瞳が、恐怖に揺れている。

「まぁ、お前みたいなちんちくりんなんぞ食う気も起こらんということじゃ」
「……ほんと?」
「さあな」
「じゃあ、おわびは何がいい? 逞しい人間の雄以外に、他に好きな食べ物はないの?」
「そうだなぁ……食べてみたいものならある」
「なぁに?」
「みたらし団子とりんご飴じゃ」
「へ?」
「なんだ」
「ふふっ! なんでもなぁい! みたらし団子とりんご飴かぁ」
「祭りの日は、ここにも人がたくさんくるからな。この階段に座って団子やりんご飴を食べているのをみているとうまそうにみえるのじゃ」
「じゃあ、夏祭りの日、僕が買ってここに来るね」
「本当か?」
「お詫びだもん! 約束! 待ってて!」

 笑顔で駆け降りていったリュカの姿を見つめる。振り返って手を振るリュカに、少しだけ手を振り返して、すぐに引っ込めた。

 みたらし団子とりんご飴をもって、登ってくるだろう姿を想像して思わず笑みがこぼれる。

 階段に寝転び、夕闇に染まっていく空を見つめる。

「夏祭りが楽しみになったのは初めてじゃ」

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