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宵の約束は化かしあい
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神社に人が溢れ、この日だけは、既に管理する人間も、祀られる神もいなくなったこの神社に灯りがともる。提灯で飾られた階段には、たくさんの家族連れや、恋人達が腰をかけている。
宵乃は、神社の屋根に座り、藤色の瞳を行き交う人々に向ける。その中に、新緑の瞳と、金色の髪を探すが、どこにも見当たらない。
「おい。今年もお詫びはなしか?」
ボソリと呟いた声は、誰に届くことなく消えていく。
あれから、二十年。
まだ、リュカからのお詫びは届いていない。
あの年の夏祭り、宵乃はリュカが現れるのを今か今かと待っていた。たくさんの人が階段を登り、思い出したように神社に祈っていく。
きっと、あの美しい瞳をした少年が息を切らして宵乃に会いにくると信じて待っていた。
だが、祭りの終わりを告げる鐘が鳴ってもリュカが現れる事は無かった。
提灯の灯りが消え、辺りが真っ暗になっても、宵乃は待ち続けていた。
あれから、二十年。
また、今年の夏祭りがやってきた。
どうせ、現れる事はない、リュカの姿を探して、宵乃は待っている。
「化狐が人間の子供に騙されるなんてとんだ笑い話じゃ」
屋根の上に寝転び、月明かりを全身に浴びる。少しだけ妖力が回復するのを感じるが、リュカとの約束に縛りつけられたように、神社から動くことができなくなった時から、人間の男から生力を奪い、妖力に変えることができなくなった。
そのうち、耳と尻尾を隠す力がなくなり、人里に降りることもできなくなった。
このまま時が過ぎれば、今の姿をとることも難しくなる。狐に戻る日も近いのかもしれないと宵乃は悟っている。
「狐に戻ったら……ネズミでも食うか」
リュカが持ってきた風呂敷に包まれたネズミを思い出し、思わず笑みが溢れた。
「みたらし団子とりんご飴を持ってきたら、今度はネズミをご所望とは……うまくいかないな」
体の毛が逆立つような、甘い低い声が、すぐ近くにの屋根の下からした。
(まさか……まさか……)
すぐに起き上がり、転げ落ちるように屋根を降りると、そこには宵乃が見上げるほど、大きな身長で、しっかりとした体つきのスーツ姿の男性が立っていた。
男性の瞳は、新緑のような爽やかな色をして、髪は月の光のような金色をしている。
「リュカ……かえ……?」
両手にたくさんのりんご飴と風呂敷に包まれた荷物を抱えた男性が微笑んだ。
宵乃は、神社の屋根に座り、藤色の瞳を行き交う人々に向ける。その中に、新緑の瞳と、金色の髪を探すが、どこにも見当たらない。
「おい。今年もお詫びはなしか?」
ボソリと呟いた声は、誰に届くことなく消えていく。
あれから、二十年。
まだ、リュカからのお詫びは届いていない。
あの年の夏祭り、宵乃はリュカが現れるのを今か今かと待っていた。たくさんの人が階段を登り、思い出したように神社に祈っていく。
きっと、あの美しい瞳をした少年が息を切らして宵乃に会いにくると信じて待っていた。
だが、祭りの終わりを告げる鐘が鳴ってもリュカが現れる事は無かった。
提灯の灯りが消え、辺りが真っ暗になっても、宵乃は待ち続けていた。
あれから、二十年。
また、今年の夏祭りがやってきた。
どうせ、現れる事はない、リュカの姿を探して、宵乃は待っている。
「化狐が人間の子供に騙されるなんてとんだ笑い話じゃ」
屋根の上に寝転び、月明かりを全身に浴びる。少しだけ妖力が回復するのを感じるが、リュカとの約束に縛りつけられたように、神社から動くことができなくなった時から、人間の男から生力を奪い、妖力に変えることができなくなった。
そのうち、耳と尻尾を隠す力がなくなり、人里に降りることもできなくなった。
このまま時が過ぎれば、今の姿をとることも難しくなる。狐に戻る日も近いのかもしれないと宵乃は悟っている。
「狐に戻ったら……ネズミでも食うか」
リュカが持ってきた風呂敷に包まれたネズミを思い出し、思わず笑みが溢れた。
「みたらし団子とりんご飴を持ってきたら、今度はネズミをご所望とは……うまくいかないな」
体の毛が逆立つような、甘い低い声が、すぐ近くにの屋根の下からした。
(まさか……まさか……)
すぐに起き上がり、転げ落ちるように屋根を降りると、そこには宵乃が見上げるほど、大きな身長で、しっかりとした体つきのスーツ姿の男性が立っていた。
男性の瞳は、新緑のような爽やかな色をして、髪は月の光のような金色をしている。
「リュカ……かえ……?」
両手にたくさんのりんご飴と風呂敷に包まれた荷物を抱えた男性が微笑んだ。
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