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最後の恋は神さまとでした
神さまに会いたくて/3
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画面から一度も視線をはずさなかった澄藍は、別のところに感動していた。
「不思議だね。昔こんな映像なんか見たら怖くてしょうがなかったけど、今全然平気になった。神さまのお陰だ」
「感謝はそれくらいにして、今のがどうかを答えろ」
トレーニングの趣旨が脱線しそうになっているのを、コウが的確に戻した。澄藍は頭の中で動画を整理する、霊感を使って。
「え~っとね、いたよ。でも、殺された人じゃない。別の人で、それに……言い方は嬉しくないけど、便乗してる人たちが何人かいた」
心の目に写っていたのは、別人だった。写真がなくても、彼女は本人かそうでないかがわかった。殺された時刻へと、心が勝手に戻って、被害者が誰だか探し当てるのだから。霊感とはそう言うものだ。
「他には?」
「全部が幽霊のせいじゃない。壁から緑の液体が出てくるのは、接着剤か何かが、ここは多少は霊的な存在でも手を加えられるけど、壁の外に溶け出るようにしただけ。心霊現象のうちのいくつかは、ただの自然現象」
クイズ番組で鳴るピンポーンピンポーン! のあと、いつの間にか用意されていた薬玉がパカっと割れ、鳩が飛び立ち、色とりどりの紙吹雪やテープがキラキラと現れた。
「正解だ! よし、次だ。すぐ下のやつだ」
「これね」
次をクリックする。
*
主人のもとで働いていた使用人がほんの些細な失敗で次々と殺され、証拠隠滅のために投げ捨てられた井戸が家のすぐ近くにある場所。
恨みや憎しみが詰まっており、夜には井戸から人の苦しそうな声や悲鳴などが近隣住民でも聞いたことがあると、もっぱらの噂。
壊れた桶や鉄屑などが投げ込まれている雑多な、井戸の中をカメラで写しながら、今の持ち主である人のインタビューが流れている。
何度も怪奇現象に遭い、その中でもある晩、井戸の近くの水道をひねると、血が出てきたと言う――
*
澄藍は平気な顔で、全て見終わった。
「どうだ?」
「これは幽霊はいない」
即答だった。どこにも霊感は引っかからなかった。
「そうだ。人間疲れてると幻覚や幻聴を聞きやすくなる。単なる勘違いだ」
コウが言うように、根拠のないものほど、人は想像力を働かせて怯えるものだ。澄藍がミネラルウォーターを飲むと、コウが指示を出した。
「よし、少しスクロールしろ」
「うん」
「よし、それだ」
動画の説明を読む前に、澄藍は表情を鈍らせた。
「これ? これはやばそうだね」
「いいから見ろ」
覚悟しないとけないと思いながら、幽霊を霊視する訓練中の女はプレイボタンをクリックした――
*
心霊スポットとして有名な外国の古城。見にくる人々があとを立たず、宿泊プランまで用意されていて、部屋に泊まることもできる。
今は墓地としても利用されている広い庭園が映し出され、澄藍は途中で思わず声をもらした。
「あぁ~、最初からすごいよ。花火大会みたいに幽霊で大混雑だ」
彼女の心の目には、夜色の庭が真っ白になっていた。
場面は変わり、部屋の中にある肖像画などが映し出され、利用した客がおかしな音を聞いた、視線を感じたなどを答えていた。
「肖像画が見てる気がするか……。それはそうだよね。肖像画のところにぴったり幽霊が立って見てるから、それはそう感じるよね」
笑いを取ってくる幽霊だなと、澄藍は思った。その後も、あちこち映し出されていたが、彼女の心には白く透明な人ばかりだった。
「不思議だね。昔こんな映像なんか見たら怖くてしょうがなかったけど、今全然平気になった。神さまのお陰だ」
「感謝はそれくらいにして、今のがどうかを答えろ」
トレーニングの趣旨が脱線しそうになっているのを、コウが的確に戻した。澄藍は頭の中で動画を整理する、霊感を使って。
「え~っとね、いたよ。でも、殺された人じゃない。別の人で、それに……言い方は嬉しくないけど、便乗してる人たちが何人かいた」
心の目に写っていたのは、別人だった。写真がなくても、彼女は本人かそうでないかがわかった。殺された時刻へと、心が勝手に戻って、被害者が誰だか探し当てるのだから。霊感とはそう言うものだ。
「他には?」
「全部が幽霊のせいじゃない。壁から緑の液体が出てくるのは、接着剤か何かが、ここは多少は霊的な存在でも手を加えられるけど、壁の外に溶け出るようにしただけ。心霊現象のうちのいくつかは、ただの自然現象」
クイズ番組で鳴るピンポーンピンポーン! のあと、いつの間にか用意されていた薬玉がパカっと割れ、鳩が飛び立ち、色とりどりの紙吹雪やテープがキラキラと現れた。
「正解だ! よし、次だ。すぐ下のやつだ」
「これね」
次をクリックする。
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主人のもとで働いていた使用人がほんの些細な失敗で次々と殺され、証拠隠滅のために投げ捨てられた井戸が家のすぐ近くにある場所。
恨みや憎しみが詰まっており、夜には井戸から人の苦しそうな声や悲鳴などが近隣住民でも聞いたことがあると、もっぱらの噂。
壊れた桶や鉄屑などが投げ込まれている雑多な、井戸の中をカメラで写しながら、今の持ち主である人のインタビューが流れている。
何度も怪奇現象に遭い、その中でもある晩、井戸の近くの水道をひねると、血が出てきたと言う――
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澄藍は平気な顔で、全て見終わった。
「どうだ?」
「これは幽霊はいない」
即答だった。どこにも霊感は引っかからなかった。
「そうだ。人間疲れてると幻覚や幻聴を聞きやすくなる。単なる勘違いだ」
コウが言うように、根拠のないものほど、人は想像力を働かせて怯えるものだ。澄藍がミネラルウォーターを飲むと、コウが指示を出した。
「よし、少しスクロールしろ」
「うん」
「よし、それだ」
動画の説明を読む前に、澄藍は表情を鈍らせた。
「これ? これはやばそうだね」
「いいから見ろ」
覚悟しないとけないと思いながら、幽霊を霊視する訓練中の女はプレイボタンをクリックした――
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心霊スポットとして有名な外国の古城。見にくる人々があとを立たず、宿泊プランまで用意されていて、部屋に泊まることもできる。
今は墓地としても利用されている広い庭園が映し出され、澄藍は途中で思わず声をもらした。
「あぁ~、最初からすごいよ。花火大会みたいに幽霊で大混雑だ」
彼女の心の目には、夜色の庭が真っ白になっていた。
場面は変わり、部屋の中にある肖像画などが映し出され、利用した客がおかしな音を聞いた、視線を感じたなどを答えていた。
「肖像画が見てる気がするか……。それはそうだよね。肖像画のところにぴったり幽霊が立って見てるから、それはそう感じるよね」
笑いを取ってくる幽霊だなと、澄藍は思った。その後も、あちこち映し出されていたが、彼女の心には白く透明な人ばかりだった。
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