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ラブストーリーをしよう
前途多難なファンタジー/2
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だがこれは、素晴らしい企画なのだ。俳優など顔負けの、我が家のイケメン夫たち。どうか演じていただきたい!
そんな心の声が届いたのか、張飛がニコッとした。
「颯茄さん、俺っちは賛成っす! ラブストーリーやりたいっすよ」
「やった! ひとり味方がいた」
颯茄は己を奮い立たせ、沈んだリングからガバッと起き上がった。
「とにかくですね! 十一個ストーリーを考えたので、ぜひやってください! 今回は、雅威さんが結婚する前の企画だったので、雅威さんはお休みです」
「わかった。見物をさせてもらう」
どこか笑いが漏れている雅威がうなずいた。
焉貴がテーブルに肘をつくと、はだけたシャツの隙間から、鎖骨が顔をのぞかせ、
「それって……」
「はい」
「お前が今まで考えた案を、俺たちで消化するってことでしょ?」
「――ギクッ!」
持っていた台本を思わず崩し、パンナコッタの入った器にカランとぶつかった。夫たちは盛大にため息をつく。
「図星だ……」
「それって、使い回しなのか?」
ミサンガをつけた手で、麦茶のグラスを置きながら言ってきた、独健を燭台の向こうにして、颯茄は視線をそらした。
「ん~? どうだったかなあ~?」
「使い回しだ……」
相変わらずわかりやすい妻のまわりで、夫たちの十二人のため息がもれ出た。
だが、ここで諦めてなるものか。結婚する前に書きためたものだ。夫たち用に手を加えてきたのだ。
颯茄は構想を練るたび、頭が煮詰まりに煮詰まって、そこには結局何もなかったという。自分の脳みそのなさ加減と常に対峙し続けた奮闘の日々。だからこそ、実現をしなくては、その想いに駆られて、颯茄はできるだけ大声で叫んだ。
「使い回しはあまりないです! 新しく書いたのもあります!」
「使い回しいくつ?」
焉貴に問われ、颯茄は勢いをなくし、ボソボソとつぶやく。
「……六つです」
「配役変えたってこと~?」
孔明の間延びした声が食卓に降り積もった。それも確かにあるが違う。そんな単純なものではない。
颯茄は親指を立てて、バッチリですと言うように大きくうなずく。
「そのままのもあります!」
十五年前から知っているのだ。みんなのことは。会ったことはなかったが、どんな人物かはリサーチ済み。やりたかったのだ、ずっと前から。
夢の共演である。結婚すると思っていなかった、当時のものも混ざっているのだから。
「まあ、いい」
無事にゴーサインが出た。颯茄は崩れていた台本を指先でそろえる。
「それでですね、脇役に旦那さまをもう一人入れます」
「っつうことは、旦那チーム全員がふたつずつやるってか?」
明引呼の鋭いアッシュグレーの瞳には、ジェットライターの炎が浮かび上がっていた。ミニシガリロの青白い煙が上がると同時に、颯茄は右隣へ向き、
「はい、そうです。ですが、妻は出づっぱりです!」
「自分が出たいんだろう!」
またツッコミを受けた妻を置いて、焉貴の宝石のように異様に輝く黄緑色の瞳には、三人の夫たちが映った。
「お前たちはいいの? さっきから何も言ってないけど」
「僕はいいですよ~。完成したら生徒に見せます~」
湯のみから上がる緑茶の香りを楽しんでいた、月命はニコニコ微笑んだ。
「小学生に見せられる内容なの?」
颯茄はシャンデリアを見上げて、ソラで台本をさらう。
「え~っと……一応R17じゃないです」
「夕霧と蓮は?」
颯茄はすぐ左の席に座っている夕霧命の顔を見上げる。すると、そこには妖艶なラインが描かれていた、頬からあごにかけて。
「俺は構わん」
地鳴りのような低い声のあとに、
「いい。許可してやる、ありがたく思え」
俺さまな蓮の発言に、妻は食いついた。
「許しは乞うてない」
そして、ちょっとしたイザコザ――いやどんぐりの背比べが始まる。蓮は鼻でバカしにしたように、「ふんっ!」と笑い、
「そうか。なら、俺はやらない。お前らだけでやれ」
負けてなるものか。颯茄は台本をパラパラとめくり、わざとらしく言う。
「残念だなあ。焉貴さんとペアだったんだけどなあ~」
「そう。俺と蓮が共演ね」
まだら模様の声が食卓の上に舞うと、全員の視線が銀の長い前髪に集中した。
「………………………………」
そんな心の声が届いたのか、張飛がニコッとした。
「颯茄さん、俺っちは賛成っす! ラブストーリーやりたいっすよ」
「やった! ひとり味方がいた」
颯茄は己を奮い立たせ、沈んだリングからガバッと起き上がった。
「とにかくですね! 十一個ストーリーを考えたので、ぜひやってください! 今回は、雅威さんが結婚する前の企画だったので、雅威さんはお休みです」
「わかった。見物をさせてもらう」
どこか笑いが漏れている雅威がうなずいた。
焉貴がテーブルに肘をつくと、はだけたシャツの隙間から、鎖骨が顔をのぞかせ、
「それって……」
「はい」
「お前が今まで考えた案を、俺たちで消化するってことでしょ?」
「――ギクッ!」
持っていた台本を思わず崩し、パンナコッタの入った器にカランとぶつかった。夫たちは盛大にため息をつく。
「図星だ……」
「それって、使い回しなのか?」
ミサンガをつけた手で、麦茶のグラスを置きながら言ってきた、独健を燭台の向こうにして、颯茄は視線をそらした。
「ん~? どうだったかなあ~?」
「使い回しだ……」
相変わらずわかりやすい妻のまわりで、夫たちの十二人のため息がもれ出た。
だが、ここで諦めてなるものか。結婚する前に書きためたものだ。夫たち用に手を加えてきたのだ。
颯茄は構想を練るたび、頭が煮詰まりに煮詰まって、そこには結局何もなかったという。自分の脳みそのなさ加減と常に対峙し続けた奮闘の日々。だからこそ、実現をしなくては、その想いに駆られて、颯茄はできるだけ大声で叫んだ。
「使い回しはあまりないです! 新しく書いたのもあります!」
「使い回しいくつ?」
焉貴に問われ、颯茄は勢いをなくし、ボソボソとつぶやく。
「……六つです」
「配役変えたってこと~?」
孔明の間延びした声が食卓に降り積もった。それも確かにあるが違う。そんな単純なものではない。
颯茄は親指を立てて、バッチリですと言うように大きくうなずく。
「そのままのもあります!」
十五年前から知っているのだ。みんなのことは。会ったことはなかったが、どんな人物かはリサーチ済み。やりたかったのだ、ずっと前から。
夢の共演である。結婚すると思っていなかった、当時のものも混ざっているのだから。
「まあ、いい」
無事にゴーサインが出た。颯茄は崩れていた台本を指先でそろえる。
「それでですね、脇役に旦那さまをもう一人入れます」
「っつうことは、旦那チーム全員がふたつずつやるってか?」
明引呼の鋭いアッシュグレーの瞳には、ジェットライターの炎が浮かび上がっていた。ミニシガリロの青白い煙が上がると同時に、颯茄は右隣へ向き、
「はい、そうです。ですが、妻は出づっぱりです!」
「自分が出たいんだろう!」
またツッコミを受けた妻を置いて、焉貴の宝石のように異様に輝く黄緑色の瞳には、三人の夫たちが映った。
「お前たちはいいの? さっきから何も言ってないけど」
「僕はいいですよ~。完成したら生徒に見せます~」
湯のみから上がる緑茶の香りを楽しんでいた、月命はニコニコ微笑んだ。
「小学生に見せられる内容なの?」
颯茄はシャンデリアを見上げて、ソラで台本をさらう。
「え~っと……一応R17じゃないです」
「夕霧と蓮は?」
颯茄はすぐ左の席に座っている夕霧命の顔を見上げる。すると、そこには妖艶なラインが描かれていた、頬からあごにかけて。
「俺は構わん」
地鳴りのような低い声のあとに、
「いい。許可してやる、ありがたく思え」
俺さまな蓮の発言に、妻は食いついた。
「許しは乞うてない」
そして、ちょっとしたイザコザ――いやどんぐりの背比べが始まる。蓮は鼻でバカしにしたように、「ふんっ!」と笑い、
「そうか。なら、俺はやらない。お前らだけでやれ」
負けてなるものか。颯茄は台本をパラパラとめくり、わざとらしく言う。
「残念だなあ。焉貴さんとペアだったんだけどなあ~」
「そう。俺と蓮が共演ね」
まだら模様の声が食卓の上に舞うと、全員の視線が銀の長い前髪に集中した。
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