明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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Dual nature

夢の欠片/6

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 ある意味、自分に釘づけになっている颯茄に、孔明は顔を向けた。

「いつになったら起きるかな?」

 BLに気圧されないように、颯茄は頭をプルプルと横に振る。

「たぶん放課後まで寝てるよ」
「そう。ずっと寝てるの?」

 他の誰にも話していない話。言うわけにはいかない。だが、聞かれている。だからぼやかすしかなかった。

「そう。いつもそうで……」
「どうしちゃったんだろうね?」
「さあ?」
「ふ~ん、そっか」

 口調は適当だったが、聡明な瑠璃紺色の瞳はどこまでもクールで、月を隙のない視線でまるで獲物でもターゲッティングしたように捉えていた。

 四時間目まで、颯茄と孔明が月を斜め後ろの席から眺めていたが、眠り王子が起きるのは、授業中に教師が叱る口実作りのためにわざと質問をして、どんな教科でも正確に答える時だけだった。

 全ての時間で、教師は眠り王子の敗者となり、クラスメイトはその度に首をかしげるのだった。

    *

 食べ物の匂いが教室に広がる昼休み。

 孔明の聡明な瑠璃紺色の瞳は、マゼンダ色の髪からはずされることはなく、のろのろと席から立ち上がったのを遠くから眺めていた。

 手には何も持っておらず、女性的に見える男子生徒はすぐ近くのドアから廊下へ出た。

(彼が教室から出て行った。自然を装うから、今は追わない)

 まだ追いかけることをしないでいると、午前中からずっと月を見ていた颯茄が隣の席で動き出した。

(彼女が立ち上がった)

 頬杖をつくふりをして、孔明は女子生徒をうかがう。

(手に持ってるもの。お弁当……一人分にしては量が多すぎる)

 颯茄は何かに気を取られていて、孔明が自分を見ていることにはまったく気づかなかった。

 落ち着きなく彼女の上履きは少しの間ウロウロしていたが、やがて足早に教室を出ていった。

(そうなると、彼のあとを彼女が追っていったという可能性が高い)

 颯茄が教室の廊下を左に曲がったのを見届けて、席を立とうとしたが、

(じゃあ、ボクも追っていけば、彼と話ができ――)

 女の子の声が急に背後からかかった。

「安芸くん?」

 何事もないように、孔明は好青年の笑みで振り返った。

「何~?」
「お昼まだ食べてないよね?」
「うん、食べてないよ」

 足止めだ。一秒だって遅れたら、もう追えない。休み時間や移動教室で行ったところまでは、この学校の見取り図は頭の中に入っている。だが、相手がその他へ行ってしまったら、もう探せない。

(追えなくなったかも?)

 それでも、孔明は焦ることなく、席に座ったまま、イケメン転校生に取り入ろうと寄ってきた女子生徒に囲まれていた。

「よかったらこれ、私から」

 購買で余分に買ってきたパンやおにぎりが次から次へと差し出される。

「あ、私も!」
「私も私も!」

 あっという間に両手いっぱいになった昼食。孔明は春風みたいに微笑む。

「ありがとう」

 女の子が待っていたというように話を切り出そうとした。

「それでね!」

 何をしてくるなど予測済みだ、イケメン高校生には。

(一緒に食べようと誘ってくる可能性が非常に高い)

 さりげなく素早くさえぎって、わざとらしく凛々しい眉を潜めた。

「あぁ、そうそう。ボク、今ちょっと困ってるんだ」

 自分に取り入ろうとしている女子生徒たち。多少の難題でも耳は貸す。この理論のもとに、孔明の話は進んでいる。そうとも知らず、案の定、聞く気満々で、女子生徒たちは身を乗り出した。

「どうしたの?」

 そうして、孔明はこう聞くのである。

「昼休みの、漆橋くんの居場所知ってる人いる?」
「あたし知ってる!」
「そう、じゃあ、教えてくれるかな?」

 遅れはこうやって、挽回できるのだった。
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