明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

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二度目の結婚式

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 2018年の7月30日のことだ。
 このバイセクシャル複数婚が始まったのは。

 私は以前、結婚とは、恋愛とは、男女でするのが普通であり、1対1だと信じきっていた。

 本編にもあったが、決して、腐女子ではなく、貴女たちには大変申し訳ないが、BL作品は私にとってはギャグでしかなかった。

 蓮以外は全員、会ったこともなく、話したこともなく、他の人を通して、どんな人かを聞いていただけ。結婚したいと思う人など誰もいなかった。それが15年前だ。

 その頃の私の一番好きな人といえば、

「父上! 父上!」

 現実でも、私はかなりのファザコンで育ってきた。父親が本当に大好きなのである。

 寡黙で、思慮深くて、落ち着いている。

 だが、恋とは不思議なもので、私が最初に好きになったのは、光命ひかりのみことだった。

 彼は冷静で、瞬発力がある。

 が、全然、違うタイプなのである。

 それでも、15年前は、結婚するとは思っていなかった。
 なぜなら、光命にはすでに心に決めたひとがいたのである。別れることが起きない世界だ、彼が住んでいるのは。
 私が入り込む余地などどこにもなかった。彼が幸せなら、それでいいとも思った。

 しかし、それから6年後、父上に似ている人に出会ったのだ。それが、蓮である。
ただ、ひねくれで怒りやすいところは父上とは違うが、寡黙で落ち着いてはいる。

 本当に恋に落ちたのだ。本当に知らないうちに結婚したのだ。子供も生まれて、幸せな日々だった。

 カチンとくることを言われて、言い返す。それは、仲がいい証拠であって、自分らしくいられる相手だった。

 そんな日々の中でも時々思い出すのだ。光命のことを。叶わないのに、叶えるつもりもないのに。

 だから、こう思うことにしたのだ。この好きは憧れなのだ、と。

 私の心の声は蓮には聞こえている。それでも、彼は何も言わなかった。光命と職場が一緒で、どう接したのかも知らない。

 焉貴これたかにはたまに会って、『私』と丁寧語で話されて、自分も丁寧に返す。そんな会話をするだけで、彼が結婚しているのかとか、彼女がいるのかとか、考えることもなく、意識もしたこともなく、ただ蓮の友達だと認識しているだけだった。

 バイセクシャルの複数婚はどこにも潜んでいなかった。

 それから様々なことが起きて、時は流れ、光命もことも焉貴のことも、みんなのことも忘れ去ってしまった。

 しかし14年も経った、ある日、光命がまた気になり出したのだ。

 彼はあれから、結婚したのだろうか?

 それを知るすべもなければ、知る権利もない。そうして、自分へ言い聞かせる。

 憧れ、ファンクラブの会員だ、と。

 結婚式の2週間前だ。

 この人と結婚できたら、どんなに幸せなのだろう。

 と思ったのは。

 私はどうかしている。

 とも思った。ため息しか出てこない。自分のバカさ加減と、欲望に翻弄された自分勝手な想いに。

 そうして、去年の7月29日、蓮が男の人を連れてそばへやってきたのだ。
 会ったこともない人だった。だが、それが誰なのかすぐにわかった。雰囲気と他の人から聞いた容姿にそっくりだった。

 自分の目を疑った。恋い焦がれすぎて、私は恋という熱にでもうなされて、幻でも見ているのではないかと思った。

 そうして、彼の独特な、遊線が螺旋を描く優雅で芯のある声で、

「あなたと明日、結婚します」

 何がどうなって? こんな展開に?
 いきなり光命とハッピーエンドである。
 起承転結ではなく、最後だけとって、結だ!
 あらすじもプロットも真っ青である。

 自分で言うのもなんだが、勘はかなり鋭い方だ。ピンときた。

 2週間前に、蓮が光命にプロポーズした。それに、了承したでしょ?

 光命がプロポーズしたではない。それは、可能性が非常に低い。光命はルールはルールだから、まず自分から、バイセクシャルにはいかないし、そうだったとしても、そうそう認めないだろう。

 だが、蓮がプロポーズしたなら納得できる。感性で動いているから、ボケてるところもあるしね。

 例えば、こんな風に、怒っているのに、

「リフレインする山びこ」

 と言ってくる。これを訳すと、

「繰り返す山びこ」

 どんだけ山びこする気だ!

 そういう突っ込みたい言葉を平気で話してくる。しかも、蓮は性別で人を見ないから、同性を好きになったとしても驚かない。

 さらには、光命の罠にでもはまって、プロポーズを仕向けられたってこともあり得るな。

 この構図が一番しっくりくる。
 2週間前に、蓮が光命にプロポーズして、OKした。その波動みたいなものを受け取ったから、私は彼と結婚したいと考えたんだな。
(あとから聞けば、どんぴしゃりだった)

 潔癖症の蓮だ。私のことを想って、光命を好きになるなどという妥協はしないだろう。して欲しくもない。

 そうして、私は自分の気持ちを改めて認識するのだ。蓮のことを本当に好きなのだと。
 もし、これで嫉妬するような自分がいるのなら、別れるべきだ。それは、もう相手を愛してなどいないのだ。嫉妬は自分が一番になった時に出てくる感情だ。人を愛することは相手が一番の時だ。真逆なのだ。私はいつだって、嫉妬心が出た時は別れてきた。振り返れば、合っていた、正しい選択だった。

 本当に4人で好きになって、結婚。なんて素敵な出来事なのだろう。

 だがしかし、光命はどうして、私と結婚しようと思ったのかが疑問に残る。彼の理由はこうだった。

「あなたはいつでも一生懸命。どんなことからも逃げ出しませんでした、ずっと見ていましたよ」

 神でも降臨したみたいな、言葉だった。

 いろんなことがあった、14年間。
 決して平坦な道のりではなかった。
 だが、自分が好きでいた人はずっと見ていたのである。やはり、正直に生きるのが一番だ。
 
 やっと合点がいった。
 ずっと忘れられなかったのは、結婚する運命だったからなのだと。

 そうして、気づくと、BLもバイセクシャルも、いいではないか!
 性別に関係なく、人を愛する気持ちは尊いもので、素敵なことなのだから。
 みんなで思いあっていれば、何人でも結婚していいだろう。

 私の中から、つまらない普通という価値観は消え去ったのだ。

 こうして、バイセクシャル複数婚はこの日を境に発展を見せ、1年後の今日には、夫10人妻10人という大夫婦へとなるのだった――

 今日は新しくベッドを、デパートで購入してきたそうで、立体的に浮かんだ構造で、狭いスペースでも大人数で眠れるものらしい。子供と旦那の分。私の寝室へと運び込まれ、大量である。

 ベッドだらけで、どこかの宿舎ですか?

 みたいな光景である。

 それは置いておいて、明日は、結婚記念日という夜に、今日は旦那さん10人に囲まれて、妻はニヤケながら就寝するのである。

 幸せすぎる~~!
 
 2019年7月29日、月曜日――

 その日の就寝時。
 焉貴と孔明に、

「2人とも仲いいよね?」

 と、話しかけていると、部屋の入り口に廊下とまたがるように、月命が寝そべった。

 何で、あんな変なところにいるんだろう?
 何か見てる?

「やじろべえですか?」
「えぇ」
「どうしたんですか?」
「子供がデパートで買ってきてくれたんです」
「何でやじろべえなんでしょう?」
「女子に人気と書いてあったからだそうですよ」
「素敵ですね」

 そんなことを話していると、月命の背中を誰かが足で踏んだ。

「なぜ、僕を踏むんですか~?」

 明引呼の鼻で笑ったのが聞こえて、

「踏んで欲しかったんだろ?」
「うふふふっ」

 相変わらず自虐的だなぁ。だから、そこにいたのか!

 しかも、明引呼がしゃがみこんで、ラブラブでキスし始めたし......。何ですか! この自作自演みたいな誘い方は?

 まったくやってられない。

「ねえ? 焉貴さん、孔明さ――!」

 いつの間にか、2人もキスに夢中で、私は、

「光さ~ん! どこ行ったのかな? 光さ――‼︎」

 夕霧命とラブラブでキスしていた。

 ここも?

「蓮? ――!」

 張飛さんとラブラブ。

 あとの2人もラブラブだ......。

 妻1人残して、夫のペア5組が出来上がっていた。さすがバイセクシャルである。

 妻だけに、つま・・はじきである。

 妻にとっても結婚記念日だが、旦那たちにとってもそうなのである。自分たちの想いが遂げられる第一歩となった日。この日がなかったら、今はないのだ。

 ラブラブの旦那さんたちに囲まれ、妻は1人大人しく眠りにつくのであった――
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