【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子

文字の大きさ
17 / 30
三章

02

しおりを挟む
「――平原をゆく風が、精霊の歌声を一人の男に届ける。
 心地よい澄んだ声音が、男の心を奪い去っていく。
 声に誘われて森へ向かえば、木々の合間に光が躍る。
 光を追って湖に出ると、一際輝く光に目が奪われる。
 神々しいまでの輝きに膝を折り頭を垂れれば、光は一人の美しい女性となって姿を現した。
 女性がその白く輝く手を差し出すと、男は恭しくその手を取って、彼女を現世に導くように、ともに森の中を舞った。
 彼女が微笑めば光は消えて、美しい女性は男の妻となった。
 男が治める土地は豊かになり、広大な森が守られる限り幸せは続くのだった――」


 朗々と暗唱するアルベルトの声に耳を傾けながら、マリアーナは既視感を覚えた。
 昔、これをどこかで聞いたような気がする。

 記憶を探るうちに頭の中に音が流れてきた。

(森に迷ったときに聞こえたうただわ)

 細かな言葉の端々は異なるが、弦が鳴らす曲とともに聞こえてきた詩と同じだと気づく。
 同時に、やはり不思議な郷愁を感じる。

 無意識に隣を歩くアルベルトを見上げていると、視線に気づいたのか彼がこちらを振り返った。
 一対の深緑の目を見ていると、また既視感を覚える。

 彼を見つめながら、なぜだろうかと考え込んでいたマリアーナはつい足元が疎かになってしまった。
 地上に出ていた木の根に躓いてしまう。体が前へとかしいで膝が地面につきそうになった。

 だが、繋いでいたアルベルトの手がマリアーナの体を引き寄せる。受け止めるように伸ばされたもう一方の手が腰に回されたことで倒れずに済んだ。

 しかし代わりにアルベルトの胸に抱き寄せられることになり、マリアーナはまた胸が高鳴った。

「大丈夫か?」
「は、はい……失礼いたしました」

 顔を赤くさせながら離れようとするが、腰に回された腕の力強さに阻まれてしまう。

 ふいに感じるアルベルトの香りと触れるところから伝わってくる熱に、つい数日前の閨でのことを思い出しめまいを覚えてしまった。頭に血が上り過ぎたのかもしれない。

 さらには先ほど感じた既視感の正体がわかった気がする。
 だが――

(そんなはずない……あの時、湖で溺れるわたしを助けてくれたのがルーベンソン公爵だなんて、自分に都合のいいことがあるわけが、ない……)

 そうだったらいいのにと思う一方で、そうだった場合の喪失感をも同時に感じる。

 もし、あの時助けてくれたのがアルベルトであれば感謝を伝えることができるが、子を成せば婚約を解消してまた離れ離れになるのだ。

(……わたしはいつの間にかあの男の子に――いいえ、ルーベンソン公爵に想いを寄せていたのね)

 それを今ここで自覚してしまう自分は相当に鈍いのだと、今更ながらに気づくマリアーナだった。

 湖で助けてくれた男の子とアルベルトを混同していることがわかっていながらも、離れがたさを感じて彼の腕の中でじっと身をすくめてしまう。

 だが、ふと何気なく後方を見て我に返った。
 少し距離をとってついて来ていたフランが、こちらを見ないよう顔を背けている姿が目に入ったのだ。

 はしたないところを見られてしまったと思い、マリアーナは先ほどよりも強くアルベルトの体を押した。

「あ、あのっ、もう大丈夫です……」
「……ああ」

 今度はすんなりと解放されて、抱き留められた腕に支えられながら体を離す。
 真っ赤な顔を見られるのは恥ずかしいが、ずっと抱きしめられていてはいろんな意味で心臓がもたない。

 何となく互いに無言で再度歩き始めるが、話の途中だったことを思い出して今度はマリアーナから口火を切った。

「先ほどの詩ですが、以前、国境を越えて森に迷ったときに聞いた覚えがあります」
「――なぜそんなことに?」

 森に迷ったことを尋ねられたのだろう。
 マリアーナは国境の町で一時過ごしていたこと、その町で『フィーアンダの悪女』と呼ばれていたこと、それが原因で子供たちに追われて逃げたことを説明する。

「彼らから逃げるため森に入ってしまったんです。子供たちがどこまでも追ってくる気がして……。気が付いたら森の深くまで入り込み迷ってしまいました」

 何かの気配を感じて隣を見上げれば、アルベルトの横顔が強張っているように見えた。

(精霊姫のことを悪女と言われて怒っていらっしゃるのね……言葉を選ぶべきだったわ)

 自分の失態に内心で反省をしつつも話を続ける。

「夜も深く自分がどこに居るのかもわからず途方に暮れていたとき、どこかから音楽が聞こえてきて『助かった』と思いました。その音楽に合わせて先ほどの詩が歌われていたのを聞きました」

 話しながら脳裏に浮かぶのはやはり不思議な光が舞う光景だったが、マリアーナはそれを口にはしなかった。
 ただ湖へと視線を移し、森を彷徨ったその先で自分の身に起こったことを口にした。

「その途中、誤って湖に落ちてしまったのですが――わたしはこの湖を知ってるような気がします。そんなはずはないとわかってはいるのですが……」

 ここは国境からそれなりに離れている。子供が歩いて来れる距離ではない。
 それにここは森の深くで、人里から流れてくる歌声が届く距離とも思えない。

 きっと国境の近くにも湖はあったのだろう。その湖で自分は溺れたに違いない。そう内心でひとり納得する。
 ところが、アルベルトが空いた方の手を顎に当てて「いや……」と呟いた。

「精霊がきみをここまで連れて来たのかもしれない」
「――精霊が、ですか?」

 驚き、アルベルトを見上げたその時、周囲で鈴を転がすような楽しげな声が聞こえてきた。
 昔、森で光と戯れていたときに聞いた邪気のない澄んだ声音だった。

 思わず視線を辺りに彷徨さまよわせていると、不審に思ったのかアルベルトに視線で問われる。
 どうやら彼には聞こえていないらしい。

 困惑しながらもマリアーナは正直にそれを話した。するとまたアルベルトが思案気に呟く。

「――精霊か」

 マリアーナも話しながらそれを考えていたが、アルベルトの確信を持った返答にやはり驚いてしまう。

「“精霊姫”はその名の通り精霊に愛され、精霊の声を聞き、精霊の姿を見ることができる、と言われている。精霊が現れたときの光を我々も見ることはあるが、はっきりと姿を見ることはできないし声を聞くこともない」
「……」
「精霊は森を住処とし、天災や災害などを“精霊姫”を通して我々に伝えてくれる。ずっと昔から引き継がれた精霊と人との繋がりだった――」

 それがティペリッシュによって断ち切られる。
 だがそのティペリッシュ内で辛うじて繋がりは保たれていた。その証拠がマリアーナなのだ。

「精霊の声を聞くことができるなら、きみはやはり“精霊姫”の血を継いでいる」

 前方に視線を戻し塔を目指すアルベルトの横顔は、どこか嬉しそうでもあり誇らしげでもあった。
 “精霊姫”をフィーアンダへ取り戻すという悲願が達成できたことを喜んでいるのだろう。

 髪も瞳も“精霊姫”と同じで精霊の声も聞こえる。これで精霊の姿が見えて言葉か、もしくは意思の疎通ができればマリアーナは“精霊姫”と呼ばれるのかも知れない。

 しかし、そう簡単に自分が“精霊姫”として迎え入れられるとは思えない。
 脳裏をよぎるのは家庭教師の言葉や公爵家の使用人の冷たい視線だ。

(あれほど憎まれてるのなら、フィーアンダの方々はわたしを認めてはくださらないでしょうね)

 いつかフランが言っていたように高位貴族であれば尚更だろう。

(でも、わたしの子なら――“精霊姫”の血を継ぐ子ならきっと……)

 そっとアルベルトの横顔を盗み見る。

(ルーベンソン公爵との子であれば大事にしてもらえるはず。早く子を授かって、婚約を解消したらわたしはティペリッシュに……)

 ふとアルベルトと視線が合いそうになって、マリアーナは慌てて足元に視線を落とした。
 荒れた獣道に足を取られないようにと心配するふりをして、アルベルトを盗み見ていたことを知られないよう取り繕う。

(……ティペリッシュにわたしの居場所はあるのかしら)

 ティフマ城を離れる馬車のなかで同じようなことを考えたていたのを思い出す。
 だが、あの時には知らなかった“精霊姫”の真実を知ってしまった。

 平民には『フィーアンダの悪女』と言われて攻撃され、これまではそれが一番つらかったと思っていたが、今は逆にそれだけならまだ我慢できると思えた。

(ティペリッシュの貴族はきっと“精霊姫”を知っているはず)

 だからこそ平民のようなあからさまな排除はしない。その代わり同情を寄せることもなく、冷ややかなさげすみの目で見てくる。

 ティフマ城の使用人はマリアーナの勤勉さを知っているため受け入れてくれていたが、それでも貴族に近い者ほど態度は硬化していった。

 加えてエーリス第四王子の件で、マリアーナへの心証はさらに悪くなっているに違いない。
 真実がどうであれ身分が下のマリアーナがそのとがを負うことは必定だろう。
 適当な罪をでっち上げられ良くて軟禁、最悪死罪もあり得る。

 どう考えてもティペリッシュに自分の居場所はないように思えた。

(それでも、こんなわたしに良くしてくださってるルーベンソン公爵に、これ以上ご迷惑をおかけするわけには――)

「いいや、迷惑だなどと思ったことは一度もない」

 唐突なアルベルトの発言にマリアーナは彼を見上げ目をまたたいた。

(まるで心の声を聞き取ったかのような……)

 マリアーナの驚きが伝わったのか、アルベルトも困惑の表情でこちらを見返す。

「……今、わたしは何か口走りましたでしょうか」
「私に『これ以上迷惑をかけるわけには』と、口にしなかったか?」
「……いいえ、その……口に出しては……」

 マリアーナの返答にアルベルトは視線を彷徨わせて「精霊か」と呟く。
 それがまるで正解だとでも言うように、また周囲から楽しげな声が響いてくる。

 精霊はそんなこともできるのかと驚くも、遠くで奏でられた音楽が深い森の中で聞こえてきたのも精霊がやったのだろうと考えれば、それも不思議ではないように思えてくる。

 そう考える一方で、アルベルトの落ち着かない様子にもマリアーナは興味を引かれた。心なしか頬も若干赤く染まっているように見える。

「――私はきみのことを迷惑だなどと思ったことはない。出会ったばかりですぐには信じられないだろうが、伴侶とするからには幸せにしたいと思っている」

 アルベルトが立ち止まりマリアーナもそれにならう。
 気が付けばもう目の前に塔がそびえ立っていた。

「かつてのティペリッシュのように私はきみを攫った。だが、同じ過ちは犯さない。きみを大事にする。だから――私をもっと頼ってほしい」

 言葉の途中で彼はなにかを言いかけて飲み込んだ。
 それが何かはわからなかったが、マリアーナは微笑んでみせた。

「ありがとうございます、ルーベンソン公爵様」

 彼の言葉が嬉しかったのは事実だ。だから、心からの礼を伝えた。
 なのになぜかアルベルトの表情がわずかに歪む。
 どうしてそんな風につらそうな表情をするのかと、やはりマリアーナにはわからなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました

鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」 そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。 ――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで 「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」 と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。 むしろ彼女の目的はただ一つ。 面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。 そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの 「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。 ――のはずが。 純潔アピール(本人は無自覚)、 排他的な“管理”(本人は合理的判断)、 堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。 すべてが「戦略」に見えてしまい、 気づけば周囲は完全包囲。 逃げ道は一つずつ消滅していきます。 本人だけが最後まで言い張ります。 「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」 理屈で抗い、理屈で自滅し、 最終的に理屈ごと恋に敗北する―― 無自覚戦略無双ヒロインの、 白い結婚(予定)ラブコメディ。 婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。 最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。 -

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…

甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。 身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。 だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!? 利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。 周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる

花草青依
恋愛
"氷の令嬢"と揶揄されているイザベラは学園の卒業パーティで婚約者から婚約破棄を言い渡された。それを受け入れて帰ろうとした矢先、エドワード王太子からの求婚を受ける。エドワードに対して関心を持っていなかったイザベラだが、彼の恋人として振る舞ううちに、彼女は少しずつ変わっていく。 ■《夢見る乙女のメモリアルシリーズ》2作目  ■拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』と同じ世界の話ですが、続編ではないです。王道の恋愛物(のつもり) ■第17回恋愛小説大賞にエントリーしています ■画像は生成AI(ChatGPT)

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

処理中です...