公式 1×1=LOVE

Hiiho

文字の大きさ
22 / 54

手フェチ×リゾートバイト=ウィンウィン 2

しおりを挟む


音楽なのか騒音なのわからない音が大きく響く薄暗いフロア。
一際目を引くつばさの容姿は、ごちゃ混ぜにした石ころの中に紛れているビー玉みたいだ、と市太は思う。


  架がここにいたら、きっとつばさくんと同じくらい目立ってたんだろうな。絶対こんなとこ来ねーだろーけど。


「クラブさいっこー楽しー!   ってイーチ、どした?つまんない?」

フルーツビールが入った瓶を市太の前に差し出す つばさ。

「そんなことないよ。いつもこんな感じだし。つーか俺まだ酒飲めない」

「うっわ、相変わらずマッジメ!ちょっとくらいいいだろぉ?」

「いらないって。つばさくんが代わりに飲んでよ」

市太は無理矢理 唇に押し付けられた瓶を奪い、つばさの口に押し付け傾ける。

「ゔっ!ん~っ」

喉を動かしビールを流し込むが、つばさは全部を飲み込みきれず口の端から溢れさせる。

「ぷはぁっ、ちょ、強引に飲ますなよイチ!悪酔いしたらどうすんだって」

「もーだいぶ酔ってんでしょ。海でも客と飲んでたじゃん」

「あー、そうだった。可愛かったよな、あの子達。男が迎えに来るとか聞いてねぇっつーの!久々にアタリ食えると思ったのにさぁ」

肩からずり落ちたパーカーの袖で、口元から胸の方まで零れたビールを拭うつばさ。


  天使みたいな顔して、なんつーセリフ吐くんだか。


市太は半ば呆れ顔でつばさを見下ろす。



「ねー、男ふたりで来たの?一緒に飲まない?」

露出度の高い布切れのような服を着た女性二人組が、市太とつばさに声をかけてくる。

「いーよ、遊ぼー」

つばさは女性達の間に入り、両手で二人の肩を抱く。
並んだつばさと女性達を見て、市太は何だか可笑しくなった。


  両サイドの女よりつばさくんのが綺麗じゃん。笑える。


「あのさ、悪いけど俺らもう帰るから」

市太はそう言い捨ててつばさの首根っこを掴んでホールを出ようとする。

「おい!何だよ!女の子タイプじゃなかった? つかブスでも一晩くらい我慢しろよ」

「ブスって思ってんのにヤレんの?つばさくんの脳ミソはチンコでできてんのかよ」

つばさの貞操の緩さに益々呆れる市太。

「お前だっていつも遊んでんだろ。こーゆーのは、その場のノリじゃん。俺、雑食だし。どーしたよ、マジつまんねぇ事でもあった?」

つばさに言われて、市太の頭に浮かぶのは架と一玖の事。

「いつも一緒にいる女みてーな奴のこと、とか言うなよ?」

「・・・は? っ違うし」

鋭い指摘に表情管理ができず、市太は慌ててしまう。

「なに、図星かよ。あいつ、大学でも有名だもんな。アイドルみたいな顔してちょー目立ってんのに無愛想だし人寄せつけねーし。・・・つーかそゆこと?お前らデキてんの?」

「違うって言ってんだろ!そうだったらこんなに悩んでなんか・・・」

つばさと目が合い、市太は言葉を飲み込む。

「は、はは。いちの片想いかよ。なにお前、バイなの?」


  バイ・・・? 違う。俺が好きなのは架だけだ。


「適当に遊んでる女は、あいつの代わりかよ。俺のこと叱れねーじゃん。イチも相当なクズな」

つばさの言うことが当たり過ぎていて、市太は何も言い返せなくなる。

俯き黙る市太を見たつばさが、フッと鼻で笑う。


「イチさぁ、男同士でどうセックスするか知ってんの?」

なんでこんな話に・・・と思いながらも、どうせ言い逃れできないのならどうにでもなれ、と開き直り、つばさの問いかけに正直に答える。

「だいたいの想像はついてるけど・・・」

「まあ俺も知らねんだけど。実はさぁ、この前ヤッた女が風俗上がりでさ。前立腺とかめっちゃ弄られちゃって、俺」

「へー・・・」

「なんか俺、そういうのハマっちゃったかもしんないんだよね」


  だから何だよ。


「男同士ってケツ使うんじゃん? あいつの練習台に、俺使ってみない?」

「は!? ちょっと待って。それって、つばさくんのケツ弄れってこと!?」

「さすがイチ。察しがいいな」

ぐっと距離を詰めて来るつばさからアルコールの匂いがして、いつもよりふわふわとした雰囲気が漂っている。

「つばさくん飲みすぎっすよ。今日はもう民宿帰ろ・・・」

「お前が飲ませたんだろぉ。ついでに女の子もお前のせいで逃したんだぞ!責任取って俺に付き合えよぉ」

市太はつばさの腕を掴んで連れて帰ろうとしたが、彼は駄々っ子のようにその場から動こうとしない。



膝を抱えて座り込んでしまったつばさに市太が困り果てていると

「なになに、痴話ゲンカ? わっ、この子めっちゃ美人~。マジ男?彼氏の代わりに俺らが遊んであげよっか~?」

市太を尻目に数人の男達がつばさを囲む。

「え・・・」

つばさから助けを求めるような視線を送られるが、見て見ぬふりをする市太。

「まーいっかぁ、この際なんでも・・・」

フラつきながら立ち上がったつばさの肩と腰を二人の男が支える。


  ・・・あー、もう!何やってんだよバカ!男らしく断れよ!


見るに見兼ねた市太がつばさの肩からだらしなく落ちかけているパーカーを、後ろからぐっと引っ張る。

「この人 俺のなんで、返してもらいます」

つばさの手を握り、足早に店の外へ出て走り出す市太。


「ちょっ、イチっ!?  早・・・、俺酔ってっから・・・、はぁ、はぁっ」

もうダメ、と地面に膝を着くつばさ。

「はあ~、何なんだよ。お前のせいで誰ともヤれねーじゃ・・・」

「あんな知らねー輩にマワされでもしたらどーすんだよ!男とはヤッたことねーんだろ!?」

緩すぎる貞操のつばさに、市太は腹が立ってくる。


  顔も手もこんなに綺麗なのに、どこの誰かもわかんねぇ奴らに汚されても平気なのかよ!


「だったらイチがヤッてくれよ。俺が知らない輩にマワされるよか、よっぽどマシだろ?」

肩から落ちたパーカーを引き上げるつばさの仕草が官能的に見え、市太は小さく息を飲んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...