待ってました婚約破棄

きんのたまご

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まず何をするべきなんだろうか…。
人に嫌われようなんて考えた事も無いので分からない。
でも、改めてこうして王子の事を考えるとわざわざ私が嫌われようと頑張らなくても良いのかもしれないという思いも浮かび上がる…だってそもそも王子は私の事を好きな訳では無いのだから。
まあそれでもこのままこの状態でいたらいずれはあの王子と夫婦にならなければいけない事も確かで…裏で自分の事をあんな風に言っている二重人格を疑うレベルの外面の良いあの王子の隣に立つなんて想像でも鳥肌がたつ。




王妃教育で登城した。
今までの私を知っている皆が私の外見の変わりように驚いていた。
「あら、どうしたの。すっかりイメージが変わったわね」
会って真っ先に王妃様にそう言われる。
「私はいずれこの国を支えていかなければいけません。いつまでも幼子のようにあのような子供っぽい格好もしていられないと思いまして…やはり似合わないでしょうか?」
将来この国を支えていくつもりなど更々無いが王妃教育を熱心にして下さっている王妃様にそんな事を言えるはずも無い。
「…いいえ、とても似合っているわ。美しいわよ。それにしても中身は中々変わらないわね。最後の一言は余計よ」
そう言って王妃様は私の額をちょんとつついた。
王妃様はとても良い方、それは王子の婚約者になる前から分かっていた。そして王妃教育が始まってからますます王妃様が良い方だと知る。
勿論王妃教育は生半可なものでは無く王妃様もとても厳しく教えて下さる。それでもこれは先々私が要らぬ苦労をしなくていいようにと敢えて厳しく教えて下さっているのが分かる……。
本当になんの憂いも無く王妃様の義娘になりたかったわ。
でも、ごめんなさい王妃様。私はどうしても貴女の息子と結婚するのは無理そうです。
とてもとても重い罪悪感を笑顔で隠しその日の王妃教育も滞りなく終えた。
「ねぇ、たまにはあの子に会って帰ったら?」
私から王子に会わないのは城の誰もが知っていた。
「変わった貴女を見たらびっくりするわよ」
そう言って笑う王妃様……。きっと仲良く見えない私達を心配して下さってるんだろう。
「分かりました、ご迷惑で無いようならばお目にかかろうかと思います」
じゃあ!と言って王妃様は早速お付の侍女さんに王子の元に向かうように言った。
…心の中でどんな理由でもいいから私と会うのを断って欲しいと祈っていたのは言うまでもない。



お茶の味なんて分からないわ。
目の前に座る王子の顔をチラリと見る。
するとそれに気付いた王子がこちらに笑いかけた。
ゾワリと背中が粟立つ…。この人は何故私に笑顔を向けられるのだろうか…。

結局この日はせめてもの抵抗のつもりで毅然と背筋を伸ばして座っている事しか出来なかった。

そして耳が良くタイミングの悪い私はまた聞いてしまう。
「チッやはりつまらない奴だ」
と王子が呟いたのを。
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