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「まさか・・・測定が間違っていた・・・」
「・・・それは私には分かりませんが・・・元々光魔法は稀有な力・・・分からない事の方が多いのだと思います」
「・・・そうだな」
その場に重苦しい沈黙が落ちる。
口を開くのもはばかられるが肝心な事を聞かなければならない。
「殿下の事は・・・どうなさるおつもりですか・・・」
そう、これが1番の気がかりだった。
「さっきはまだだと言ってはいたが・・・居場所は掴んでいる。流石に我々も見張りは付けていた」
「!じゃあすぐにでも助けられるんですね!良かった」
「そうしたいのはやまやまだが・・・相手の力がはっきりと分からないうちは迂闊に手出しが出来ないのだ・・・」
「そんな!」
「大丈夫だ、こちらも魔術使いを手配している。もう暫く待っていてくれるか」
「・・・はい」




あんな事があったのが夢のよう。
殿下とティアラさんが居ないことを誰も疑問に思わない・・・これもティアラさんの魔法なのかしら。
そんな事を考えながら教室に入る。
「エミリア!」
「シェイラ!」
2人どちらからとも無く駆け寄る。
「信じられないわ・・・」
「ええ、そうね・・・」
やっぱりあの事はシェイラも信じられないようだ。
「これからどうなるのかしら・・・」
シェイラがとても不安そうにそう言う。
「大丈夫・・・きっと大丈夫」
「エミリア・・・ごめんね。殿下がいなくなって貴女の方がよっぽど不安なはずなのに・・・」
「いいえ、大丈夫。きっと殿下は無事に帰って来ます」
「・・・そうね」
そう言って二人で手を取り合った。



「ふふっルシード。貴方も行きたいでしょう?エミリアが待っているあの学園に。私も行きたいのよ、だってまだまだやらないといけないことが残っているの。私と貴方が結ばれるためには必要な事なのよ」
ティアラはそう言ってルシードの髪を撫でる。
ルシードは糸の切れたマリオネットのように椅子に体を預け座っている。
感情の感じない暗い瞳には卑しく笑うティアラが映っている。
「愛しているわルシード」
ティアラはルシードに口付ける。
〝愚かな娘・・・本当にこの世界が貴女の物だと思っているの。ふふっふふふふふあはははは 。今だけのいい夢を・・・〟



「殿下!」
翌日、学園に行くとティアラさんと殿下が学園に来ていた。
私は婚約破棄を言われた事も忘れ殿下に駆け寄る。
「殿下!ご無事だったんですね!」
そう言った私を殿下は一瞥しただけで何も言わずどこかを見ている。
殿下の見つめる先には・・・ティアラさん。
私に気付いたティアラさんがこちらに向かって歩いて来る。
「あら、エミリア様・・・相変わらずルシードにまとわりついているんですか?」
まとわりつくって・・・。
「殿下の婚約者は私です」
こんな事、はっきり言ったのは初めてかもしれない。
「・・・・・・」
私の言葉を聞いてティアラさんは何も言わない・・・唯冷たい瞳で私を見ていた。
「ティアラさんこそ・・・殿下を返して下さい」
そう言った私にティアラさんは薄く微笑んだ。
「ふっ、返して・・・ねぇ・・・。人の心変わりなんて誰にもどうにも出来ないんじゃないかしら?」
「本当の心変わりならば私は潔く身を引きます・・・でも、これはそうじゃない!あなた魔法のせいでしょう」
「何言ってるの?魔法だなんて・・・。よっぽどショックだったのかしら?ルシードが私に心変わりした事が。だから魔法のせいだなんて言い出したのね・・・可哀想に・・・ふふふ」
「違うわ!殿下がこうなってしまったのは貴女のせいよ。早く殿下を返して!」
私はティアラさんに詰め寄る。
「やだぁ、怖い」
そう言ってルシード殿下に擦り寄る。
「・・・行こうティアラ」
殿下はそう言ってティアラさんの肩を抱く。
「そうね、行きましょ・・・じゃあねエミリア様」
そう言うと二人は学園の外へと向かって歩き出す。
「待って!」
私は二人の後を追う。そんな私の前にお兄様が現れる。
「エミリア追ってはダメだ」
「何故ですか!」
「危険すぎる」
「でも!」
「大丈夫!王家の者達が追ってくれるよ」
そう言ってお兄様は私の肩を抱き背中を撫でる。
「お兄様・・・」
「・・・大丈夫、それよりもエミリア・・・気を付けるんだ。1度消えてまた戻って来たことには何か目的があると思う。多分それはエミリア・・・お前に関係ある事だよ」
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