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「今まで辛い思いをさせたね」
今は晩餐の席。お義父様、お義母様、私。
夫はいない。勿論声はかけたが私と一緒に食事など出来ないと執事に言ったそう。
「あの馬鹿息子には君に謝りに行くように行ったのだが」
気遣うようにお義父様が仰る。
「ええ、お部屋の方にいらっしゃいましたわ」
謝りには来てないけどね。
・・・それにしても馬鹿な男。こんな席でくらい反省しましたって態度でいればご両親も許して下さるかもしれないのに。
何でも馬鹿正直に言えばいいと言うものでは無い。
「さて、旦那様はお加減が優れないようですのでお食事頂きましょう」
私が笑顔でそう言うと晩餐が始まった。
はぁ、今日のメニューもどれも美味しかった。食後のお茶を飲んでいるとお義母様が声を掛けてくる。
「ちょっとお話させて貰ってもいいかしら?」
「はい」
そして私はお義母様と2人でソファーへと移動する。
「貴方には可哀想な事をしてしまったわね」
そう言ってお義母様は私の頬に手を添える。
「いえ、先程も申しました通り。気にしておりませんわ」
「・・・あの子に恋人がいる事は私も主人も知っていたの。でも、お相手は到底私達が賛成出来るような方ではなくてね・・・」
ええ、そうでしょうね。
「お付き合いだけならば私達も黙っていたのだけれど・・・とうとう彼女と結婚したいなんて言い出して・・・身分的にもそんな事は無理だったから無理矢理別れさせて早く結婚してくれるように、主人には息子が結婚したら家督を譲ると言って貰ったの」
なるほど・・・でもあの男は彼女と別れていなかったわけね。
「今思えばそれが間違いだったのね。そのせいで貴方には辛い思いをさせてしまったわ」
「・・・あの方も1人息子の自分が家を継がないといけないと言っていました、自分の立場はしっかりと分かっていらっしゃったと思いますよ。それでも今こうなのはご自分のせいとしか言いようがありません。分かっていてやっているのですからお義母様達のせいではありません」
私はお義母様の手を握り微笑む。
「本当に貴方の何処が気に入らないのかしら・・・」
そう言ってお義母様は苦笑いした。
「本当に!私のような女と結婚出来て感謝して欲しいくらいですわ」
と私がふざけたように言うと2人顔を見合わせて笑いあった。
翌日、ご両親がお帰りになられる。
私は夫と並んでお見送りする。
夫には親の前でくらい我慢しろ、少しは賢くなりなさいと言っておいた。
渋々が透けて見えるがこの場に出て来ただけでもマシだろう。マシなハードルが大分下がって来た。大暴落。
「お義父様、お義母様来て頂きありがとうございます。とても楽しかったですまた起こし下さい」
「・・・次は貴方がこちらに遊びに来て頂戴。なんなら1人でもいいわ」
お義母様はおどけたようにそう言った。
「お前の事はこれからの行動で判断する」
「・・・分かりました」
お義父様と夫の間には不穏な空気が流れる。
「大丈夫ですわ、お義父様。わたくしがしっかり見ていますわ」
夫が嫌がっているのを知ってわざと夫に寄り添う。ふふふ、嫌がってるわ。
「よく出来た嫁だ、大事にしなさい」
「・・・はい・・・」
ははは、あの返事!よっぽど嫌なのね。
あー可笑しい。
お義父様とお義母様が乗った馬車が遠くなる。私は見えなくなるまでその場で見送る。
「ふん!媚びる為に必死だな!」
さっさと屋敷の中に入った夫はもう彼女の所に向かうらしい。
これからの行動を見ると言われて早速か・・・バカにも程があるでしょ。
私は夫が持つ鞄を見る。
「その鞄の中身」
「お前には関係無い!」
「・・・その中身がお金ならば・・・関係ないとは言えません」
「何だと?」
私は執事にある物を持って来させる。
「これは昨夜お義父様からお預かりしたものです」
これは屋敷の事だけでなく侯爵家の事等(お金を含む)も妻である私に許可なく行ってはならないという夫に対するお義父様からの命令書。
即ち彼女さんに渡すお金も私の許可を取らなければ持ち出せないと言う事。
「何だと!こんな事が許されるものか!」
そう言って夫は結婚契約書をそうしたようにその紙も破いた。
「無駄ですよ、写ですから。この言葉昨日も言ったはずですけれど・・・学習能力がおありで無い?」
私のその言葉に夫は私に向かい手を上げようとした。
その手を執事が掴む。
「離せ!」
執事に向かいそう言って喚いている夫に向かい私は言う。
「これからは貴方がいつ何処へ行き、いついくら使い、いつ私に手を上げようとしたか・・・全て記録させていただきますわ」
「何だと!」
「貴方のお義父様からも報告するように言われていますし」
「っ!」
「では、早速鞄の中身改めてさせて下さいませね」
私がそう言うと夫は執事の手を振り切り走って屋敷の敷地外へと逃げて行った。
あらら、無様な事ね。逃げた夫の背を冷めた目で見つめる。
「さて、お2人もお帰りになられた事だし少し部屋でゆっくりするわ」
執事にそう言うと私は屋敷の中に向かって歩き出した。
さて、あの馬鹿な男がこれからどんな態度に出てくるか・・・楽しみだわ。
今は晩餐の席。お義父様、お義母様、私。
夫はいない。勿論声はかけたが私と一緒に食事など出来ないと執事に言ったそう。
「あの馬鹿息子には君に謝りに行くように行ったのだが」
気遣うようにお義父様が仰る。
「ええ、お部屋の方にいらっしゃいましたわ」
謝りには来てないけどね。
・・・それにしても馬鹿な男。こんな席でくらい反省しましたって態度でいればご両親も許して下さるかもしれないのに。
何でも馬鹿正直に言えばいいと言うものでは無い。
「さて、旦那様はお加減が優れないようですのでお食事頂きましょう」
私が笑顔でそう言うと晩餐が始まった。
はぁ、今日のメニューもどれも美味しかった。食後のお茶を飲んでいるとお義母様が声を掛けてくる。
「ちょっとお話させて貰ってもいいかしら?」
「はい」
そして私はお義母様と2人でソファーへと移動する。
「貴方には可哀想な事をしてしまったわね」
そう言ってお義母様は私の頬に手を添える。
「いえ、先程も申しました通り。気にしておりませんわ」
「・・・あの子に恋人がいる事は私も主人も知っていたの。でも、お相手は到底私達が賛成出来るような方ではなくてね・・・」
ええ、そうでしょうね。
「お付き合いだけならば私達も黙っていたのだけれど・・・とうとう彼女と結婚したいなんて言い出して・・・身分的にもそんな事は無理だったから無理矢理別れさせて早く結婚してくれるように、主人には息子が結婚したら家督を譲ると言って貰ったの」
なるほど・・・でもあの男は彼女と別れていなかったわけね。
「今思えばそれが間違いだったのね。そのせいで貴方には辛い思いをさせてしまったわ」
「・・・あの方も1人息子の自分が家を継がないといけないと言っていました、自分の立場はしっかりと分かっていらっしゃったと思いますよ。それでも今こうなのはご自分のせいとしか言いようがありません。分かっていてやっているのですからお義母様達のせいではありません」
私はお義母様の手を握り微笑む。
「本当に貴方の何処が気に入らないのかしら・・・」
そう言ってお義母様は苦笑いした。
「本当に!私のような女と結婚出来て感謝して欲しいくらいですわ」
と私がふざけたように言うと2人顔を見合わせて笑いあった。
翌日、ご両親がお帰りになられる。
私は夫と並んでお見送りする。
夫には親の前でくらい我慢しろ、少しは賢くなりなさいと言っておいた。
渋々が透けて見えるがこの場に出て来ただけでもマシだろう。マシなハードルが大分下がって来た。大暴落。
「お義父様、お義母様来て頂きありがとうございます。とても楽しかったですまた起こし下さい」
「・・・次は貴方がこちらに遊びに来て頂戴。なんなら1人でもいいわ」
お義母様はおどけたようにそう言った。
「お前の事はこれからの行動で判断する」
「・・・分かりました」
お義父様と夫の間には不穏な空気が流れる。
「大丈夫ですわ、お義父様。わたくしがしっかり見ていますわ」
夫が嫌がっているのを知ってわざと夫に寄り添う。ふふふ、嫌がってるわ。
「よく出来た嫁だ、大事にしなさい」
「・・・はい・・・」
ははは、あの返事!よっぽど嫌なのね。
あー可笑しい。
お義父様とお義母様が乗った馬車が遠くなる。私は見えなくなるまでその場で見送る。
「ふん!媚びる為に必死だな!」
さっさと屋敷の中に入った夫はもう彼女の所に向かうらしい。
これからの行動を見ると言われて早速か・・・バカにも程があるでしょ。
私は夫が持つ鞄を見る。
「その鞄の中身」
「お前には関係無い!」
「・・・その中身がお金ならば・・・関係ないとは言えません」
「何だと?」
私は執事にある物を持って来させる。
「これは昨夜お義父様からお預かりしたものです」
これは屋敷の事だけでなく侯爵家の事等(お金を含む)も妻である私に許可なく行ってはならないという夫に対するお義父様からの命令書。
即ち彼女さんに渡すお金も私の許可を取らなければ持ち出せないと言う事。
「何だと!こんな事が許されるものか!」
そう言って夫は結婚契約書をそうしたようにその紙も破いた。
「無駄ですよ、写ですから。この言葉昨日も言ったはずですけれど・・・学習能力がおありで無い?」
私のその言葉に夫は私に向かい手を上げようとした。
その手を執事が掴む。
「離せ!」
執事に向かいそう言って喚いている夫に向かい私は言う。
「これからは貴方がいつ何処へ行き、いついくら使い、いつ私に手を上げようとしたか・・・全て記録させていただきますわ」
「何だと!」
「貴方のお義父様からも報告するように言われていますし」
「っ!」
「では、早速鞄の中身改めてさせて下さいませね」
私がそう言うと夫は執事の手を振り切り走って屋敷の敷地外へと逃げて行った。
あらら、無様な事ね。逃げた夫の背を冷めた目で見つめる。
「さて、お2人もお帰りになられた事だし少し部屋でゆっくりするわ」
執事にそう言うと私は屋敷の中に向かって歩き出した。
さて、あの馬鹿な男がこれからどんな態度に出てくるか・・・楽しみだわ。
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