契約結婚を申し込んできた夫にちっちゃく復讐しようと思う

きんのたまご

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今日は夫とキャスリーンが子供を連れて帰って来る。
気付けば既に私と夫が結婚してから3年以上が経過していた。
この3年で夫婦として過ごした事が1度も無いと言う事実に笑いが込み上げる。
「まさに、偽装夫婦ね」
部屋の中で1人呟く。
コンコン、コンコン
あら?誰かしら?
「どうぞ」
すると扉を開けて入って来たのは弟だった。
「どうしたの?」
?どうしたのかしら?いつもと違ってちょっと怖い顔。
私は弟の頬をそっと撫でる。するとその手を弟に取られた。
「姉さん、知っているんでしょ?」
「何を?」
「誤魔化さないで!俺が本当の弟では無い事だよ」
「・・・貴方も知っていたの?」
そう聞いた私に弟は頷いた。
「たとえそうだとしても貴方の事は本当の弟だと思っているわ」
そう言って今弟に握られているのとは逆の手で頭を撫でようとするとそちらの手も取られてしまった。
私は困ったように微笑む。
「俺はもう弟では嫌なんだ!好きだった姉さん、ずっと!」
そして私は弟に抱きしめられた。
「ありがとう」
私は弟の背をトントン叩いた。小さな子供をあやすように。
「姉さん!もう、俺の物になってよ」
・・・薄々弟の気持ちには気付いていた。でも、家族としての気持ちなのか異性に対するそれなのか図りかねていた。
「姉さん!」
縋り付くように抱きしめてくる弟。
ごめんなさいね。私は心の中で謝る。
「やめて、私はまだあの男の妻なの」
私がそう言うと弟ははっとしたように私から離れた。
「ごめん・・・」
俯いて謝る弟に手を伸ばしかけて・・・やめた。
いつまでも子供扱いは駄目ね。
「ありがとう。貴方の気持ちは嬉しいわ、でも」
そこで弟が私の口元に手を当てる。
「その先はまだ待って」
耳元で囁かれて思わずゾクッとする。
耳を押さえ弟の顔を見るとイタズラが成功した子供のように笑っていた。
もう、しょうがないわね。私は少し赤くなっているであろう顔を隠すように弟に背を向けた。
「さて、姉さん。そろそろ厄介な旦那様の所に向かおうか」
そう言って差し出してきた弟の腕に自分の腕を絡め夫が待つ応接室へと二人で向かった。



「お待たせ致しました」
応接室に入ると両家の親と夫とキャスリーンそして夫の腕の中には赤ちゃん。
私の姿を見た途端夫の腕の中の赤ちゃんをキャスリーンが無理矢理奪い私の元へ駆け寄って来る。
私の前に立ちはだかる弟。
「邪魔よ退きなさいよ!」
弟は無言で私の前に立ったまま動かない。そんな弟の腕を後ろからそっと叩く。
「大丈夫よ」
私を庇ってくれている弟の横を通りキャスリーンの前に立つ。
「お久しぶりね、キャスリーンさん」
そう言った私にキャスリーンは無邪気な笑顔を向ける。

「見て!私の赤ちゃん。ほら!侯爵様にそっくりでしょう?」
・・・・・・これは・・・・・・・・・。
「・・・・・・ええ、そうね」
その腕の中にいた子供は黒髪に緑の目の夫とは似ても似つかない金髪に青い目の子供だった。
嬉しそうに子供を抱くキャスリーンから夫に視線を移す。
「・・・・・・子供を産んだ直後からこうなった。明らかに私の子供では無いだろう子供を・・・私の子供だと信じているようだ」
「そう・・・」
産まれて来た子が夫に似ていなかったせいでどうやら気が触れてしまったらしい、でも・・・可哀想とは言わないわ。酷なようだけど自業自得よ。
「キャスリーンさんと赤ちゃんを別の部屋へ」
私は執事にそう言いつける。
「かしこまりました。さぁキャスリーン様こちらへどうぞ」
「うふふ、これで私がこの侯爵家の女主人よ!」
そう言いながらキャスリーンは部屋を出て行った。
私はそれを見届けて夫の方へ向き直る。
「さて、これからの事を話し合いましょうか」
私がそう言ったのと同時にお義父様が夫を殴り飛ばしていた。
「この大馬鹿者が!」
お義父様の怒号が響き渡った。
この場に赤ちゃんがいなくて本当に良かった。
「父上何を・・・!」
殴られた頬を押さえながら夫は信じられないと言う顔でお義父様を見上げている。
・・・いや、むしろ何で殴られないと思ったのだろうか。不思議だ。
「もうお前の父ではない!正式にお前は侯爵家から勘当した!」
「なっ・・・では、この侯爵家はどうするんですか!」
「侯爵家は昨日お前の妻の弟の物になった。・・・これは確かお前が言い出した事だったはずだが?」
「まさか・・・そんな・・・」
夫が私の方を見る。
1年前、キャスリーンがこの屋敷に来た時は少しでも反省しているかと思ったのだけれど・・・やっぱりクズだったわね。
「お、俺は悪くない!全て全てあの女が!あの女が悪いんだ!!」

そう言いながら夫は私に向かって襲い掛かって来た。
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