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「さて、旦那様・・・いいえ、元、旦那様とお呼びした方がいいかしら?」
そう言って私は未だ弟に手を踏まれたままの元夫に目を向ける。
「いや、いや・・・私はまだ・・・離縁しては・・・」
私は無言で首を振る。
「た、頼む・・・わ、私もあの女に騙されていたんだ!誰の子かもわからぬ子を・・・私の子供だと・・・」
「それは自業自得ですわ。わたくしと婚約した後貴方は本当は彼女と結婚したかったと仰っていたではありませんか・・・何を捨てても一緒に居たいと・・・ね?」
「ちが!違うんだ!あの時は!あの時はまさかこんな女だとは気付かずに!」
「だから何だと仰るのです?わたくしはここに来るまでに何度も彼女がこうだと気付くチャンスを与えたつもりですけれど?」
「ゆ、許してくれ・・・アイリス・・・」
婚約者として再会して、結婚して夫婦になり初めて名前を呼びましたね。
「わたくしの名前ご存知だったんですね」
「!も、勿論だ!アイリス!頼むもう一度私とやり直して欲しい!」
元夫は私に縋り付いてくる。弟はそんな元夫の背中を踏み付け、私はそんな元夫を無表情に
見下ろしていた。
「グリード様」
私が元夫の名前を呼ぶと元夫はハッとしたように顔を上げた。
ここは敢えて名前で呼ばせて頂きますわ。
だって私達は・・・もう他人ですものね。
私は微笑み元夫の傍に膝を付く。
「願いが叶ったではありませんか。これで一切何のしがらみも無く思う存分彼女を追いかける事が出来ますわ。では御機嫌よう、もう二度と貴方とお会いする事は無いでしょう」
そう言って私は立ち上がり皆がいるその部屋を後にした。
「奥様、お疲れ様でございました」
嫁いで来た時から良くしてくれた執事とメイド頭がそこにいた。
「ふふ、もう奥様ではないわよ」
「そうでございましたね、奥様」
あらあら。
そんな二人に私は困ったように微笑んだ。
そのまま2階の自分の部屋へと向かう。
そこにはキャスリーンが産んだ赤ちゃんがスヤスヤと眠っていた。
そっと顔を覗くと人の気配を感じたのかモゾっと少し動いた。
「可愛い子」
私はその小さい頭をそっと撫でた。
広い庭に元気に走り回る子供達の声が聞こえる。
「そんなに走っては危ないわよ!」
私がそう言った途端に1人の子が転けた。
「ほらほら、だから言ったじゃないの」
その子を立たせて土を払う。ちょっと泣きそうだったその子は私が怪我は無いわと言うと嬉しそうに走って他の子供達の所へ向かった。
「アイリス!」
私を呼ぶ声が聞こえる。振り返るとそこには弟がいた。
「アルフ!」
私はアルフに駆け寄る。
「仕事は大丈夫なの?こんなにしょっちゅうここへ来て・・・」
「ここに来るのも仕事の1つだよ、だってここは侯爵家が世話している孤児院なんだから」
そう言ってアルフは子供達を見た。
ここは孤児院の応接室。私とアルフは向かい合ってお茶を飲む。
「で?いつまでここにいるつもりなの?」
上目遣いに見上げてくるアルフ。
これは確信犯ね。・・・そんな可愛い顔しても駄目よ。
「私はずっとこの孤児院にいるわ」
ここは私が侯爵家の嫁であった間に私が設立した孤児院。
領地経営の1つとしてやり始めたのだが、もう1つの目的としては侯爵家を出た後の私の行き場である。
流石に夫と離縁した後も侯爵家にお世話になる訳にはいかないものね。と言ってもここも侯爵家の一部なんだけど。
「もう、あれから5年だよ?」
そう、早いものであれから5年もの月日が流れていた。慣れない生活で月日はあっという間に流れていた。
元夫とキャスリーンのその後は分からない。正直興味も無い。ただあちこちで男を騙し金を奪う女がいると噂になっているのを聞いた事があるので案外元気にやっているのかもしれない・・・ある意味。
「貴方も早く結婚なさい、子供は可愛いわよ」
「結婚はアイリスとする」
あれからアルフからは猛アプローチされている。
・・・弟としか思えないとハッキリ断ったのにも関わらず・・・。
もう何度したか分からないこのやり取りに今日もため息を付く。最近こればっかりだわ。
・・・そうだ!
「よし!こうなったら期限を決めましょう!」
私はいい事を思い付いたと言わんばかりにそう提案する。
「期限?」
「そう、貴方もそろそろ真剣に結婚とか跡取りの事とか考えなくてはいけないのだし・・・そうね、あと2年!この間に私をその気にさせてくれたら貴方と結婚するわ!でも私がその気にならなければ貴方は潔く諦る!・・・どう?」
「・・・それは契約?」
「え?・・・ええ、そうね・・・」
私がそう言うと弟は不敵に笑った。
「今まで手加減してたけどこれからは遠慮なくいくから」
そう言った弟の顔を見て・・・早まったかもと思ってしまった。
皆さん契約事は慎重に!
[完]
そう言って私は未だ弟に手を踏まれたままの元夫に目を向ける。
「いや、いや・・・私はまだ・・・離縁しては・・・」
私は無言で首を振る。
「た、頼む・・・わ、私もあの女に騙されていたんだ!誰の子かもわからぬ子を・・・私の子供だと・・・」
「それは自業自得ですわ。わたくしと婚約した後貴方は本当は彼女と結婚したかったと仰っていたではありませんか・・・何を捨てても一緒に居たいと・・・ね?」
「ちが!違うんだ!あの時は!あの時はまさかこんな女だとは気付かずに!」
「だから何だと仰るのです?わたくしはここに来るまでに何度も彼女がこうだと気付くチャンスを与えたつもりですけれど?」
「ゆ、許してくれ・・・アイリス・・・」
婚約者として再会して、結婚して夫婦になり初めて名前を呼びましたね。
「わたくしの名前ご存知だったんですね」
「!も、勿論だ!アイリス!頼むもう一度私とやり直して欲しい!」
元夫は私に縋り付いてくる。弟はそんな元夫の背中を踏み付け、私はそんな元夫を無表情に
見下ろしていた。
「グリード様」
私が元夫の名前を呼ぶと元夫はハッとしたように顔を上げた。
ここは敢えて名前で呼ばせて頂きますわ。
だって私達は・・・もう他人ですものね。
私は微笑み元夫の傍に膝を付く。
「願いが叶ったではありませんか。これで一切何のしがらみも無く思う存分彼女を追いかける事が出来ますわ。では御機嫌よう、もう二度と貴方とお会いする事は無いでしょう」
そう言って私は立ち上がり皆がいるその部屋を後にした。
「奥様、お疲れ様でございました」
嫁いで来た時から良くしてくれた執事とメイド頭がそこにいた。
「ふふ、もう奥様ではないわよ」
「そうでございましたね、奥様」
あらあら。
そんな二人に私は困ったように微笑んだ。
そのまま2階の自分の部屋へと向かう。
そこにはキャスリーンが産んだ赤ちゃんがスヤスヤと眠っていた。
そっと顔を覗くと人の気配を感じたのかモゾっと少し動いた。
「可愛い子」
私はその小さい頭をそっと撫でた。
広い庭に元気に走り回る子供達の声が聞こえる。
「そんなに走っては危ないわよ!」
私がそう言った途端に1人の子が転けた。
「ほらほら、だから言ったじゃないの」
その子を立たせて土を払う。ちょっと泣きそうだったその子は私が怪我は無いわと言うと嬉しそうに走って他の子供達の所へ向かった。
「アイリス!」
私を呼ぶ声が聞こえる。振り返るとそこには弟がいた。
「アルフ!」
私はアルフに駆け寄る。
「仕事は大丈夫なの?こんなにしょっちゅうここへ来て・・・」
「ここに来るのも仕事の1つだよ、だってここは侯爵家が世話している孤児院なんだから」
そう言ってアルフは子供達を見た。
ここは孤児院の応接室。私とアルフは向かい合ってお茶を飲む。
「で?いつまでここにいるつもりなの?」
上目遣いに見上げてくるアルフ。
これは確信犯ね。・・・そんな可愛い顔しても駄目よ。
「私はずっとこの孤児院にいるわ」
ここは私が侯爵家の嫁であった間に私が設立した孤児院。
領地経営の1つとしてやり始めたのだが、もう1つの目的としては侯爵家を出た後の私の行き場である。
流石に夫と離縁した後も侯爵家にお世話になる訳にはいかないものね。と言ってもここも侯爵家の一部なんだけど。
「もう、あれから5年だよ?」
そう、早いものであれから5年もの月日が流れていた。慣れない生活で月日はあっという間に流れていた。
元夫とキャスリーンのその後は分からない。正直興味も無い。ただあちこちで男を騙し金を奪う女がいると噂になっているのを聞いた事があるので案外元気にやっているのかもしれない・・・ある意味。
「貴方も早く結婚なさい、子供は可愛いわよ」
「結婚はアイリスとする」
あれからアルフからは猛アプローチされている。
・・・弟としか思えないとハッキリ断ったのにも関わらず・・・。
もう何度したか分からないこのやり取りに今日もため息を付く。最近こればっかりだわ。
・・・そうだ!
「よし!こうなったら期限を決めましょう!」
私はいい事を思い付いたと言わんばかりにそう提案する。
「期限?」
「そう、貴方もそろそろ真剣に結婚とか跡取りの事とか考えなくてはいけないのだし・・・そうね、あと2年!この間に私をその気にさせてくれたら貴方と結婚するわ!でも私がその気にならなければ貴方は潔く諦る!・・・どう?」
「・・・それは契約?」
「え?・・・ええ、そうね・・・」
私がそう言うと弟は不敵に笑った。
「今まで手加減してたけどこれからは遠慮なくいくから」
そう言った弟の顔を見て・・・早まったかもと思ってしまった。
皆さん契約事は慎重に!
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