契約結婚を申し込んできた夫にちっちゃく復讐しようと思う

きんのたまご

文字の大きさ
40 / 48
番外編

その後のグリード2《父》

しおりを挟む
思い出すのも嫌なあのお手洗い騒動から少しして私には領地に小さい家が用意された。やはりどうあっても私を勘当した事は撤回されないらしい。
「自分の部屋に籠っているからここに置いて欲しい」と言った私の言葉はお母様によって却下された。
家事もした事がないし本当に死んでしまいますと言うとお母様はそれはそれは楽しそうに「人間・・・死ぬと思ったら案外何でも出来るものよふふふ」と笑っていた。
そんな訳で私は今1人この小さい家で生活している。
やった事も無い料理もお母様の言った通りで流石にやらなければ飢えて死ぬと思えば案外出来た。家の掃除もあの惨状の後の片付けを思い出せばなんて事は無かった・・・。うん(遠い目)
庭には小さい畑もあり、野菜も作っている。最初は何が何だか分からず、下げた事が無い頭を下げて街に住む他の人に野菜の作り方を教えて貰った。今ではすっかり街の仲間に入れて貰えたようだ。
コンコン
来客か?
「はい」
私は自ら扉を開けて来訪者を見るとお忍びで来たお父様だった。
「お父様?どうされたんですか?」
「いやぁお前が元気にしているかなぁと思ってね」
そう言ったお父様の左頬は微かに赤くなっていた。
「またお母様と喧嘩なさったんですね」
「いやぁ、へへへ」
私は溜息を着きながらお父様を家に入れた。
「しっかり生活出来ているようだな」
そう言って父親らしい事を言っているようだがその頬・・・。
「今日はどうなさったのです?」
実は父がこうして尋ねて来るのは初めてでは無い。この生活を初めて半年程になるが父がここにこうして現れたのはもう5回目だ。いつも左頬を腫らしながら・・・。
「で、今回はどこの誰に手を出したのです?」
私は父に椅子を勧めながらそう尋ねる。
「い、いや手を出すなんて人聞きが悪いな・・・」
そう言う父ジト目で見る。
「いや、ちょっと・・・ちょっとお話してただけなんだよ!」
慌てる父、父のちょっとお話は密室に2人きりで話をする事も含まれる。

うちの父と母は貴族の家にしては仲がいい方で私が小さな時は仲が良い2人の姿しか見た事が無かった、そもそも私があれ程に愛した女と結婚したいと思ったのも元を辿れば両親のように愛し愛される夫婦になりたいと思ったからだ。
しかし大きくなりこんな事になり蓋を開けたらどうだろう!自分の父がこんなにだらしない人だったとは・・・お母様の苦労が偲ばれます。
「お父様、愛していらっしゃるのはお母様だけなんですよね?」
「ああ」
この質問も何度目だろう。
そう、父は正真正銘母を愛している。
いるのだが!どうしても他の人にも目が行ってしまうという恐ろしい病気を持っているのだ。
「いい加減にしないと今度こそお母様に捨てられますよ」
お母様は怒らせるとマジで怖い。本当に怖い。あの人は悪魔である。
「いや、それは困る!」
「じゃあしっかりして下さい!」
「・・・・・・・・・・・・」
「返事!!!」
「はいいいいぃ!」
「じゃあ花とお菓子でも買って帰って下さい」
私は父を玄関へと向ける。
「お前もすっかりまともになったなぁ」
振り返りしみじみそう言うお父様。
・・・こんなにしょっちゅうお父様のこんな姿を見ていたら・・・私もこんなんだったのだろうかと落ち込まざるを得ない。
「はい、お母様とそれにアイリスのお陰で目が覚めました」
あと情けない姿のお父様のお陰で・・・。
「いつか改めて・・・アイリスには謝罪を
したいと、そう思っています。会ってくれたらですが・・・」
「そうか・・・そうだな」
お父様は1つ頷いた。

お父様が帰り家に1人になる。
「私もあんなんだったのだろうか・・・」
先程のお父様の姿を思い出す。キャスリーンを追いかけていた自分の姿が重なる・・・。ぶるり!寒気が。
あの姿は私への戒めだ!!!
もう絶対に同じ轍は踏むものか!!!
しおりを挟む
感想 441

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

いくつもの、最期の願い

しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。 夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。 そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。 メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。 死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

処理中です...