bias: bent 貴方のために、嘘をつく。

帆足 じれ

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8.憂さ晴らし ⚠

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※後半は性描写(異性・同性含む)が続きます。


 やがて彼が寝落ちしたので、我々も帰ることにした。
 
「じゃ、榎園のことよろしくお願いしますね」
 
 スタッフステーションに声を掛けると、医療スタッフ達は笑顔で返事をしてくれたが、心なしか緊張しているようだった。
 
「あいつら、ビビってましたね」
 
 エレベーターの中でピカナが吐き捨てた。
 
「絶対心当たりあるんですよ、あれ……」
 
「そうかも知れないし、違うかも知れません」
 
 トゥクルカがインジケーターを見つめながら言う。
 
「該当者には、然るべき償いをしていただくだけです」
 
「でも、それって、謝罪と人事異動程度で収めるヤツですよね。責任者と代理人だけで話進めて……」
 
 ピカナは悔しそうな表情を浮かべる。
 
「じゃあ結局、副代表当事者は置き去りじゃないですか……」
 
 かごの中は静まり返り、かすかな駆動音と浮遊感だけが場を満たしていた。

 
「ベリトさん」
 
 エントランスで解散する際、トゥクルカが声を掛けて来た。
 
「あまり、思いつめないでくださいね」
 
「おっとぉ、心配かけちゃいました? 冷徹女子のトゥクルカさんに気遣っていただけて光栄です」
 
「他意はありません。ただ──」
 
 彼女は軽口をたたく僕に流し目を送り、「少し、お疲れのように見えましたので」と返すと、一礼をして去って行った。

 まあね、確かにお疲れですよ。
 あーあ……。
 僕はエントランス奥にあった自販機でミネラルウォーターを買った。のどを潤しながら、携帯端末でトゥクルカと本部の人間に今後の予定をシェアした後、私用のスマホを取り出す。
 そして“今夜”を共にできる人間を探し、すぐに反応があったコと待ち合わせて飲みに行った。
 
 憂さ晴らしには三大欲求を満たすのが一番ってのが、僕の持論……いや、これは真理だと思う。
 
 程よく打ち解けたところでホテルに移動し、あとはひたすら事に及ぶ。単に“心身の火照りを解消するためだけの行為”だから雰囲気作りも何もないが、お互いを目的に来てるんで支障はない。
 
 彼女は小柄で童顔な割に肉付きのいいコで、舌足らずな声で喘ぎ、豊かなバストが大きく揺れるのが何ともエロかった。身体の相性自体は悪くない。
 ただ、事の最中、僕の頭の中に浮かんでいたのは、あの光景──浴室で蹂躙される彼の姿だった。彼女とは程遠い体付きで、声も顔も完全に男なのに、僕は達する直前、目の前の女のコに彼の艶姿を重ねていた。
 
 何度も言うけど、僕に“そのけ”はない。でも、あの綺麗な人が僕の下で喘いでいる様を想像すると、背徳感と征服感が押し寄せてたまらなくなる。

“……っぁ、あ……ぅ……っ”
“そーり、くん……っ”
“すっきや……”
“……ん……ぁ、あ……っ”

 挙句の果てに、脳内でやってはいけない台詞の“魔融合”を施し、ズリネタにしてしまった。
 
「……っ!」
 
 それが効いたのか、最後、あまりの快感で頭の奥がしびれ、危うく飛びかけた。

 何やってんだ、まじで……。
 賢者タイムに突入した瞬間、申し訳なさ過ぎて心の底から落ち込んだ。
 いくらなんでも、これはどうかしてるわ、自分……。
 
「──ねえ、どーする? もう一回する?」
 
 一服を終えた彼女が声を掛けて来た。
 
「え……」
 
 意識がつながった途端、懐かしい匂いが鼻を掠める。
 もしかしてと思って確かめたら、案の定、彼が好んでいた銘柄と同じものだった。
 
「クサかった? 吸わない人にはキツイよね」
 
「ううん。嫌いじゃないよ。知り合いのイケオジが同じの吸ってたから慣れてるw」
 
 僕の返しに彼女は口角を上げ、「女でこれ好きなの珍しいってよく言われる」と言った。
 
「単に一番美味しいから吸ってんだけどね」
 
「へえ、渋いね。かっこいい」
 
「ありがと。なんかうれしぃかも」
 
 褒めてくれたお礼にと、彼女はたっぷり時間をかけて僕を悦ばせようとしてくれた。まるで本職のコみたいに。
 でもあいにく、僕は彼女との営みに集中できなかった。タバコの匂いも合わさったせいか、脳裏を過ぎるのは彼のことばかりだ。
 
 彼女と指を絡ませた時、彼との指切りを思い出した。形の良い指だったが妙に熱く、付け根の辺りが腫れているように感じた。想像するに、あのゴミ野郎がやったんだろう。ただの打撲ならいいけど、骨が折れているかも知れない。
 じゃあ、そんな状態でブロック組ませたのか、僕は。拷問じゃんか……。
 くそっ。
 ギシギシとベッドが軋むにつれて、僕の精神も乱れ始める。
 
 何なんだよ。どうしてあの人のことが頭から離れないんだ。
 元々はちょっと興味が湧いただけの相手だった。
 信じられないくらいハイスペなのに呆れるほど生きるの下手で、要領悪くて、いつも必死でさ……。
 
 また、彼の泣き顔と嬌声が浮かぶ。
 
「……っく……」
 
 僕はその後2回、同じ妄想をしながら果てた。

 
 シャワーを浴びたあと、彼女を駅まで送る。
 かかった金は全部僕が持った。せっかく心を砕いてくれたのに、上の空になってたお詫びだ。
 
「──なんなら、付き合う?」
 
 道中、彼女がアピールしてきた。
 
「うちら、相性いいと思うんだよね」
 
 気持ちはありがたかったけど、今のところ恋人を作る予定はないからと断った。
 すると、
 
「そんな気してた」
 
 彼女は苦笑しながら言った。
 
「そうりくん、本命いるもんね。うちが入り込む余地ないのわかる」
 
「え、まじで?」
 
「うん。その人のこと大好きなの伝わってきた」
 
「あっはは、やばーw」
 
 女って、ほんと鋭い。トゥクルカといい、なんでそんな自然に気付けるのか教えて欲しい。
 そうしたら僕も、あの人にもっと寄り添えると思うんだよね。
 
「ねえ、どんな人ー?」
 
 彼女が食い付いて来た。
 
「んー……?」
 
「キレイ系? カワイイ系?」
 
「あー、兼ねてる系?」
 
「うわ、やっぱ勝てる気しないわ」
 
「大丈夫、張り合える人間ほとんどいないから」
 
「wwウザ」
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