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13.cross-examine ①
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本物の“応接用ラウンジ”とやらに通されて、少し待つように言われた。今回はちゃんとお茶も用意されているけど、あんなことがあった後だ。口を付けるつもりはない。
トゥクルカはソファに腰かけたまま、医療スタッフが持ってきた毛布を羽織って静かに目を閉じている。軽度であれば新鮮な空気を吸うことで落ち着くとはいうものの、顔色はまだ完全じゃない。彼女も“仁くん”と同じでツラさを表に出さないタイプだから、早めに治療を受けた方が良いかもな。
うちのメンバーは、こういう寡黙でストイックなキャラが多くてめんどい。痛い時は痛い、眠い時は眠いってはっきり表明すればもっと話は単純なのに、彼らはぶっ倒れるまで黙ってるから、わかった時には大抵取り返しがつかなくなっている。それじゃ、本末転倒でしょうが。何のための組織なんだよ、喜びも悲しみもシェアしろよw
それにしても遅いなー、担当者とやらは。ひょっとして、これも何かの罠だったりする? だとしたらいい度胸だ。あんまりおふざけが過ぎると、こっちもぼちぼち暴れるぞ。
こう見えて、僕の戦闘力はそこそこ高い。普段から処刑人達とも仲良くしているおかげで、効率の良い殺し方とか痛めつけ方とかのノウハウが自然と身に付いていたりする。それに僕自身のSっ気のある性格がうまい具合に合致して、成果を極大化するわけだ。普通の人は相手の局部を攻撃するとか難しいみたいだけど、僕は一切の躊躇なく踏み潰せるから、処刑人向きなのかも知れない。
いざと言う時のために、ジョブチェンジも考えとくか。
ドアに視線を向けたタイミングでノック音がして、クリアファイルを抱えた白衣姿の男が入ってきた。胸には、“病棟長補佐”と書かれたネームプレートが下がっている。
彼は遅くなったことを詫びた後、院長(施設長)と師長が急用で都合がつかず、かわりに自分が説明に来たと続けて、向かいのソファに腰を下ろした。
「お連れ様のお加減はいかがでしょうか?」
「おかげさまで、どうにか。でも驚きましたよ。まさかあんな目に遭わされるなんて、さすがに想定していなかったもので」
僕はにこやかにそう返し、あくまで軽い調子を崩さない。ただ、笑ってるのは口元だけだ。
「応接室に案内していただけるはずだったのに、全然違う場所に誘導されて鍵かけられて。しかも怪しいガスまで食らっちゃうなんて、新手のドッキリかと思いました」
「……その件につきましては、現在調査中でして……」
「へえ、調査中……。それにしても、あんな丁度いい密閉空間、誰が何のために稼働させてるんでしょうねー?」
「恐れ入りますが、病棟内の詳細な情報については、守秘義務の都合上、お答えでき兼ねます……」
「そうですか。まあ、何らかの手違いだろうとは思いますけど、命にかかわる事態だったわけですし……いっそ“事件にする”のもありなのかなー、なんて」
ここに来て、病棟長補佐の肩がわずかに揺れた。
「これ、万が一ニュースにでもなったら、どこが責任取ることになると思います? あなた方? それとも──もっと上の誰か、ですかね?」
「……っ」
みるみる彼の顔が強張る。
この病院はLR×D直轄の医療施設だけど、複合商業施設スクェア・エッダの中にあって一般人も利用できる。さらに、実際の運営は現場の医師・職員に任されてる上、派閥なんかも存在していて、めちゃくちゃ微妙なバランスで成り立ってるんだ。
そういう構造上、隠蔽体質が強くて不祥事なんかも発覚しにくい。仁くんの件は、その最たるものだ。
でもそこが付け目でもある。こういう連中が一番嫌うのは“バランスが崩れること”。表向きの信用を守りたいだろうから、騒ぎになるのは絶対に避けたいと思っているはず。一般患者やその家族も利用している医療施設内で「毒ガス事件発生」なんて報道されたら、余計なとこまで探られて、せっかく築き上げてきた“グレーで美味しい立ち位置”が瓦解してしまう恐れがあるからね。
したがって、脅しをかけるなら思いっきり揺さぶらないと。
トゥクルカはソファに腰かけたまま、医療スタッフが持ってきた毛布を羽織って静かに目を閉じている。軽度であれば新鮮な空気を吸うことで落ち着くとはいうものの、顔色はまだ完全じゃない。彼女も“仁くん”と同じでツラさを表に出さないタイプだから、早めに治療を受けた方が良いかもな。
うちのメンバーは、こういう寡黙でストイックなキャラが多くてめんどい。痛い時は痛い、眠い時は眠いってはっきり表明すればもっと話は単純なのに、彼らはぶっ倒れるまで黙ってるから、わかった時には大抵取り返しがつかなくなっている。それじゃ、本末転倒でしょうが。何のための組織なんだよ、喜びも悲しみもシェアしろよw
それにしても遅いなー、担当者とやらは。ひょっとして、これも何かの罠だったりする? だとしたらいい度胸だ。あんまりおふざけが過ぎると、こっちもぼちぼち暴れるぞ。
こう見えて、僕の戦闘力はそこそこ高い。普段から処刑人達とも仲良くしているおかげで、効率の良い殺し方とか痛めつけ方とかのノウハウが自然と身に付いていたりする。それに僕自身のSっ気のある性格がうまい具合に合致して、成果を極大化するわけだ。普通の人は相手の局部を攻撃するとか難しいみたいだけど、僕は一切の躊躇なく踏み潰せるから、処刑人向きなのかも知れない。
いざと言う時のために、ジョブチェンジも考えとくか。
ドアに視線を向けたタイミングでノック音がして、クリアファイルを抱えた白衣姿の男が入ってきた。胸には、“病棟長補佐”と書かれたネームプレートが下がっている。
彼は遅くなったことを詫びた後、院長(施設長)と師長が急用で都合がつかず、かわりに自分が説明に来たと続けて、向かいのソファに腰を下ろした。
「お連れ様のお加減はいかがでしょうか?」
「おかげさまで、どうにか。でも驚きましたよ。まさかあんな目に遭わされるなんて、さすがに想定していなかったもので」
僕はにこやかにそう返し、あくまで軽い調子を崩さない。ただ、笑ってるのは口元だけだ。
「応接室に案内していただけるはずだったのに、全然違う場所に誘導されて鍵かけられて。しかも怪しいガスまで食らっちゃうなんて、新手のドッキリかと思いました」
「……その件につきましては、現在調査中でして……」
「へえ、調査中……。それにしても、あんな丁度いい密閉空間、誰が何のために稼働させてるんでしょうねー?」
「恐れ入りますが、病棟内の詳細な情報については、守秘義務の都合上、お答えでき兼ねます……」
「そうですか。まあ、何らかの手違いだろうとは思いますけど、命にかかわる事態だったわけですし……いっそ“事件にする”のもありなのかなー、なんて」
ここに来て、病棟長補佐の肩がわずかに揺れた。
「これ、万が一ニュースにでもなったら、どこが責任取ることになると思います? あなた方? それとも──もっと上の誰か、ですかね?」
「……っ」
みるみる彼の顔が強張る。
この病院はLR×D直轄の医療施設だけど、複合商業施設スクェア・エッダの中にあって一般人も利用できる。さらに、実際の運営は現場の医師・職員に任されてる上、派閥なんかも存在していて、めちゃくちゃ微妙なバランスで成り立ってるんだ。
そういう構造上、隠蔽体質が強くて不祥事なんかも発覚しにくい。仁くんの件は、その最たるものだ。
でもそこが付け目でもある。こういう連中が一番嫌うのは“バランスが崩れること”。表向きの信用を守りたいだろうから、騒ぎになるのは絶対に避けたいと思っているはず。一般患者やその家族も利用している医療施設内で「毒ガス事件発生」なんて報道されたら、余計なとこまで探られて、せっかく築き上げてきた“グレーで美味しい立ち位置”が瓦解してしまう恐れがあるからね。
したがって、脅しをかけるなら思いっきり揺さぶらないと。
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