14 / 33
14.cross-examine ② ⚠
しおりを挟む
※暴力(痛そうな)描写があります。
「ご存じの通り、今“うち”は過渡期の真っ只中でぐらついています。ここで余計な火種が広がったら、致命的なことになり兼ねません。そうなれば、おたくも一蓮托生ですよ?」
先方の喉がわずかに動いた。
「まあ、穏便に済ますという選択肢もなくはないんです。例えば、今回の件は“あくまで一部の職員の暴走”という形で処理するとか。ただね──」
僕は口角を上げたまま圧力をかける。
「──もとはと言えば、そちら側の失態の件で話し合いに来た人間、それもLR×D幹部であるこの僕に弓を引かれて、“はいそうですか”で済ますわけにはいかないんですよ。副代表への暴行も然り、事実はつまびらかにしないと気持ち悪いじゃないですか」
「……何を、仰りたいのですか……」
病棟長補佐がおずおずと顔を上げる。僕は相手の目を射抜くように見据えた。
「明かせる限りで構いません。これから僕の質問に答えていただきます。まず今回、施設長や師長が姿を見せないのは何故ですか?」
「……じ、実は、今朝から連絡が取れなくなっておりまして」
「二人とも? ふーん。まあ、信じましょう。じゃあ、僕らをあの部屋に誘導した人は誰ですか?」
「…………」
「こちらの正式な職員ですか? それとも、あなた方とは無関係の部署から来た人?」
「…………」
「言えませんか? なら、ここからは、はい・いいえで答えられる質問に変えましょうか。おたくのスタッフの一部がうちの榎園に暴行を働いた件、あれはあなた方の指示ですか?」
「……っ、いいえ! それは、断じて」
「ということは、彼らが自らの意思に基づいて行動した結果なんですね」
「はい、その通りです……」
「一連の流れをまとめた資料の類いはありますか? 前回、お願いしておいたと思うんですが」
「……ええ、こちらに……」
僕は彼が差し出して来た書類を受け取り、中身にさっと目を通す。
へえ、7人……予想より多いじゃねえの。でも、ちゃんと調べたんだな。連帯責任だぞって脅しといた甲斐があったわ。
憤りをおくびにも出さず、僕は質問を続ける。
「今回、僕らの身に降りかかった事態は、榎園の件と関係がありますか?」
一拍置いて、病棟長補佐は「……いいえ」と答えた。
なるほど、“別件”ね。それはそれで問題だけど、良かったと言えば良かったかも。もしこれであの人の命まで狙われてるなんてことになれば、おそらく僕は冷静さを保てないだろう。すぐにでも森久保さんに連絡を取って、彼を安全な場所に移す算段をしなければならないところだった。
「じゃあ最後に……僕らを狙ったのは、“LR×D本部の人間”ですか?」
病棟長補佐は何も答えない。
「あれ、どうしました?」
「…………」
彼は表情を硬くして、テーブルの書類に目を落とすだけだった。
「そうですかー。教えていただけませんか……けっこう譲歩してるのになー」
僕は予備動作なしで、テーブルの上に置かれていた相手の左小指を掴む。
「……えっ?」
彼が驚く間もなく、根元から逆に折り曲げてやった。ぶぎっという独特の感覚が親指に伝わった直後、想像した通りの悲鳴が響いた。
「……っな、に……す……っ!」
苦痛に顔を歪めながら斜めになった指を押さえる病棟長補佐に向かって、僕は声のトーンを一つ下げ、再度同じ質問をする。
「……で、僕らを狙ったのは、“LR×D本部の人間”ですか?」
彼は化け物を見るような目でこちらを凝視し、必死に感情を噛み殺そうとしている。
でも、その態度がすべてを物語っていた。ここまでされて“いいえ”と明言しない時点で、うなずいたのと同義だからね。
「わかりました。ひとまず了解です」
僕は書類を預かり、一旦退くことにした。事態のおおよそは知れたし、トゥクルカの容体がわからない以上、あんまり悠長に構えていられないんでね。
ただし、これで決着というわけにはいかないから、また日を改めて訪問する旨を伝えた。
「すみませんね、痛い思いさせちゃって。指、外れてると思うんで早めに治療受けてください」
前かがみになって呻くだけの病棟長補佐に、僕は労いの言葉をかける。
「でも良かった、あなたが正直な方で。下手に粘られたら、二度とお茶碗持てなくさせてしまうところでした」
へらへら笑いながら際どいセリフをぶつけたら、先方はひどく怯えていた。
そりゃそうだ。でもね、僕らみたいな相手に、紳士的な話し合いを期待する方が間違ってんだよ。
内心毒づきつつトゥクルカに目をやる。彼女の唇は乾いていたが、意識ははっきりして来ているようだったので少しホッとした。
「ご存じの通り、今“うち”は過渡期の真っ只中でぐらついています。ここで余計な火種が広がったら、致命的なことになり兼ねません。そうなれば、おたくも一蓮托生ですよ?」
先方の喉がわずかに動いた。
「まあ、穏便に済ますという選択肢もなくはないんです。例えば、今回の件は“あくまで一部の職員の暴走”という形で処理するとか。ただね──」
僕は口角を上げたまま圧力をかける。
「──もとはと言えば、そちら側の失態の件で話し合いに来た人間、それもLR×D幹部であるこの僕に弓を引かれて、“はいそうですか”で済ますわけにはいかないんですよ。副代表への暴行も然り、事実はつまびらかにしないと気持ち悪いじゃないですか」
「……何を、仰りたいのですか……」
病棟長補佐がおずおずと顔を上げる。僕は相手の目を射抜くように見据えた。
「明かせる限りで構いません。これから僕の質問に答えていただきます。まず今回、施設長や師長が姿を見せないのは何故ですか?」
「……じ、実は、今朝から連絡が取れなくなっておりまして」
「二人とも? ふーん。まあ、信じましょう。じゃあ、僕らをあの部屋に誘導した人は誰ですか?」
「…………」
「こちらの正式な職員ですか? それとも、あなた方とは無関係の部署から来た人?」
「…………」
「言えませんか? なら、ここからは、はい・いいえで答えられる質問に変えましょうか。おたくのスタッフの一部がうちの榎園に暴行を働いた件、あれはあなた方の指示ですか?」
「……っ、いいえ! それは、断じて」
「ということは、彼らが自らの意思に基づいて行動した結果なんですね」
「はい、その通りです……」
「一連の流れをまとめた資料の類いはありますか? 前回、お願いしておいたと思うんですが」
「……ええ、こちらに……」
僕は彼が差し出して来た書類を受け取り、中身にさっと目を通す。
へえ、7人……予想より多いじゃねえの。でも、ちゃんと調べたんだな。連帯責任だぞって脅しといた甲斐があったわ。
憤りをおくびにも出さず、僕は質問を続ける。
「今回、僕らの身に降りかかった事態は、榎園の件と関係がありますか?」
一拍置いて、病棟長補佐は「……いいえ」と答えた。
なるほど、“別件”ね。それはそれで問題だけど、良かったと言えば良かったかも。もしこれであの人の命まで狙われてるなんてことになれば、おそらく僕は冷静さを保てないだろう。すぐにでも森久保さんに連絡を取って、彼を安全な場所に移す算段をしなければならないところだった。
「じゃあ最後に……僕らを狙ったのは、“LR×D本部の人間”ですか?」
病棟長補佐は何も答えない。
「あれ、どうしました?」
「…………」
彼は表情を硬くして、テーブルの書類に目を落とすだけだった。
「そうですかー。教えていただけませんか……けっこう譲歩してるのになー」
僕は予備動作なしで、テーブルの上に置かれていた相手の左小指を掴む。
「……えっ?」
彼が驚く間もなく、根元から逆に折り曲げてやった。ぶぎっという独特の感覚が親指に伝わった直後、想像した通りの悲鳴が響いた。
「……っな、に……す……っ!」
苦痛に顔を歪めながら斜めになった指を押さえる病棟長補佐に向かって、僕は声のトーンを一つ下げ、再度同じ質問をする。
「……で、僕らを狙ったのは、“LR×D本部の人間”ですか?」
彼は化け物を見るような目でこちらを凝視し、必死に感情を噛み殺そうとしている。
でも、その態度がすべてを物語っていた。ここまでされて“いいえ”と明言しない時点で、うなずいたのと同義だからね。
「わかりました。ひとまず了解です」
僕は書類を預かり、一旦退くことにした。事態のおおよそは知れたし、トゥクルカの容体がわからない以上、あんまり悠長に構えていられないんでね。
ただし、これで決着というわけにはいかないから、また日を改めて訪問する旨を伝えた。
「すみませんね、痛い思いさせちゃって。指、外れてると思うんで早めに治療受けてください」
前かがみになって呻くだけの病棟長補佐に、僕は労いの言葉をかける。
「でも良かった、あなたが正直な方で。下手に粘られたら、二度とお茶碗持てなくさせてしまうところでした」
へらへら笑いながら際どいセリフをぶつけたら、先方はひどく怯えていた。
そりゃそうだ。でもね、僕らみたいな相手に、紳士的な話し合いを期待する方が間違ってんだよ。
内心毒づきつつトゥクルカに目をやる。彼女の唇は乾いていたが、意識ははっきりして来ているようだったので少しホッとした。
6
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる