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第1章 café R 〜ふたりの出会い、みんなの出会い〜
第11話:ランチのあと
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会社にひとり戻った連藤は、有給の届けを準備していた。
「お、明日休むのか」
パソコンの画面を見た三井が声をかけてくる。
「ああ。明日、オーナーのカフェに、監視カメラの業者が来るから、一緒に話を聞こうと」
「甚内?」
「ああ」
「なら、間違いなくお前がいいが、かなり肩入れしてるな」
「悪いか?」
「珍しいと思ってな」
「ああ、俺もそう思う」
連藤は一度背筋をただし、ふうと息をつく。
「なんでだろうな」
「は?」
「こう、あのカフェでのランチは、俺にとってのオアシスなのは間違いない」
「それ、お前、ビーフシチューが癒しですって言っても通じるんじゃねぇのか?」
「……そうだとも言える」
大きなため息を連藤が落とすが、三井が見るに、連藤が何かに執着するのは久しぶりな気がする。
特に人など、久しぶりすぎる。
心なしか最近の連藤の表情が柔らかく感じるほどだ。
「だってお前、靖の爺さんとよく話してんだろ?」
「まぁ、オーナーは可愛いという話はよく聞いてる。俺は顔が見えないからよくわからないが、驚き方が小動物っぽくて、確かに可愛いとは思う」
冷めた目をする三井だが、その視線が連藤に届くことはない。
「なぁ、そんなビーフシチューだけで通ってるなんて、俺は信じられん。オーナーに気があるんだろ? まさかお前がたった2週間で恋に落ちるとは………」
「俺は三井じゃない。それに、オーナーのことは確かに気になってはいるが、……それだけだ!」
「またまたぁ~。お前顔見えてないからあれだが、けっこう美人系だぞ?」
それを聞いた連藤はふと考える表情を作る。
「顔が触れたらな」
「触ればいいだろ」
「できるか、そんなこと!」
少し考え、
「できるか……?」
「俺に聞くなよ」
・・・・・・
一方の莉子は今日の夜も来る連藤のために、軽食とは言い難い料理の準備をしていた。
今日はアメリカの赤ワインにしようと思い、さらにリゾットを作ろうかと材料を確認する。
平日の夜に来る連藤は、莉子にとっては癒しだった。
独りでササッと食べていた夕飯が、連藤が来たことで、少し豪華なご飯になり、そして一緒に食べられるのも全然違ったのだ。
これはつい2日前の話だ。
連藤に料理を出し、この日はスペアリブのマーマレード焼きに、ムール貝のパスタを出した。
多少料理があまり、私の夜ご飯だと莉子が話すと、
「一緒に食べてはどうだろう?」というのである。
20時をまわっていたこともあり、クローズの看板を立てると、カウンターを挟み、何気なく食べたご飯がすごく美味しかった。
人と一緒に食べるご飯がこれほど美味しいとは知らなかった。
それぐらいの衝撃だった。
ずっと1人で切り盛りしてきた莉子にとって、とても新鮮だった。
高校卒業と同時に始めたこのカフェだ。
それからずっと1人だった。
独り、だった。
「早めのクローズってだめかなぁ……? でも、ちょっとぐらい、いいよね。私の店なんだし」
言いながら、莉子は準備を進めていく。
どうして心が踊るのかわからないまま───
「お、明日休むのか」
パソコンの画面を見た三井が声をかけてくる。
「ああ。明日、オーナーのカフェに、監視カメラの業者が来るから、一緒に話を聞こうと」
「甚内?」
「ああ」
「なら、間違いなくお前がいいが、かなり肩入れしてるな」
「悪いか?」
「珍しいと思ってな」
「ああ、俺もそう思う」
連藤は一度背筋をただし、ふうと息をつく。
「なんでだろうな」
「は?」
「こう、あのカフェでのランチは、俺にとってのオアシスなのは間違いない」
「それ、お前、ビーフシチューが癒しですって言っても通じるんじゃねぇのか?」
「……そうだとも言える」
大きなため息を連藤が落とすが、三井が見るに、連藤が何かに執着するのは久しぶりな気がする。
特に人など、久しぶりすぎる。
心なしか最近の連藤の表情が柔らかく感じるほどだ。
「だってお前、靖の爺さんとよく話してんだろ?」
「まぁ、オーナーは可愛いという話はよく聞いてる。俺は顔が見えないからよくわからないが、驚き方が小動物っぽくて、確かに可愛いとは思う」
冷めた目をする三井だが、その視線が連藤に届くことはない。
「なぁ、そんなビーフシチューだけで通ってるなんて、俺は信じられん。オーナーに気があるんだろ? まさかお前がたった2週間で恋に落ちるとは………」
「俺は三井じゃない。それに、オーナーのことは確かに気になってはいるが、……それだけだ!」
「またまたぁ~。お前顔見えてないからあれだが、けっこう美人系だぞ?」
それを聞いた連藤はふと考える表情を作る。
「顔が触れたらな」
「触ればいいだろ」
「できるか、そんなこと!」
少し考え、
「できるか……?」
「俺に聞くなよ」
・・・・・・
一方の莉子は今日の夜も来る連藤のために、軽食とは言い難い料理の準備をしていた。
今日はアメリカの赤ワインにしようと思い、さらにリゾットを作ろうかと材料を確認する。
平日の夜に来る連藤は、莉子にとっては癒しだった。
独りでササッと食べていた夕飯が、連藤が来たことで、少し豪華なご飯になり、そして一緒に食べられるのも全然違ったのだ。
これはつい2日前の話だ。
連藤に料理を出し、この日はスペアリブのマーマレード焼きに、ムール貝のパスタを出した。
多少料理があまり、私の夜ご飯だと莉子が話すと、
「一緒に食べてはどうだろう?」というのである。
20時をまわっていたこともあり、クローズの看板を立てると、カウンターを挟み、何気なく食べたご飯がすごく美味しかった。
人と一緒に食べるご飯がこれほど美味しいとは知らなかった。
それぐらいの衝撃だった。
ずっと1人で切り盛りしてきた莉子にとって、とても新鮮だった。
高校卒業と同時に始めたこのカフェだ。
それからずっと1人だった。
独り、だった。
「早めのクローズってだめかなぁ……? でも、ちょっとぐらい、いいよね。私の店なんだし」
言いながら、莉子は準備を進めていく。
どうして心が踊るのかわからないまま───
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