2 / 7
第2話 この世界のこと
しおりを挟む
ベッドにぐるぐる丸まりながら、顔を上げたオレの横に、あのダンディな執事が声をかけてきたではないか!
赤髪に、髭を生やしたおっさんだが、渋すぎる。
しかしながら、今のオレは、怒だ。
「ちょっと、あんた、どこ行ってたんだよ!」
「あんたとは……ラインハルト王子、言葉遣いが荒すぎます。キルヒアイスと、ちゃんと名で呼んでください」
たしなめられたが、キルヒアイスとな。
キルヒアイスとな?
これでもオレ、オタクの端くれ。ラインハルトとキルヒアイスといえば、知ってる。
「……マジかよ」
つい声が漏れるが、その言葉遣いもあまりよくなかったようだ。
睨まれてる……
「さ、お着替えを」
どこからか現れたトルソーに、服がある。
それを着ろということらしい。
が、なんだ、このファンタジー王子服!!!!
どこから着ていいのか、わかんねー!!!!!
オレは慣れない順序で服を身につけ、ときには間違え、着替え直して、ようやく首元のひらひらまで辿り着いた。
「お似合いですよ、王子」
鏡を見せられたが、よくみるキラキラした王子がいる。
うわー。キレイすぎて、もう、オレの顔が思い出せん……
つーか、ちょっと待って。
落ち着いてくると、ヤバくない?
オレ、ラインハルト、乗っ取ったんじゃない!?
いくらなんでも、オレは美形になりたかったワケじゃないし、王子になりたかったワケじゃない!
思い出そうとしても、自分の過去しか出てこない。
なんだよ、これ……
「……あの、キルヒアイス」
「はい、王子?」
「オレって、どんな人だった……?」
「何をおしゃってるんです?」
「その、幼少の頃のオレとか」
「……昔は昔です。今の王子は、今の王子じゃないですか」
何、言ってんだ?
言葉に迷うけど、語尾は誤魔化そう。
「そのー、キルヒアイスは、オレの幼少のころから、お世話してくれて……?」
「それはもう! ラインハルト様が今年16となられ、私が城に来た時と同じ年齢になられて……とても、感慨深いですね」
「なんか、その、失敗とかさ、なんかあったかなって」
「なぜ、そんなことを?」
「懐かしいなーって思ったりして」
「そうですね。でも王子は王子ですから」
もしかして、過去がないのか。
過去がないのか?
となると、オレは乗っ取ったんじゃない。
オレが、ラインハルトになったのか……!
だと思いたい!!!!
「キルヒアイス、オレの趣味、知ってる?」
「もちろん。ギターとお菓子作り、です」
オレだ。
オレの趣味だ。
混乱しそうだけど、オレが王子になった。
王子の中身は空っぽだったって感じ、かな。
だといいな……。
いや、そう思おう!
少し安心するし。
──ぐぅううううう
オレの腹は正直だ。
お腹が盛大に鳴り響いた。
「お食事にしましょうか」
「キルヒアイス、食堂まで連れてってくれ」
「はい?」
「いいから!」
オレは食堂へと連れて行ってもらうことにしたが、オレのイザベラ溺愛道が、激しく険しいことが、すでに判明した。
赤髪に、髭を生やしたおっさんだが、渋すぎる。
しかしながら、今のオレは、怒だ。
「ちょっと、あんた、どこ行ってたんだよ!」
「あんたとは……ラインハルト王子、言葉遣いが荒すぎます。キルヒアイスと、ちゃんと名で呼んでください」
たしなめられたが、キルヒアイスとな。
キルヒアイスとな?
これでもオレ、オタクの端くれ。ラインハルトとキルヒアイスといえば、知ってる。
「……マジかよ」
つい声が漏れるが、その言葉遣いもあまりよくなかったようだ。
睨まれてる……
「さ、お着替えを」
どこからか現れたトルソーに、服がある。
それを着ろということらしい。
が、なんだ、このファンタジー王子服!!!!
どこから着ていいのか、わかんねー!!!!!
オレは慣れない順序で服を身につけ、ときには間違え、着替え直して、ようやく首元のひらひらまで辿り着いた。
「お似合いですよ、王子」
鏡を見せられたが、よくみるキラキラした王子がいる。
うわー。キレイすぎて、もう、オレの顔が思い出せん……
つーか、ちょっと待って。
落ち着いてくると、ヤバくない?
オレ、ラインハルト、乗っ取ったんじゃない!?
いくらなんでも、オレは美形になりたかったワケじゃないし、王子になりたかったワケじゃない!
思い出そうとしても、自分の過去しか出てこない。
なんだよ、これ……
「……あの、キルヒアイス」
「はい、王子?」
「オレって、どんな人だった……?」
「何をおしゃってるんです?」
「その、幼少の頃のオレとか」
「……昔は昔です。今の王子は、今の王子じゃないですか」
何、言ってんだ?
言葉に迷うけど、語尾は誤魔化そう。
「そのー、キルヒアイスは、オレの幼少のころから、お世話してくれて……?」
「それはもう! ラインハルト様が今年16となられ、私が城に来た時と同じ年齢になられて……とても、感慨深いですね」
「なんか、その、失敗とかさ、なんかあったかなって」
「なぜ、そんなことを?」
「懐かしいなーって思ったりして」
「そうですね。でも王子は王子ですから」
もしかして、過去がないのか。
過去がないのか?
となると、オレは乗っ取ったんじゃない。
オレが、ラインハルトになったのか……!
だと思いたい!!!!
「キルヒアイス、オレの趣味、知ってる?」
「もちろん。ギターとお菓子作り、です」
オレだ。
オレの趣味だ。
混乱しそうだけど、オレが王子になった。
王子の中身は空っぽだったって感じ、かな。
だといいな……。
いや、そう思おう!
少し安心するし。
──ぐぅううううう
オレの腹は正直だ。
お腹が盛大に鳴り響いた。
「お食事にしましょうか」
「キルヒアイス、食堂まで連れてってくれ」
「はい?」
「いいから!」
オレは食堂へと連れて行ってもらうことにしたが、オレのイザベラ溺愛道が、激しく険しいことが、すでに判明した。
1
あなたにおすすめの小説
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
死を回避するために筋トレをすることにした侯爵令嬢は、学園のパーフェクトな王子さまとして男爵令嬢な美男子を慈しむ。
石河 翠
恋愛
かつて男爵令嬢ダナに学園で階段から突き落とされ、死亡した侯爵令嬢アントニア。死に戻ったアントニアは男爵令嬢と自分が助かる道を考え、筋トレを始めることにした。
騎士である父に弟子入りし、鍛練にいそしんだ結果、アントニアは見目麗しい男装の麗人に。かつての婚約者である王太子を圧倒する学園の王子さまになったのだ。
前回の人生で死亡した因縁の階段で、アントニアは再びダナに出会う。転落しかけたダナを助けたアントニアは、ダナの秘密に気がつき……。
乙女ゲームのヒロインをやらされているダナを助けるために筋トレに打ち込んだ男装令嬢と、男前な彼女に惚れてしまった男爵令嬢な令息の恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は、写真ACよりチョコラテさまの作品(作品写真ID:23786147)をお借りしております。
気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいました
みゅー
恋愛
『転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります』のスピンオフです。
前世から好きだった乙女ゲームに転生したガーネットは、最推しの脇役キャラに猛アタックしていた。が、実はその最推しが隠しキャラだとヒロインから言われ、しかも自分が最推しに嫌われていて、いつの間にか悪役令嬢の立場にあることに気づく……そんなお話です。
同シリーズで『悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい』もあります。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる