陰キャのオレが転生したのは、悪役令嬢の婚約者!〜婚約破棄? オレが溺愛しますけど!〜

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第2話 この世界のこと

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 ベッドにぐるぐる丸まりながら、顔を上げたオレの横に、あのダンディな執事が声をかけてきたではないか!
 赤髪に、髭を生やしたおっさんだが、渋すぎる。
 しかしながら、今のオレは、おこだ。

「ちょっと、あんた、どこ行ってたんだよ!」
「あんたとは……ラインハルト王子、言葉遣いが荒すぎます。キルヒアイスと、ちゃんと名で呼んでください」

 たしなめられたが、キルヒアイスとな。
 キルヒアイスとな?
 これでもオレ、オタクの端くれ。ラインハルトとキルヒアイスといえば、知ってる。

「……マジかよ」

 つい声が漏れるが、その言葉遣いもあまりよくなかったようだ。
 睨まれてる……

「さ、お着替えを」

 どこからか現れたトルソーに、服がある。
 それを着ろということらしい。

 が、なんだ、このファンタジー王子服!!!!
 どこから着ていいのか、わかんねー!!!!!

 オレは慣れない順序で服を身につけ、ときには間違え、着替え直して、ようやく首元のひらひらまで辿り着いた。

「お似合いですよ、王子」

 鏡を見せられたが、よくみるキラキラした王子がいる。
 うわー。キレイすぎて、もう、オレの顔が思い出せん……

 つーか、ちょっと待って。
 落ち着いてくると、ヤバくない?


 オレ、ラインハルト、乗っ取ったんじゃない!?


 いくらなんでも、オレは美形になりたかったワケじゃないし、王子になりたかったワケじゃない!

 思い出そうとしても、自分の過去しか出てこない。
 なんだよ、これ……

「……あの、キルヒアイス」
「はい、王子?」
「オレって、どんな人だった……?」
「何をおしゃってるんです?」
「その、幼少の頃のオレとか」
「……昔は昔です。今の王子は、今の王子じゃないですか」

 何、言ってんだ?
 言葉に迷うけど、語尾は誤魔化そう。

「そのー、キルヒアイスは、オレの幼少のころから、お世話してくれて……?」
「それはもう! ラインハルト様が今年16となられ、私が城に来た時と同じ年齢になられて……とても、感慨深いですね」
「なんか、その、失敗とかさ、なんかあったかなって」
「なぜ、そんなことを?」
「懐かしいなーって思ったりして」
「そうですね。でも王子は王子・・・・・ですから」

 もしかして、過去がないのか。
 過去がないのか?

 となると、オレは乗っ取ったんじゃない。
 オレが、ラインハルトになったのか……!
 だと思いたい!!!!

「キルヒアイス、オレの趣味、知ってる?」
「もちろん。ギターとお菓子作り、です」

 オレだ。
 オレの趣味だ。

 混乱しそうだけど、オレが王子になった。
 王子の中身は空っぽだったって感じ、かな。
 だといいな……。

 いや、そう思おう!
 少し安心するし。

 ──ぐぅううううう

 オレの腹は正直だ。
 お腹が盛大に鳴り響いた。

「お食事にしましょうか」
「キルヒアイス、食堂まで連れてってくれ」
「はい?」
「いいから!」

 オレは食堂へと連れて行ってもらうことにしたが、オレのイザベラ溺愛道が、激しく険しいことが、すでに判明した。
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