老舗カフェ「R」〜モノクロの料理が色づくまで〜

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第64話 これからのこと

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 イウォールが床に丸まったと同時に扉が開かれた。

「私が来たわぁーーーーー! リコ、大丈夫!?」
「……エリシャ、ここ病院。……静かにして!」

 エリシャとカーレンだ。
 両手には紙袋いっぱいに服を詰めてきてくれている。
 さらに後ろには、サングラス、スカーフで頭を覆った女性だが、胸の大きさから言って、スルニス様じゃないかと莉子は推測する。
 莉子の知り合いにあれほどの巨乳は、スルニスしか存在しないからだ。

「スルニス様ですよね」

 莉子が声をかけると、スルニスはにっこりと笑う。

「さすがにベールをかけると怪しいから、この格好にしてみたの。どう?」

 サマーニットが胸を強調して、とってもセクシーです。
 と答えるのが正解なのか、

 顔がしっかり覆われているので、よくわからなかったです。
 と答えるのが正解なのか、

 今の莉子の頭では判断ができなかったため、

「お似合いです!」

 にとどめておいた。

 他の4名も部屋に入ってくるなか、うずくまるイウォールに、ケレヴがなぜかゲラゲラ笑っている。
 エリシャとカーレンは備え付けのクローゼットに服を詰め込んでいくが、どうみても入院用の服には見えない。
 おしゃれなワンピースから、ブラウス、スカートはもちろん、ジーンズまで、莉子が着ないような鮮やかな色もある。

「服が……服じゃない……」

 立ち尽くす莉子にアキラがひょっこり顔をだす。

「いやー、びっくりしましたよね? 実は僕も、エルフと人間のハーフとしては初めてで、いつまで生きるかわからないって言われてて……。一緒に長生きしましょうね、リコさん。あ、このミントタブレットあげます。これ、魔力入のタブレットで、1日1粒食べておけば問題ないです。もちろん、食べ過ぎても問題ないので」

 莉子は少しでも頭をスッキリさせようと、そのタブレットを口に含んだ。
 カリッと噛むと、じんわりと体の中が温かくなる。これが魔力だろうか。
 だが口の中がスーッと冷えたことで、少し目が覚めて気持ちがいい。

「ほら、リコ、まだ説明あるから、座れって」

 トゥーマにソファに座らされるが、隣にはニコニコ顔のスルニスがいる。

「リコ、今回はエルフのことに巻き込んでごめんなさいね。そして、リコ自身も変えてしまったこと、申し訳なく思うけれど、わたくしは仲間ができて嬉しく思ってるの。これからもよろしくね、リコ」

 スルニスは莉子の額にそっとキスをした。
 途端、体が軋み始める。

「……いだ! ……いだっ! なに、なにこれ!」

 全身が矯正されるような軋みとともに、右腕の痛みが穏やかに、しまいには無くなってしまう。
 首を回しても痛みはなく、むしろ、健康体になった気分だ。

「治癒を施しました。エルフの民には、エルフの祝福を。それにガンディアたちから、またあのカンコク料理が食べたいと言われてて。まだこちらにいるので、ぜひご馳走してね、リコ」

 スルニスは莉子の頭を優しく撫でると、エリシャとカーレンを呼ぶ。
 もう帰るのだそうだ。

「人が多いとお休みにならないわ。しっかり休んでちょうだい、リコ」

 スルニスの声に、エリシャも頷く。

「足りないものがあったらいつでもいって! 買ってくるわ!」
「……だから、エリシャうるさい……。……また、くるね、リコ」

 花の嵐だったと莉子は思う。
 明るくて優しくて、柔らかくて、騒々しい。

「……なんか、みんなに会えて、ほっとしちゃった……」

 急に緊張が解けた顔つきになった莉子に、トゥーマが言い切った。

「あ、これからのカフェな、俺の企業と提携になるから」

 唐突な宣言に、莉子は再び顔を引き締め直した。
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