最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第三章 南の森

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メイは背中のリュックから、自身の頭部より大きな金属製のハンマーを取り外す。それから柄の部分を両手で掴み、更にカチリと引き伸ばした。

長さが1メートル程にもなったハンマーを斜めに構えて、メイは後ろを振り返る。

「離れずについて来るんだよ」

「…はい」

二人の緊張した反応に、メイはゆっくりと頷いた。もっとも、佐敷瞳子の姿は見えないのだが…

そうして一歩を踏み出したとき、何かを思い付いたかのように、メイはそのまま立ち止まった。

「トーコ、念のために聞くけど…他にアオツメソウが残ってたりするかい?」

「え…?」

突然聞かれて、佐敷瞳子は一度周囲を見回した。

「あ、有り…ます」

「えっ、何処に?」

メイが慌てて、キョロキョロと首を巡らせる。

「あの……ここに」

佐敷瞳子はイヤリングを一度外すと、泉の反対側までメイを案内した。

「おおーっ本当にあった! なんて事だい、一度に2本もだなんてっ!」

メイは再び四つん這いになると、懸命に土をほじくり返している。

これは、よっぽどの高値がつくのかもしれない…

メイの姿を眺めながら、神木公平は思わず苦笑いを零した。

   ~~~

光があまり射し込まない薄暗い森の中を、3人は一列に並んで進んでいく。

一番後ろを歩く佐敷瞳子は、時折り小声を出しながら、自身の存在を神木公平に伝えていた。

暫く何事もなく進んでいたが、不意に佐敷瞳子の視界の上方に、黄色いタグがピンと跳ねる。初めてのその反応に何となく首を上に向けると、頭上に生い茂る枝葉の中に5つのタグを発見した。

(毛針…猿?)

するとその直後、神木公平の頭上の枝に、1体の毛針猿が姿を現す。

「公平くん、上っ!」

咄嗟に出た佐敷瞳子の声に反応して、神木公平が目線を上げる。するとその視界一杯に、牙を剥き出しにした毛針猿の顔のドアップが飛び込んできた。

(えっ⁉︎)

突然のことに、神木公平の思考が止まる。しかし次の瞬間、少年の黒き双眸が金色の光を放った。

周りの世界がスローになる。

神木公平は小さな羽虫を振り払うように、無意識に左手を横に払った。

軽く振られただけのその一撃に、毛針猿は勢いよく吹き飛ばされ、木の幹に叩き付けられたまま動かなくなる。

「毛針猿だっ!」

そのへしゃげた死骸を確認して、メイが焦ったように声を張り上げた。それから頭上を仰ぎ見る。その声に呼応するように、辺りに「キーーッ」と獣の鳴き声が響き渡った。

「あと4体いるみたいです」

佐敷瞳子の情報を元に、神木公平が素早く伝える。

「分かるのかいっ?」

「瞳子が…」

「ったく、なんて子だい」

メイは思わず苦笑いを浮かべた。

「公平くんっ!」

そのときヘッドホンから、再び佐敷瞳子の声が飛び込んでくる。同時に金の双眸が光を放った。

まるで映画のコマ送りのように、ワンシーンワンシーンが切り取られる。

神木公平の目前に、襲いかかる毛針猿の右拳が迫っていた。その拳を右手で掴むと、そのままジャイアントスイングの要領でクルリと半回転する。そうして背後に迫っていたもう1体と、空中で勢いよく正面衝突させた。

鈍い音が響き渡り、2体の毛針猿が崩れ落ちる。

「コーヘー、アンタ…」

目にも留まらぬその光景に、メイは両目を見開いて絶句した。
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