22 / 114
第三章 南の森
22
しおりを挟む
鉄牙狼の牙を抜き取り研磨材を収集した後、メイたち3人は王都アインベルへと戻ってきた。
裏門を抜け中の広場に馬車を停めると、同じように停まっている10台ほどの馬車が目に入る。そしてその馬車の周りには、それぞれ数人の人集りが出来ていた。
「何かあるんですか?」
何やらワイワイと盛り上がっている様子を見て、神木公平が不思議そうな顔をする。
「素材の買い取りをしてるんだ」
「え…⁉︎」
メイの返答に、神木公平は思わず振り返った。
「そういうのって、ギルドとかに持っていくんじゃないんですか?」
「ギルド…? ああ、組合のことか」
メイが察したように頷く。
「まあ確かに、特定の素材の流通量が不足すれば、高価買取をエサに組合が優先的な依頼を出すことはたまにある」
(ん…?)
思ってた内容と若干食い違うメイの説明に、神木公平は両腕を組んで首を傾げた。
「だけど基本的には、個人での売買だ。買い手もより良い素材は自分の所で扱いたいんだから、自然とこういう形になるのは分かるよな?」
「はい、まあ…」
言ってる事は分かる。しかし納得出来ない顔で、神木公平は人集りの方に目を向けた。
「それじゃ売り手の側は、どういう人たちなんですか?」
「私みたいな技術屋もいるけど、基本は狩人だな」
「その狩人に組合は?」
神木公平の様子に何かを察したのか、メイが大袈裟に溜め息を吐く。
「あのな…言っとくけど、買い取りなんかはやらないぞ」
「え、何で?」
「知識がないからさ。結局その道のプロに任せるしかないんだから、間に入る意味が何もない」
「そうですか…」
メイは何もおかしな事は言っていない。おかしいのは自分の方だと、神木公平は渋々納得する。
何となく事情の分かる佐敷瞳子だけが、察したように二人の会話を眺めていた。
~~~
「お、メイさん。今日は外に出てたんですね」
グレーの「つなぎ」に青のゴムエプロンを着けた40代くらいの男が、メイの馬車に近付いて来た。
「なんだお前か、バンデル」
男を値踏みをするように、メイが目を細める。
「お前、漢気はあるか?」
「不肖このバンデル、漢気の塊りでごさいます」
「言ったな…」
メイは不敵な笑みを浮かべると、リュックから巾着袋を取り出し、バンデルに中身をチラリと見せた。
「分かるか?」
「これは…アオツメソウ」
バンデルから、ゴクリと息を飲む音が聞こえる。
「2本ある」
「2本っ⁉︎」
「いくら出せる?」
「ま、待ってください」
バンデルは腰のポーチから電卓のような携帯端末を取り出すと、何やら打ち込んでメイに見せた。
メイはその画面を確認すると、突然大きく息を吸い込む。
「あーーっ、今日は大漁だーっ! 何てったってアオツメソ…」
「ワーッ待ってくださいっ! 分かりました、分かりましたからっっ」
バンデルは慌ててメイの口を押さえると、こちらに注目している同業者に愛想笑いを振りまいた。
裏門を抜け中の広場に馬車を停めると、同じように停まっている10台ほどの馬車が目に入る。そしてその馬車の周りには、それぞれ数人の人集りが出来ていた。
「何かあるんですか?」
何やらワイワイと盛り上がっている様子を見て、神木公平が不思議そうな顔をする。
「素材の買い取りをしてるんだ」
「え…⁉︎」
メイの返答に、神木公平は思わず振り返った。
「そういうのって、ギルドとかに持っていくんじゃないんですか?」
「ギルド…? ああ、組合のことか」
メイが察したように頷く。
「まあ確かに、特定の素材の流通量が不足すれば、高価買取をエサに組合が優先的な依頼を出すことはたまにある」
(ん…?)
思ってた内容と若干食い違うメイの説明に、神木公平は両腕を組んで首を傾げた。
「だけど基本的には、個人での売買だ。買い手もより良い素材は自分の所で扱いたいんだから、自然とこういう形になるのは分かるよな?」
「はい、まあ…」
言ってる事は分かる。しかし納得出来ない顔で、神木公平は人集りの方に目を向けた。
「それじゃ売り手の側は、どういう人たちなんですか?」
「私みたいな技術屋もいるけど、基本は狩人だな」
「その狩人に組合は?」
神木公平の様子に何かを察したのか、メイが大袈裟に溜め息を吐く。
「あのな…言っとくけど、買い取りなんかはやらないぞ」
「え、何で?」
「知識がないからさ。結局その道のプロに任せるしかないんだから、間に入る意味が何もない」
「そうですか…」
メイは何もおかしな事は言っていない。おかしいのは自分の方だと、神木公平は渋々納得する。
何となく事情の分かる佐敷瞳子だけが、察したように二人の会話を眺めていた。
~~~
「お、メイさん。今日は外に出てたんですね」
グレーの「つなぎ」に青のゴムエプロンを着けた40代くらいの男が、メイの馬車に近付いて来た。
「なんだお前か、バンデル」
男を値踏みをするように、メイが目を細める。
「お前、漢気はあるか?」
「不肖このバンデル、漢気の塊りでごさいます」
「言ったな…」
メイは不敵な笑みを浮かべると、リュックから巾着袋を取り出し、バンデルに中身をチラリと見せた。
「分かるか?」
「これは…アオツメソウ」
バンデルから、ゴクリと息を飲む音が聞こえる。
「2本ある」
「2本っ⁉︎」
「いくら出せる?」
「ま、待ってください」
バンデルは腰のポーチから電卓のような携帯端末を取り出すと、何やら打ち込んでメイに見せた。
メイはその画面を確認すると、突然大きく息を吸い込む。
「あーーっ、今日は大漁だーっ! 何てったってアオツメソ…」
「ワーッ待ってくださいっ! 分かりました、分かりましたからっっ」
バンデルは慌ててメイの口を押さえると、こちらに注目している同業者に愛想笑いを振りまいた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる