最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

文字の大きさ
66 / 114
第九章 怪しいご招待

66

しおりを挟む
「私はグレイスと申します。ここの本部長なんてやらされてますが、大して偉くもないので、あまり身構えないでくださいね」

グレイスは首を軽く横に傾げてニッコリ微笑む。その可愛らしい仕草からは、こんなに大きな娘がいるとはとても信じられない。ハルベルトの執着も、あながちただの妄想では無かったのだと、神木公平はここでやっと気が付いた。

「それでその本部長さまが、この子たちに一体何の用だい?」

「そうです! 私たちに何の用よ、お母さん!」

頭の後ろで両指を組みながら、メイがグレイスに探るような視線を向ける。チェルシーも、それに合わせて声を張り上げた。

「チェルシーを呼んだ覚えはないのだけど?」

グレイスはニッコリ微笑むと、チロリとザイードに視線を向ける。

「う…」

するとザイードが、一瞬言葉に詰まった。

「チ…チェルシーも改めてお礼がしたいと二人を探しておった故、今から連れてくるから此処で待つよう伝えておったのだ」

グレイスの笑顔は崩れない。しかし何故だか、ザイードは直立不動でダラダラと汗を流していた。

「仕方ないわね」

頬に右手を添えながら、グレイスは「ほっ」と小さな溜め息を吐く。それから改めて、神木公平と佐敷瞳子に向けて姿勢を正した。

「娘が迷惑をかけたので、お二人には何か御礼をしようと思ってるの」

   ~~~

ここ王都アインベルより東に、マリナジーテと云う港町がある。王都の北側を流れるトルネ河の河口に位置し、文字通り「漁港」として発展している。

一級河川であるトルネ河は運河としても利用されており、定期連絡船によって両都市間の人や物資の輸送が可能となっていた。

今回グレイスは、海鮮料理で有名なマリナジーテへと、二人を招待してくれるらしい。

「ちょっと待ちなよ。この件ではウチのトーコまで危うく手篭めにされそうになったんだ。それをたった一回の食事で済まそうだなんて…」

「勿論、謝礼金の方も御用意致しておりますよ」

メイの底意地の悪そうな抗議に、グレイスがニッコリ笑って一枚の封筒を差し出した。

サッと中味を確認したメイの表情が、ホクホクとした笑顔になる。どうやら、かなりの金額が入っていたようだ。

「折角の申し出だ、二人で行ってくると良い。マリナジーテの料理は絶品だぞ」

彼女のあまりの急変振りに、神木公平と佐敷瞳子は顔を見合わせて苦笑いをするしかなかった。

「お母さん、私も当事者なんだから一緒に…っ」

暫く蚊帳の外に追いやられていたチェルシーが、少し焦って話に食いつく。

「仕事中は本部長と呼ぶように、いつも言ってますよね」

しかしチェルシーの言葉を一蹴するグレイスの笑顔には、何故だか不思議な威圧感が満ちていた。

「チェルシー残念だけど、アナタには別のお仕事が入っているのよ」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...