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第八章 決闘!
63 番外編 4
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咲森勇人たちの一行は、2台の馬車と護衛である4人の騎兵を伴っての行軍であった。
慌てた様子のユミルに促され、3人は忙しなく馬車から降りる。直ぐそばには、馬を連れた3人の騎士が待機していた。
「白石くんだけで良いのか?」
騎士団の面々の様子を感じ取り、咲森勇人がやや声のトーンを落として確認する。
「念のため、皆さまご一緒に……ヒカリさまは、私の後ろに乗ってください」
ひとりの騎士から手綱を渡されたユミルがひらりと馬の背にまたがると、鳴神ひかりに向けて左手を差し出した。
同様に男性騎士に引き上げられ、咲森勇人と白石和真も乗馬する。直ぐさま馬が走り出し、初めての乗馬体験が唐突に始まった。
疾風のように走る馬の上では会話など出来る筈もなく、状況の説明も何も無いまま、3頭の馬はひたすらに駆けていった。
~~~
到着したのは、自分たちが通った門とは別の門前広場であった。
「お願いだよっ! 誰かこの人を救けておくれ!」
そのとき悲痛な女性の叫び声が木霊する。
馬を降りた咲森勇人たちに、ユミルからやっと、およその状況説明があった。
要約すると、魔物の大群と戦闘中の傭兵団を、巡回中の騎士団の小隊が発見。報告を受け街から応援に駆けつけるも、その時には騎士団員にも傭兵団員にも、相当の被害が出ていたようだ。
その後、何とか魔物の撃退に成功。収容可能な遺体を回収し負傷者とともに帰還するも、治癒魔法士の人手が足りず今に至る。
「なるほど、それで白石くんか」
「え…、オレ⁉︎」
両腕を組んで自分を見る咲森勇人に、白石和真は目を丸くして驚きの声をあげた。
「でもオレ、回復の魔法も呪文も、まだ何も知らないんだけど…?」
「それは大丈夫です」
するとユミルが真っ直ぐな眼差しで、白石和真の手を優しく握る。
「スキルが発現しているならば、後はイメージするだけです。求める結果のイメージを具体化するために、長い詠唱が必要な人がいれば短い人もいます。要はイメージさえ出来れば、魔法の詠唱に決まった文言などは無いのです」
「イメージったって、どうすりゃ…」
「簡単だろ?」
困惑の表情を見せる白石和真に、咲森勇人が右手の中指で眼鏡をクイッと持ち上げた。
「キミが最強だと信じる回復魔法を使えば良い」
「どーいう意味…」
「ねー…何で誰も、あの人のトコに行かないの?」
そのとき白石和真の声を遮って、鳴神ひかりが怪訝な声をあげる。その瞳には、膝上に横たわる男性を抱きしめて、必死に救けを求める女性の姿が映っていた。
「あの彼は、もう間に合いません…」
そばにいた男性騎士が、その疑問に静かにゆっくりと答える。
「まだ辛うじて息はありますが、治癒魔法の限度を超えているのです」
慌てた様子のユミルに促され、3人は忙しなく馬車から降りる。直ぐそばには、馬を連れた3人の騎士が待機していた。
「白石くんだけで良いのか?」
騎士団の面々の様子を感じ取り、咲森勇人がやや声のトーンを落として確認する。
「念のため、皆さまご一緒に……ヒカリさまは、私の後ろに乗ってください」
ひとりの騎士から手綱を渡されたユミルがひらりと馬の背にまたがると、鳴神ひかりに向けて左手を差し出した。
同様に男性騎士に引き上げられ、咲森勇人と白石和真も乗馬する。直ぐさま馬が走り出し、初めての乗馬体験が唐突に始まった。
疾風のように走る馬の上では会話など出来る筈もなく、状況の説明も何も無いまま、3頭の馬はひたすらに駆けていった。
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到着したのは、自分たちが通った門とは別の門前広場であった。
「お願いだよっ! 誰かこの人を救けておくれ!」
そのとき悲痛な女性の叫び声が木霊する。
馬を降りた咲森勇人たちに、ユミルからやっと、およその状況説明があった。
要約すると、魔物の大群と戦闘中の傭兵団を、巡回中の騎士団の小隊が発見。報告を受け街から応援に駆けつけるも、その時には騎士団員にも傭兵団員にも、相当の被害が出ていたようだ。
その後、何とか魔物の撃退に成功。収容可能な遺体を回収し負傷者とともに帰還するも、治癒魔法士の人手が足りず今に至る。
「なるほど、それで白石くんか」
「え…、オレ⁉︎」
両腕を組んで自分を見る咲森勇人に、白石和真は目を丸くして驚きの声をあげた。
「でもオレ、回復の魔法も呪文も、まだ何も知らないんだけど…?」
「それは大丈夫です」
するとユミルが真っ直ぐな眼差しで、白石和真の手を優しく握る。
「スキルが発現しているならば、後はイメージするだけです。求める結果のイメージを具体化するために、長い詠唱が必要な人がいれば短い人もいます。要はイメージさえ出来れば、魔法の詠唱に決まった文言などは無いのです」
「イメージったって、どうすりゃ…」
「簡単だろ?」
困惑の表情を見せる白石和真に、咲森勇人が右手の中指で眼鏡をクイッと持ち上げた。
「キミが最強だと信じる回復魔法を使えば良い」
「どーいう意味…」
「ねー…何で誰も、あの人のトコに行かないの?」
そのとき白石和真の声を遮って、鳴神ひかりが怪訝な声をあげる。その瞳には、膝上に横たわる男性を抱きしめて、必死に救けを求める女性の姿が映っていた。
「あの彼は、もう間に合いません…」
そばにいた男性騎士が、その疑問に静かにゆっくりと答える。
「まだ辛うじて息はありますが、治癒魔法の限度を超えているのです」
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